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ずっと普通だった幼馴染と、今日から恋人ごっこを始めます  作者: Atelier Lotus文庫


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第33話 お土産

 お昼ご飯を食べ終えた二人は、お土産ショップへ立ち寄った。


 店内へ入ると、動物のぬいぐるみや文房具、お菓子、キーホルダーが所狭しと並んでいる。


「すごい」


「結構あるな」


 本子は店内を見回す。


「動物園って、お土産見るのも楽しいよね」


「分かる」


「買わなくても見ちゃう」


「結局何か買うけどな」


「それも分かる」


 二人は笑いながら店内を歩き始めた。



 本子は可愛いうさぎのぬいぐるみを手に取る。


「これ可愛い」


 ふわふわした白いうさぎ。


 長い耳が垂れ、丸い目でこちらを見つめている。


「確かに」


「触ってみて」


 縁之丞は言われるまま撫でてみる。


「柔らかい」


「でしょ?」


 本子は満足そうに笑った。


「本子は昔から、こういうの好きだよな」


「好き」


「部屋にもいっぱいあるし」


「増えてる」


「知ってる」


「また増える」


「置く場所あるのか?」


「何とかなる」


「ならない気がする」


 二人は顔を見合わせて笑った。



 一方、縁之丞は少し離れた棚の前で立ち止まる。


「これ」


 本子が近寄る。


「どれ?」


 そこには、なんとも言えない表情をした動物のぬいぐるみが置かれていた。


 眠そうなのか。


 困っているのか。


 やる気がないのか。


 何とも言えない顔をしている。


 本子はしばらく見つめる。


「もっと可愛いのあるでしょ」


「いや」


「これ好き」


「これが一番」


「なんで?」


「なんか落ち着く」


「そこ?」


 本子はぬいぐるみと縁之丞の顔を交互に見比べる。


 そして突然吹き出した。


「あはは!」


「縁之丞っぽい!」


「俺?」


「うん」


「寝起き」


「こんな顔してる」


「してないだろ」


「してる」


「朝、起こしたら毎回これ」


「そんなに?」


「こんな感じで『あと五分……』って」


 本子は眠そうな顔を真似する。


 あまりにも似ていて、縁之丞は苦笑した。


「否定できないな」


「でしょ?」


 本子は笑いが止まらない。


 縁之丞もつられて笑ってしまう。



 本子はそのぬいぐるみを手に取った。


 正面から眺める。


 横から眺める。


 もう一度縁之丞を見る。


「やっぱり似てる」


「まだ言うのか」


「見るたび思い出しそう」


「俺を?」


「うん」


「そんな理由で買うなよ」


「いいの」


 本子は笑う。


「思い出になるし」


「動物園の?」


「それもある」


「それも?」


「うん」


 本子はぬいぐるみを胸へ抱えた。


「今日、いっぱい笑ったなって思い出せそう」


 縁之丞は少しだけ照れくさそうに頭をかく。


「変な思い出だな」


「いい思い出だよ」


 その言葉に、縁之丞も少し笑った。


「じゃあ俺も買うか」


「え?」


「せっかくだし」


 本子は目を輝かせる。


「何買うの?」


「これ」


 縁之丞は動物園限定のキーホルダーを手に取った。


「意外」


「実用的だからな」


「縁之丞らしい」


「本子みたいに部屋がぬいぐるみだらけになっても困る」


「失礼だなあ」


 頬を膨らませる本子を見て、縁之丞は笑った。



 二人はレジへ向かう。


 会計を済ませると、小さな紙袋を受け取った。


 店を出る。


 本子は紙袋を大事そうに抱えながら歩く。


「帰ったら部屋に飾ろっと」


「増えるな」


「うん」


「見るたびに今日を思い出す」


「写真もあるしな」


「写真もある」


 本子は嬉しそうに頷いた。


「でも、この子を見ると」


 紙袋をそっと持ち上げる。


「最初に縁之丞思い出しそう」


「だからやめろって」


「ふふっ」


 本子は楽しそうに笑った。


 今日という一日は、写真だけじゃない。


 小さなお土産にも、二人の思い出が詰まっていた。

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