第四章 大事なこと
魔王城。
「魔王様」
「なんだ?」
「先日の海岸の生物についてですが」
「……」
「それで、意思疎通は?」
「ああ」
「名は?」
「アザラシ」
「……」
「ゴマフとも言っていた」
「……?」
「よく分からん」
カータは少し考えた。
「……そうですか」
そこへターマが入ってくる。
「マーちゃん、今日も海行くの?」
「まだ決めていない」
「魚は?」
「……持っていく」
「行くんじゃん♪」
「……」
カータは黙って書類に目を戻した。
「ターマ」
「ん?」
「魔王様です」
「はいはい」
マーラは二人を見た。
「……お前たちは暇なのか?」
「マーちゃんに言われたくないな〜」
「ターマ」
「はいはい」
海岸。
アザラシは今日も寝ていた。
波の音。
風の音。
静かな海。
しばらくして。
「……来たぞ」
「……」
アザラシは目を開けた。
「魚」
「持ってきた」
「食べる」
「そうか」
マーラは魚を渡した。
アザラシは食べる。
「……んまい」
「そうか」
マーラは隣に座った。
「なあ」
「……?」
「人間と魔族は、どうして争うんだろうな」
「……」
アザラシは魚を食べている。
「……わかんない」
「そうか」
マーラは海を見る。
「俺にも、よく分からん」
アザラシは魚を食べた。
「……」
しばらくして。
「……寝る」
「そうか」
アザラシは横になった。
マーラはその隣で海を見ていた。
今日も、特に何も起こらなかった。




