第33話 お土産
お昼ご飯を食べ終えた二人は、お土産ショップへ立ち寄った。
店内へ入ると、動物のぬいぐるみや文房具、お菓子、キーホルダーが所狭しと並んでいる。
「すごい」
「結構あるな」
本子は店内を見回す。
「動物園って、お土産見るのも楽しいよね」
「分かる」
「買わなくても見ちゃう」
「結局何か買うけどな」
「それも分かる」
二人は笑いながら店内を歩き始めた。
◇
本子は可愛いうさぎのぬいぐるみを手に取る。
「これ可愛い」
ふわふわした白いうさぎ。
長い耳が垂れ、丸い目でこちらを見つめている。
「確かに」
「触ってみて」
縁之丞は言われるまま撫でてみる。
「柔らかい」
「でしょ?」
本子は満足そうに笑った。
「本子は昔から、こういうの好きだよな」
「好き」
「部屋にもいっぱいあるし」
「増えてる」
「知ってる」
「また増える」
「置く場所あるのか?」
「何とかなる」
「ならない気がする」
二人は顔を見合わせて笑った。
◇
一方、縁之丞は少し離れた棚の前で立ち止まる。
「これ」
本子が近寄る。
「どれ?」
そこには、なんとも言えない表情をした動物のぬいぐるみが置かれていた。
眠そうなのか。
困っているのか。
やる気がないのか。
何とも言えない顔をしている。
本子はしばらく見つめる。
「もっと可愛いのあるでしょ」
「いや」
「これ好き」
「これが一番」
「なんで?」
「なんか落ち着く」
「そこ?」
本子はぬいぐるみと縁之丞の顔を交互に見比べる。
そして突然吹き出した。
「あはは!」
「縁之丞っぽい!」
「俺?」
「うん」
「寝起き」
「こんな顔してる」
「してないだろ」
「してる」
「朝、起こしたら毎回これ」
「そんなに?」
「こんな感じで『あと五分……』って」
本子は眠そうな顔を真似する。
あまりにも似ていて、縁之丞は苦笑した。
「否定できないな」
「でしょ?」
本子は笑いが止まらない。
縁之丞もつられて笑ってしまう。
◇
本子はそのぬいぐるみを手に取った。
正面から眺める。
横から眺める。
もう一度縁之丞を見る。
「やっぱり似てる」
「まだ言うのか」
「見るたび思い出しそう」
「俺を?」
「うん」
「そんな理由で買うなよ」
「いいの」
本子は笑う。
「思い出になるし」
「動物園の?」
「それもある」
「それも?」
「うん」
本子はぬいぐるみを胸へ抱えた。
「今日、いっぱい笑ったなって思い出せそう」
縁之丞は少しだけ照れくさそうに頭をかく。
「変な思い出だな」
「いい思い出だよ」
その言葉に、縁之丞も少し笑った。
「じゃあ俺も買うか」
「え?」
「せっかくだし」
本子は目を輝かせる。
「何買うの?」
「これ」
縁之丞は動物園限定のキーホルダーを手に取った。
「意外」
「実用的だからな」
「縁之丞らしい」
「本子みたいに部屋がぬいぐるみだらけになっても困る」
「失礼だなあ」
頬を膨らませる本子を見て、縁之丞は笑った。
◇
二人はレジへ向かう。
会計を済ませると、小さな紙袋を受け取った。
店を出る。
本子は紙袋を大事そうに抱えながら歩く。
「帰ったら部屋に飾ろっと」
「増えるな」
「うん」
「見るたびに今日を思い出す」
「写真もあるしな」
「写真もある」
本子は嬉しそうに頷いた。
「でも、この子を見ると」
紙袋をそっと持ち上げる。
「最初に縁之丞思い出しそう」
「だからやめろって」
「ふふっ」
本子は楽しそうに笑った。
今日という一日は、写真だけじゃない。
小さなお土産にも、二人の思い出が詰まっていた。




