表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ずっと普通だった幼馴染と、今日から恋人ごっこを始めます  作者: Atelier Lotus文庫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/121

第52話 赤信号

 学校を出た二人は、いつもの帰り道を歩いていた。


 先ほどまで少し速かった本子の歩調も、今では元に戻っている。


 縁之丞も、その理由を深く追及することなく隣を歩いていた。


「大会、いつなの?」


「来週」


「もうすぐだね」


「ああ」


「みんな、間に合いそう?」


「何とかなるだろ」


「本当に?」


「インフルエンザで休んでた奴らも、動きは戻ってきてる」


「じゃあ、大丈夫そう?」


「まだ少し試合勘は鈍ってるけどな」


「だから縁之丞が練習相手をしてるんだ」


「ああ」


 本子は少し得意そうに笑った。


「縁之丞が相手なら、すぐ戻りそう」


「俺を何だと思ってるんだ」


「すごく強い打ち込み相手」


「便利な扱いだな」


「でも、みんな縁之丞を頼りにしてるよ」


「買い被りだ」


「そんなことないよ」


 本子はすぐに否定した。


「縁之丞、強いもん」


「昔から見てるから、そう思うだけだろ」


「昔から見てるから分かるの」


「何が?」


「竹刀を持った時だけ、格好いい」


「だけって何だよ」


「普段は普通」


「本子も普通だろ」


「私はいつも可愛いよ」


「自分で言うな」


「否定しないんだ?」


「面倒だから」


「照れてる?」


「照れてない」


 本子は楽しそうに笑った。


 縁之丞も呆れながら、わずかに口元を緩める。


「大会が終わったら、また帰宅部?」


「ああ」


「そのまま入ればいいのに」


「毎日練習するのは面倒だ」


「部長さん、泣きそう」


「もう泣いてる」


「そんなに?」


「昨日も腕を掴まれた」


「必死だね」


「大会が終わったら逃げる」


「逃がしてくれるかな」


「逃げるしかないだろ」


 本子は部長の姿を想像したのか、声を上げて笑った。



 話をしながら歩いていると、前方に大きな交差点が見えてきた。


 歩行者用信号は青。


 二人は足を止めることなく、そのまま横断歩道へ向かう。


「大会、見に行ってもいい?」


「好きにすれば」


「縁之丞も行くんでしょ?」


「部長には来いって言われてる」


「試合には出ないのに?」


「試合前の最後の調整に付き合ってほしいらしい」


「もう部員みたいだね」


「入部はしてない」


「じゃあ、一緒に見ようよ」


「別にいいけど」


「一緒に応援したい?」


「何で俺に聞くんだよ」


「縁之丞が練習してきた人たちでしょ?」


「そうだけど」


「勝ってほしいよね?」


「まあな」


 本子は縁之丞の顔を覗き込む。


「素直じゃないなあ」


「うるさい」


「私も応援してあげるね」


「大声はやめろよ」


「みんなー! 頑張れー! って?」


「知らない奴にまで叫ぶな」


「じゃあ、静かに見てる」


「それならいい」


「縁之丞の隣で?」


「好きにすればいいだろ」


「やっぱり一緒に見たいんじゃん」


「そうは言ってない」


 本子は縁之丞の方を向いたまま、横断歩道へ一歩踏み出した。


 その時。


 歩行者用信号が点滅を始める。


 けれど、渡り切るには十分な時間があった。


 本子は信号を見ることなく、縁之丞へ笑いかけている。


「大会が終わったら、何かしてあげようか?」


「何かって?」


「毎日練習に付き合ったご褒美」


「別にいらん」


「即答しないでよ」


「何してくれるんだ?」


「肩揉みとか」


「本子、力弱いだろ」


「じゃあ、好きなもの作ってあげる」


「この前みたいにカレー?」


「違うものでもいいよ」


「作れるのか?」


「失礼だなあ」


 本子は頬を膨らませる。


「終わってからのお楽しみ」


「まだ決めてないだけだろ」


「ばれた?」


 本子が笑う。


 そのまま、もう一歩前へ進んだ。


 点滅していた歩行者用信号が、赤へ変わる。


 同時に。


 交差点へ、一台の車が進入してきた。


 右折しようとしている車だった。


 運転手の顔は、対向車線へ向いている。


 途切れた車の流れに気を取られ、横断歩道を見ていない。


 車は十分に速度を落とさないまま、曲がり始める。


 本子は気付かない。


 縁之丞の方を見たまま。


 笑顔で、車の進路へ踏み出そうとしていた。


 縁之丞だけが。


 その異変に気付いた。


「本子!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ