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少し戻る水の流れ

ゴンザは、竹を大きな鍋でゆで始めた。


ゆでることで、竹の繊維は膨張し、節との境目がもろくなることがわかった。

そして、

ゆでた後は鉄の棒でつつくと、すんなりと穴が開くことがわかった。


その様子を、姫様はじっと観察していた。


「やったわねゴンザ。

できる子だと私は信じていたわ」

と姫様はゴンザの背中を叩く。


ゴンザは涙ぐんでいた。


「どうしたの、変なものでも食べたの?」

と姫様は尋ねた。


「姫様、違いますよ。煤が目に入ったんですよ」

と私は姫様をつついた。


「違うわい。感動してるんだわい」

とゴンザは言った。


「知ってるわよ」

と姫様は笑った。


「本気かと思ってました」

と私は姫様の背中を叩いた。


「それくらい気が付くわよ。王族を舐めないで、読心スキルは高いのよ」

と姫様は胸を張った。


「確かに、まだ婚約者もいない。独身ですものね」

と私は姫様をつついた。


「そっちじゃないわ。心を読む方よ。

それに婚約者は、私がずっと断っているだけだからね。

勘違いしないでよね」

と姫様は頬を膨らませる。


「あんたら、本当に王族か。

普通、

侍女がそんな事言ったら、不敬罪で処分されるぞ」

とドンは眉をひそめる。


「これはね。

私が長年かけて仕込んだの。

はじめは、

私の身分に恐れをなして、

ツッコミ一つ入れることが、できなかったわ。

でもね。

私がボケ倒して、

ようやくここまで、ツッコミができるようになったの」

と姫様は胸を張った。


「本当に、スパルタでした。お菓子を人質に取られたりして」

と私は嘘泣きをする。


「なによ。あれは一回だけじゃない。

あんた、まだ根にもってるの」

と姫様は唇を尖らせる。


「ネタです」

と私は笑った。


「知ってるわよ。ほんと、あなたも笑いの運用ができるようになったじゃない」

と姫様は私の背中を叩く。


「師匠の腕がいいですから」

と私は姫様をつつく。


姫様は、にたーっと笑った。


「あのぉ。いいかな」

とゴンザが声をあげた。


「どうぞ。求婚なら間に合ってるわ」

と姫様は笑った。


「嬢ちゃんは、べっぴんさんじゃが、求婚はせーへんわい。

一応技術的には、筒はできた。

あとは、つなぎ目じゃが、

布で巻いた上から粘土で固めるか、松などの樹液で塞ぐのがええじゃろう」

とゴンザは答えた。


「じゃあ。あとは……」

と姫様はドンを見た。


ぼーっとしていたドンは慌てて、

考え出す。

「じゃあ。村を回って、ボロ布を集めてくる」

とドンは言った。


「そうね。あと何が必要かな」

と姫様は私を見た。


「そうですね。竹は今の量では足りないので、現地で全部作業をするとして、向こうに隊を派遣するのがいいかもしれませんね」

と私は答えた。


「大事になるわね。じゃあ次は村長に打診か……。

ジュナ、今回の作業何人で何日くらい必要だと思う」

と姫様は腕を組んだ。


「難しいですね。竹を切る、竹を煮る、竹に穴をあける、樹液を集める係、そして設置する係がいります。あとは竹の長さにもよるかな」

と私は答えた。


「あの竹の長さは、石の高さでいいんじゃない」

と姫様はつぶやいた。


「だろうな。状況から言うと、そうだと思う」

とゴンザは顎をさすった。


「姫様の軽く五倍はあったかと」

と私は答えた。


「嬢ちゃんの大きさの五倍だと、八メートルくらいはあるな」

とゴンザは言った。


「なによ。私を物差しにしないで」

と姫様はむくれた。


「そう言いつつ、ちょっと美味しいかもって思ってるんでしょ」

と私は姫様をつつく。


「まぁね」

と姫様は、にたーっと笑った。


「じゃあ。八メートルにプラス、岩の幅、プラス、二メートルくらいにして、やればいいだろうな。仮に岩の幅が三メートル、竹の節の間隔が三十センチくらいだから、五十センチくらいに切って、二十六本必要になる。

鍋で煮えるのが最大三本だから、九回は煮る必要がある。一回に一時間かかるとして、九時間」

とゴンザは言った。


「接合にどのくらいかかるかしら?」

と姫様は尋ねた。


「乾燥もあわせると、一日最低かかる」

とゴンザは答えた。


「あとは設置も考えると、最低でも三日はみたほうが良いわね」

と姫様はつぶやく。


ゴンザはうなづいた。


「人は、ゴンザさんが竹を煮る係、ドンが竹を切る係と、樹液を集める係をして、あと私たちは雑用。あとは力仕事ができる男が二人くらいなら妥当じゃないですか」

と私はゴンザを見た。


ゴンザは、少し考えうなづいた。


「わかった。じゃあ村長に話してくるわ」

と姫様は外に出て行った。


しばらくして、姫様は戻ってきた。

すべて了解を得て、明日から三日間。

水を戻すための部隊が組まれることになった。


私たちは、

再び、川を上流に向かった。

ゴンザたちは、初めて見る巨大な石に驚いていたが、

さっそく作業に取り掛かった。


苦労したのが、樹液を集める作業だった。

意外だったのが、村の者たちは、ゴンザ以外、木の種類を知らなかったことだ。

急遽、役割を変更し、

私とゴンザと姫様で樹液を集めることにする。

その他の者は、竹を切る作業と、竹を煮て穴を開ける作業に従事してもらった。


筒の準備と樹液集めは意外と早く夕方前には終わり、

私たちは食事を済ませ、明日の作業に備えた。


翌日、

私たちは、竹を接合する作業にかかった。

始めこそ手間取ったが、日が高くなる頃には作業は順調に進み、お昼過ぎには作業がすべて終わった。


そして三日目、

私たちは、竹を設置する。

水を通すのに時間がかかったが、お昼くらいまでには、水が少しずつ流れ出した。

(ごぶ、ごぶぶぶ、ごぶ)

冷たい水が、乾いた川底を叩いた。

水が流れ出したことで、皆は喜んだ。


しかし、姫様は一人浮かない顔をしていた。


「姫様、どうかされたのですか」

と私は姫様の顔を覗き込む。


「うん。たしかに水は流れたわ。

ただこれだけで、本当にいいのか疑問なのよ」

と姫様は頭をかいた。


「とりあえず、一日様子を見てみましょう」

と私は姫様の背中をさすった。


……

その日、一日中水の流れを観察していたが、なにも問題が起きず、

次の朝に村に戻ろうという話になった。


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