第30話 ふれあい広場
園内を歩いていると、本子が案内板を見つけた。
「あっ」
「ふれあい広場だ!」
目を輝かせて振り返る。
「行こう」
「ああ」
二人は子どもたちで賑わう広場へ向かった。
◇
最初に出迎えてくれたのはモルモットだった。
本子はスタッフに抱き方を教えてもらい、そっと両手で抱き上げる。
「ちっちゃい……!」
「かわいい!」
モルモットは安心したように本子の腕の中で丸くなる。
本子は嬉しそうに頬を緩めた。
「見て、全然動かない」
「落ち着いてるな」
「温かい……」
大切な宝物を抱えるような姿を見て、縁之丞は思わず笑う。
「お前の方が嬉しそうだな」
「だってかわいいもん」
本子はそう言って、もう一度モルモットを優しく撫でた。
◇
次はうさぎ。
ぴょんぴょんと跳ね回る姿を追いかけ、本子は自然としゃがみ込む。
「見て!」
「耳ふわふわ!」
そっと撫でると、うさぎは気持ちよさそうに目を細めた。
「本当だな」
「ずっと触ってられる」
「帰らなくなりそうだな」
「……それは困る」
二人は思わず笑った。
その隣では羊がのんびり草を食べている。
本子が恐る恐る背中を撫でる。
「あれ?」
「思ったより硬い」
「ふわふわじゃないんだな」
「意外」
「見た目だけじゃ分からないもんだな」
「うん」
二人は顔を見合わせ、小さく笑った。
◇
近くにいたスタッフが声を掛けてきた。
「お二人、一緒に写真お撮りしましょうか?」
本子の表情がぱっと明るくなる。
「お願いします!」
スマホを預け、二人は並んだ。
「はい、笑ってくださーい」
カシャ。
続いて、モルモットを囲んで一枚。
うさぎと一緒に一枚。
羊の前でも一枚。
「もう一枚いいですか?」
「もちろんですよ」
本子は嬉しそうに場所を変えながら、何枚も写真を撮ってもらった。
「ありがとうございました!」
「楽しんでくださいね」
スタッフに頭を下げ、二人は広場をあとにした。
◇
ふれあい広場を出ると、本子はさっそくスマホを取り出した。
「見て」
「今日だけで、こんなに撮ってる」
画面いっぱいに並ぶのは、動物たちと笑い合う写真。
そのどれもが、自然な笑顔だった。
縁之丞も画面を覗き込み、小さく笑う。
「増えたな」
「うん」
本子は写真を一枚ずつ眺めながら頷く。
「まだ今日終わってないけどね」
「じゃあ、もっと増えるな」
「えへへ」
本子は満足そうにスマホをしまう。
今日という一日は、まだ終わらない。
思い出は、もう少しだけ増えそうだった。




