表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

祀り上げられる巫女

祭りが終わり、

私たちは、

しばらくの間、辺りを散策したりで、ほぼ遊びのような生活をしていた。


私の人生では、

このような時期もしばらくあったけど、

姫様は、

ずっと巫女や姫のお勤めがあったので、

この遊びのような生活は、

とても新鮮だったようだ。


川の魚やカニに驚いたり、

蝶々や虫たちを追いかけたり、

子供のように楽しんでいた。


姫様は子供の頃に、

子供である事を許されなかった。

赤ん坊・子供という期間はなく、

許されたのは、

ただ王族であるという選択だけだった。


私は姫様を見て、

胸が痛んだ。


私は王族を、

そして我が主たる姫様さえも、

全てのモノが与えられた恵まれた者達だと、

近くにいながらも、そう感じていた。


でも……、

本当にそうなのだろうか?

たしかに、キレイなドレスを身にまとえる。

人々からは慕われ、権力者さえもが平伏する。

希少なものも、美味しいものも、

お腹いっぱい食べられる。


しかし、

赤ん坊であること、

子供であることを、

彼女は剥奪された。


庶民が当たり前のものを。

彼女は持つことを許されなかった。


人前で泣くことも、

人前で怒ることも、

人前で落ち込むことも、

外を走り回り、足に擦り傷をつけることさえ、許されなかった。


「王族は完璧である」

という呪縛に、

彼女は縛られ続けた。

そうか……、

姫様も精霊と同じなんだ。

私は悟った。


そして、私も彼女を縛っている者の一人なのだと。


……

遊びのような生活を2週間ほど続け、

姫様も少し飽きてきたようだった。


「どうでした。

子供の生活を体験されて」

と私は尋ねた。


「そうねぇ。

憧れてたけど、

案外と飽きるのは、早かったわね」

と姫様は苦笑いを浮かべた。


「憧れてたのですか?」

と私は尋ねた。


「そりゃそうよ。王族に限らず、貴族の子息も、庶民の子たちの遊びに憧れてるわよ」

と姫様は答えた。


「それを言うなら、庶民の子達も、王族や貴族の子息の生活に憧れてますよ」

と私は姫様をつつく。


「そうでしょうね。でも現実は、退屈なものよ」

と姫様は遠くを見た。


「姫様を見てますから、たぶん理解しています」

と私は目を伏せた。


(ひゅー)

風の音が微かに聞こえた。


……

その頃から、

村を訪れる者が多くなった。


彼らの目的は姫様だった。


そう姫様は、

大きな力を持つ巫女として、

祀り上げられたのだった。


「姫様、どうされるおつもりですか」

と私は尋ねた。


「そうねぇ。まぁこれほどの美少女だし、当然の結末ね」

と姫様は笑った。


「いや。そうではなくって、これからの身の振り方ですよ」

と私は答えた。


「ジュナ……、

現実問題さぁ。

エルフガルド王国の事、

皆知らないじゃない。

戻れる可能性高いと思う?」

と姫様はじっと私を見た。


私は目をそらす。

「難しいかなと……」

と私は力なく言った。


「でしょ。私もそう思うわけ。

それでね。

他にも従者がいたでしょ。

彼らは王族に忠実なわけよ。

私のことを放っておくと思う?」

と姫様は尋ねた。


「それはそうですね」

と私はうなづいた。


「じゃあ。

姫巫女である私の最適解は何?」

姫様は顔を近づける。


「ここで巫女として、生活をしておく事ですか?」

私は尋ねた。


「どう?勝算ありそう」

と姫様は言った。


私は考え込んだ。

他の村々を回るという手はある。

しかし、それでは姫様を危険な目に合わせる事になる。

それよりも、一つの村を拠点とし、

必要なら遠征を行う形式のほうが、

はるかに安全だし、合理的かもしれない。


「他の可能性よりは、無難かと思います」

と私は答えた。


姫様は、なにも言わずに、ただうなづいた。


巫女を頼ってくる相談事のほとんどが、病気や干ばつなど、祭祀とは関係のないものばかりだった。


姫様はそれでもイライラした顔ひとつみせず、対応した。

彼女は私のできる事、村人のできる事など、よく把握していた。

この仕事は誰に任せるとスムーズか、そういう判断が的確だった。


学院では最上位の学力があったとはいえ、

私が教えるくらいあって、

姫様は学校のテストの点数は、それほど高いほうではなかった。

そして、今もそれは変わらない。


基本的な知識は、かなり怪しい。

支える者がいなければ、生きていくことさえ困難だろう。


しかし、人を用いる能力が誰よりも優れていた。

近衛騎士団長がよく言っていた。

「姫様を指揮官として欲しいと……」


姫様は、その人を使う能力を巧みに使い、問題を解決していった。

そのたびに姫様は言った。

「これは巫女の力とは関係のない、知識によるものよ」

と……。


「毎回毎回、

巫女の力とは関係のない、

知識によるものと伝えなくてもいいのでは?」

と私は尋ねた。


「……ジュナ、

あなたは利口だけど、

見えていない事があるわ」

と姫様は呟いた。


見えていない事……。

それを知りたいと、

そう私は願った。


「それは何ですか?」

と私は尋ねた。


できるなら、姫様の見ているものを知りたい。

純粋に、そう願った。


「私たちが飛ばされた世界にも、

権力を持つ者がいる。

それは王かもしれないし、

また別の勢力かもしれない。

私に人知を超える不思議な能力があるとなれば、

その権力を持つ者はどう思うかしら」

と姫様は少し寂しげに言った。


私は、言葉に出せなかった。

善意で行ったことが誤解され排除される。

歴史の表舞台には出ないけども、

そんな事は……、

捨てるほどあるのだろう。


「排除……」

と私は呟いた。


姫様は悲しそうに笑った。


「まぁ、そういう事よ。

だからね。

私は優秀だけど、あまり目立たないようにしたいわけ。

もちろん、こんな美少女で優秀だから、目立たないようにするのは、不可能だけど、

自分から刺激を与えるような愚かな真似はしないのよ」

と姫様はすーっと息を吐いた。


姫様の見方がわかったことで、

私はまた味方になれたと思う。

しかし近づいた気になったが、

また少し離れた気がした。

権力者の憂鬱が脳裏をよぎったからだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ