↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
典型的なアザラシだった件について  作者: 海月まったり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/13

第十章 混ざらないふたり

 それから、さらに月日が流れた。


 人間と魔族の交流は、少しずつ増えていた。


 交易路を行き交う商人。


 互いの国を訪れる者。


 まだ警戒する者も多い。


 それでも。


 以前とは、少し違っていた。


 ある日の人間の国。


「マーラ」


「ああ」


「今日は魚は?」


「持ってきた」


「そうか」


 ネコ=サンが笑う。


「最近、それが当たり前になったな」


「そうだな」


「最初は魔王と話しているだけで緊張したものだ」


「俺もだ」


「お前も?」


「ああ」


 マーラは少し笑った。


「王だからな」


「魔王だから、だろ?」


「……それもある」


 二人は顔を見合わせた。


 中庭。


 二人で並んで座る。


「なあ、マーラ」


「なんだ?」


「もし、俺が王じゃなかったら」


 マーラは黙って聞いている。


「お前は俺と話していただろうか?」


「……分からない」


「そうか」


「でも」


 マーラはネコ=サンを見る。


「今は、話したいと思う」


「……そうか」


 ネコ=サンは少しだけ笑った。


「俺もだ」


 沈黙。


 風が吹く。


「マーラ」


「なんだ?」


「俺たちは、変な関係だな」


「そうだな」


「人間の王と魔王だ」


「ああ」


「本来なら、敵同士だ」


「そうだな」


「なのに」


 ネコ=サンは言葉を止めた。


「……一緒にいると、落ち着く」


 マーラはしばらく黙っていた。


「俺もだ」


 それだけだった。


 魔王城。


「最近、魔王様が帰ってくるの遅いですね」


 カータが言った。


「そう?」


 ターマが答える。


「人間の国に行ってるんでしょ」


「そうですか」


「楽しそうだよね〜♪」


「……」


 カータは書類を見る。


「それなら、よいことです」


「姉さん」


「なんです?」


「顔、笑ってるよ」


「……笑ってなどいません///」


「そっか〜♪」


 ターマは何も言わなかった。


 その夜。


 魔王城の外。


 マーラは一人海を眺めていた。


「……」


 そこへネコ=サンが来た。


「ここにいたか」


「……ネコ=サン」


「少し話さないか?」


「ああ」


 二人は並んで海を見る。


「最近、よくここに来るな」


「海が好きなんだ」


「俺もだ」


「そうか」


 波の音だけが聞こえる。


「マーラ」


「なんだ?」


「俺は、お前といる時間が好きだ」


 マーラは黙った。


「……俺もだよ……」


「そうか」


「だが」


 マーラは少し俯いた。


「これは、許されることなのだろうか?」


「……分からん」


 ネコ=サンは海を見る。


「人間と魔族だ」


「ああ」


「王と魔王だ」


「ああ」


「簡単じゃない」


「……そうだな」


 しばらく沈黙した。


「でも」


 ネコ=サンが言った。


「俺は、お前と話すことをやめたくない」


 マーラが顔を上げる。


「俺もだ」


 二人は互いを見る。


 そして。


 マーラが、ほんの少しだけ笑った。


「……困ったな」


「何が?」


「好きになってしまった」


 ネコ=サンの目には涙が浮かんでいた。


「……俺もだ」


 二人は、何も言わなかった。


 ただ、海を見ていた。


 少し離れた岩場。


 アザラシがいた。


「……」


 二人を見ている。


 いや。


 見ているように見えるだけだった。


 アザラシは魚を食べていた。


「……んまい」


 そして眠った。


 海は静かだった。


 人間と魔族。


 王と魔王。


 越えるには、まだいくつもの壁がある。


 それでも。


 二人は、初めて自分たちの気持ちを知った。


 その夜。


 海には、波の音だけが響いていた。

挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。