俺はアルド!君は?
「よし……っ!」
両手で頬を『パンッ!』と叩いて気合いを入れたルチアは、胸を張って受付窓口へ向かった。
受付の騎士に召集状を差し出し、「ルーク・アルノー」と名乗ると、ポンッと受入印が押された番号札を渡される。
(よし、まずは第一関門突破!)
ホッと息をつきながら、ルチアはそっと襟元に触れた。
服の中に隠しているのは、首元にフィットする細い革のチョーカー。出発する前、兄ルークの部屋から取ってきた声を変える魔導具だ。
このチョーカーのおかげで、喉を痛めずに自然な青年の声が出せる。
胸にはさらしを固く巻いたし、声の対策も完璧。ルチアは心の中でそっと兄に感謝した。
待機エリアに移動すると、周りは体格のいい男たちが「俺が一番強い」と言わんばかりに威圧感を放ち合っている。
その殺伐とした空気に呑まれないよう、ルチアは屈伸をしたり肩を回したりして、軽くストレッチを始めた。
(お兄ちゃんのためにも、絶対合格するぞ……!)
ぐっと意気込んで顔を上げた、その時。
「よぉ! みんなガチガチなのに、お前だけなんか楽しそうだな!」
上から降ってきたのは、すごく爽やかで気さくな声。
驚いて振り向くと、そこには人懐っこい笑顔の青年が立っていた。
栗色の髪に、暖かそうな琥珀色の瞳。背が高くてスラッとしているけれど、威圧感ゼロで親しみやすさ全開だ。
「え……あ、何か問題でも?」
ルチアが問いかけると、チョーカーのおかげで自然な少年の声が響く。よし、バッチリ!
青年は「ううん、全然!」と笑って手を振った。
「周りが睨み合いばっかりだからさ、フランクに話せそうな奴がいてホッとしたんだよ。俺はアルド! 君は?」
「……ルークだ。ルーク・アルノー」
「ルークか! よろしくな! 俺も受験生なんだけどさ、周りが厳つすぎて緊張しちゃってさ〜。お互い合格できるように、気合い入れていこうぜ!」
屈託のない笑顔で「よろしく!」と拳を差し出され、ルチアはパチクリと目を丸くした。
こんな殺伐とした場所で、こんなにフランクに声をかけてもらえるなんて思わなかった。
ルチアもつられて破顔し、自分の拳をアルドの拳に打ち合わせた。
「うん、よろしくね、アルド!」
「いいね! その調子でお互い全力を出そう!」
アルドの気さくな笑顔のおかげで、張り詰めていたルチアの緊張が一気に吹き飛んでいく。
——でも、この時のルチアはまだ知らなかった。
この気さくな同期のアルドと、これから同じ騎士団で一緒に汗を流し、やがて「男同士(?)の近すぎる距離感」にドギマギさせられることになるなんて!




