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水の精霊との対話

次の日、

私たちは、水が流れているのを確認し、村に戻った。

ただ水の流れは戻ったが、水量は少なかった。


「ドン。水の流れは少しは戻ったけど、量はどんなもの?」

と姫様はドンを見た。


「正直言うと、前の10分の1にも満たない」

とドンは言った。


「まぁ、でもゼロだったのが、ここまで戻ったんだ。あとは徐々にやっていくさ」

とゴンザはドンの背中を叩いた。


姫様は相変わらず、浮かない顔をしている。


「姫様、大丈夫ですか?」

と私は姫様をつつく。


「なんか、ひっかかるのよね」

と姫様は頭をかいた。


私たちが、村に帰ると、

ひさしぶりに水が戻ったと、

村は大騒ぎだった。


みんな英雄扱いだった。


ただ……、

姫様は相変わらず沈んでいた。


村では宴が開かれ、

酒が振る舞われた。

姫様には、高級品の砂糖を使ったお菓子が振る舞われた。


あんなに待ち望んだお菓子なのに……、


「お菓子がお口に合わなかったですか?」

と私は尋ねた。


「そうじゃないの」

と姫様は目を伏せた。


姫様は、突然席を立つ。

あわてて私がついていくと、

姫様は村長のところへ向かった。


「今回は、本当にありがとうございます。あなたは救世主だ」

と村長は頭を下げた。


「それより、この村……いや川に、なにか伝承とかなかった?」

と姫様は尋ねた。


「伝承ですか……」

と村長は頭をかいている。

「そういえば、大蛇の話がありましたね」

村長は言った。


「それはどんなの?」

と姫様は身を乗り出す。


「たしか、大人の男三人分くらいの大きさの大蛇が、川の主だとか、なんとかという話で……、

詳しくはわかりません」

と村長は首を振った。


「それよ。ジュナ、明日、もう一度上流に調査にいくわ」

と姫様は私を見た。


私はうなづいた。

この目をしている時に、姫様は王様にも止められない。


「それでしたら、ドンもお連れください」

と村長はドンを呼び、ついていくように言った。


胸のつかえがとれたのか、

姫様はお菓子や御馳走をたらふく食べて、

私は念のため、三日分の野営の準備を行い、

早めに床についた。


翌朝、早くから私たちは上流に向かう。

水流は心なしか、多少増えているように感じた。

そして、あの巨石にたどり着く。

筒はまだちゃんと機能しているようだ。

私たちは、巨石にふさがれた湖を見る。

水量が減っている様子はなかった。


湖の際で、姫様は胡坐をかき、目を閉じ精霊と交信を始める。

しばらくして目を開けて、

「こっちよ」

と姫様は言った。


私たちは姫様についていく。

森の奥深く10分ほど進んだところで、

姫様は止まった。


私たちは、そこに巨大な蛇のような骨があることを発見した。


「姫様、これは?」

と私は尋ねた。


「これはね。川の主よ」

と姫様は骨を触った。


「いったい……、どういう事ですか」

と私は尋ねた。


「この子はね。初めは普通の蛇だったの。

しかし長生きをして、しだいに土地の精霊と同化していった。

そして、この川やこの地を守っていたの。

しかし、五年ほど前に、小さなケガがきっかけで、命を落とした。

そして精霊の力が弱体化して、地の力のバランスが崩れ、巨石が川を塞いだの」

と姫様は寂しそうに言った。


「じゃあ、もしかして今のままだと」

と私は姫様を見つめた。


「そうね。また戻るわ」

と姫様はため息をついた。


「戻るっていうのは、また川が枯れるってことですか」

とドンは顎をさすった。


「おそらく……」

と姫様は頭をかいた。


「それは困る。村のご先祖様が苦労して開発した土地なんだ」

とドンは唇を噛みしめた。


姫様は、大蛇の骨の前で、再び胡坐をかき、目を閉じた。

しばらく経ち、

「一つだけ方法がある」

と姫様は言った。


「それは何ですか?」

とドンは尋ねた。


「この骨を依り代にして、精霊を祀るの」

と姫様は答えた。


「骨が依り代になるのですか?」

と私は尋ねた。


「あまり知られていないけど、骨が依り代になることはあるわ。

特に以前に精霊の依り代として使われていた蛇であれば、

相性はいい……、ただ」

と姫様は黙った。


「なんですか」

とドンは尋ねた。


「そうね。

巫女が言うセリフではないのだけど……。

こういう祀りというのは、

一度始めると、

途中で止められないの。

だから面倒なのよね」

と姫様は言いにくそうに言った。


「たしかに、それはそうですね」

と私は言った。


「祀りというのは、何をすればいい?」

とドンは尋ねた。


「そうね。

このご神体を入れる箱を作り、それを祠にいれて、祀る。

そして定期的にメンテナンスをする。

単純に言えば、これだけよ」

と姫様は言った。


「それであれば簡単なのでは」

とドンは眉間にしわを寄せた。


「あの……、

まずご神体を入れる箱を作るコスト。

それを祠に入れるコスト。

これがかかります。

そして年に一度、お祭りをする必要があるので、

そのお祭りのコストがかかります。

姫様……、

こんな所ですよね。

あと特殊な呪文とか、儀式的なものは必要ですか?」

と私は尋ねた。


「ジュナの言う通りよ。

コストに関してはそう。

この精霊に関しては、特殊な呪文や儀式的なものはいらないわ。

ただ、ここに水の精霊がいて、年に一度、精霊をもてなす。

その為に、お祭りをする。

その意識があればいいわ」

と姫様は言った。


「それであれば、村で毎年、お祭りをしている。

これは特に意味のない祭りだから、

この水の精霊のお祭りという風に変えたらどうかな。

これはダメかな」

ドンは頭をかいた。


「いえ、十分よ。

あくまで精霊のお祭りという形を作ればいい」

と姫様はうなづいた。


「あとは箱と村長の同意ですよね」

と私はドンを見た。


「あの……、

祀る箱は、村にあるものにして、祠は洞窟とかを使うとダメですか?」

とドンは姫様を見た。


「別に構わないわ。

洞窟を祠にするケースは沢山あるから、

むしろ壊れないからいいんじゃない」

と姫様は答えた。


「うちの村は貧しいけど、それならできそうだ。

村長に相談してみよう」

とドンは言った。


「そう……、

わかったわ。

じゃあ、祀るまでは、私たちも手伝う。

あとは祀り方も教えるから」

姫様に笑顔が戻った。


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