第二章 魔王とアザラシ
魔王城。
人間たちと敵対する魔族の国、その中心にある城だ。
そこでは魔王マーラ=ゼオコと、その両腕と呼ばれる双子の側近、カータ・ネイオとターマ・ネイオが国を支えている。
右腕を欠くカータは政治や外交を。
左腕を欠くターマは軍や治安を。
二人とも、それぞれの分野では魔王に並ぶほどの実力を持っていた。
そして当の魔王はというと――
「マーちゃん、海行くの?」
「ああ」
「魚持った?」
「ああ」
「いってらっしゃい」
「……ターマ」
「ん?」
「魔王様です」
「はいはい」
マーラ=ゼオコは二人を見た。
「……行ってくる」
「はい、魔王様」
「いってらっしゃい、マーちゃん」
マーラは何も言わず、部屋を出ていった。
海岸。
少し前、兵士から報告を受けていた。
『海岸に、見たことのない生物がいます』
『魔物か?』
『分かりません。ただ、今のところ脅威はなさそうです』
『……そうか』
マーラは、その生物が気になっていた。
魔族の領地にいる以上、放っておく理由もない。
だから、自分で見に来た。
手には魚を持っている。
海岸。
アザラシがいた。
「……」
マーラは少し離れたところから眺めた。
動かない。
寝ている。
「……お前は、何者だ?」
「……アザラシ」
「アザラシ?」
「……ゴマフ?」
「……分からんな」
「……」
マーラは少し考えた。
「……魚、食うか?」
「食べる」
マーラが魚を渡す。
「美味いか?」
「んまい」
「そうか」
マーラはアザラシの隣に座った。
「ここ、好きか?」
「うん」
「俺もだ」
「そう」
「静かだからな」
二人で海を眺める。
神界。
コモンは水晶玉を覗いていた。
「……魚あげてる」
少し眺める。
「自分で行くんだ……」
コモンは少し笑った。
海岸。
「ふぁ〜ぁ」
「……」
アザラシが横になる。
「……また来る」
「魚持ってきて」
「……分かった」
マーラは立ち上がった。
「じゃあな」
「うん」
マーラは帰っていった。
アザラシは眠った。
海は静かだった。
今日も、特に何も起こらなかった。




