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花火の流星群

月曜日になり・・・



今日は朝から碧衣っちとキッチンのお掃除をしている。



ツキノンと仲直りができたか聞こうとしたらその前に碧衣っちから驚く話を聞かされた。



「ツキノンと一晩二人で過ごしたぁ?!」


「もーキャロまた声が大きいって!」


「あっごめーん。だって碧衣っちの発言びっくりなものばかりだから」


「まぁ、確かに驚くよね、イキナリこんな話・・・でもただ台風をしのぐ為にそうなっただけで、特に何も・・・」


「何も?ほんとに?」


怪しい・・・だって二人ともけっこう激しい恋愛しそうな感じがするし・・・


ほら、現に碧衣っち、ぎくっとして言葉につまってるし。



「何かあったでしょ~」とじーっと上目遣いで碧衣っちを見る。


「な、何もないって~!ほんとに一晩語り明かしただけだから」


あっ逃げた~。



でも仲直りできたみたいでよかった。

仲直りどころか先にどんどん進んでるみたいで。


なんだか二人の展開にはこっちまでドキドキしちゃうなぁ。



友達以上恋人未満って感じで、ハラハラドキドキしちゃう時期だよね・・・

あたしもそうだったもんなぁ・・・。


相手の気持ちがいまいち分からなくて、くっつきそうになったり離れそうになったり。


ちょっとしたことで気持ちが振り回されてしまう。



これから色々な波乱が待ち受けていたとしても、最後には無事くっついてほしいなぁ。




「悠真には悪いことしちゃったなぁって思ってて。この間はドタキャンみたいになってしまったし・・・お詫びに今度悠真とご飯に行ってくるよ。」

と碧衣っちは苦笑しながら言う。


「うん、そうだね。でも悠真くんはもう分かってると思うから、はっきり言ってあげていいと思うよ」


「うん、分かった」



全部の恋がうまくいくわけじゃないんだよね。

一つの恋がうまくいけば、その分他の誰かが傷つくこともある。


それはどうしようもないことだよね。



だって人の心の恋の矢印は誰にもバランスよくなんて操作できないんだから。

一方通行だったり重なり合ったりほんとバラバラだから、時には複雑に絡み合ってしまう・・・。






お昼からは階段の手すりを掃除していると・・・



「キャロ~」


「あっ鳴ちゃん!」


向こうからなんだかやけにご機嫌の鳴ちゃんがやってきた。

今夏休み中なんだよね。


「キャロに報告したいことがあって」とにこにこしてる。


「何なに?」


「おれ好きな子できた~☆」


え!!


「や・・・やったぁ、やったね鳴ちゃん!!」とあたしは跳び上がって喜ぶ。


「ありがと~!ってまだくっついてもないんだけどさ」


「鳴ちゃんなら大丈夫だよ~!高校の子?」


「うん、クラスは違うんだけど、夏休みの講習でよく出会う子でさ、すっごく可愛くていい子なんだー」



わぁ・・・嬉しいな・・・。心が暖かくなる。



「それで次の土曜の花火大会、誘ったらOKもらえてさ」


あっそれで超ご機嫌だったんだ!


「よかったねー鳴ちゃん!」


「うん!すっごく楽しみ♪おれ頑張るからキャロ、応援しててね?」


「うん!もちろん!」



鳴ちゃんいい表情してる。いつもより一層キラキラ・・・


そういえば鳴ちゃん、前より背が伸びたし、なんだか急に男らしくなったような??



みんな気付かない間に変わっていくんだな・・・。

心も体も大人になっていく・・・。



嬉しいようで少し寂しいような。



「どうしたの?キャロ」


「何でもないよ。鳴ちゃんが一歩前に進んだから嬉しくて」


「うん、キャロのおかげ。ありがとね~」とにっこり笑う。




その天使のような笑顔だけはずっと変わらないでほしい。



そんな風に思った。





---------------------------------------



来ました!響と出会ってから二度目の花火大会!


去年はさんざんだったからなぁ。

今年はリベンジのつもり。



ちゃんと浴衣も着たし、髪に和柄のピンも付けたし、花火デートの装いばっちし☆


寮の前で待ってると響がやってきた。



「!!」


響も浴衣着てる!!


紺色の浴衣・・・薄く白の刺繍で龍の柄が入ってる・・・。



カッコイイ・・・!!いつもより大人っぽく見える・・・。



「やっぱおまえ浴衣で来たんだな。オレも合わせようと思って着てみた。」

とにっこり笑って言う。


「・・・・」


「キャロ?」


「・・・あっごめん。あまりによく似合ってるから・・・」


思わず見とれてしまった。



「それはこっちのセリフ」


「え?」


「すっげーかわいいじゃん。やっぱおまえはピンクが似合うな」と笑う。



きゅーん・・・


嬉しい・・・ピンクの浴衣にしてよかった。

キャロ、ナイスチョイス!





そして花火の観覧ポイントに向かってゆっくり歩き出す。



「今年は絶対はぐれんなよ」


「う、うん!絶対はぐれない」


今年は大丈夫!

だって去年とは違って、ちゃんと手つないでるから。



去年はこんな風に隣ですら歩けなかったし。

まぁ、それはあたしのせいだけどさ。



なんだか懐かしく感じてしまう。



去年は結局一緒に観れなかったから、代わりに手持ち花火を別の日に一緒にしたんだよね。ドキドキしてすごく楽しかった。



「キャロ、今日花火見終わったら、手持ち花火しねー?」


「え?」


「去年約束しただろ?」



約束・・・覚えてくれてたんだ。



去年の約束が今年ちゃんと実現されるのって嬉しい。


幸せの繰り返し・・・そんな風に思えてくる。


これからもずっと続く幸せの繰り返し。



「うん、やろう!」



こんな風に、幸せを何度も何度も繰り返しながら、響と一緒にいつまでも歩いていきたいな。





花火の時間が近づいてきて、だんだん人が増えてきた。


「そういえば鳴ちゃん、今日好きな子と一緒に花火観に行くって言ってたよ。」


「へ~あいつ好きな子できたんだ」


「うん。ばったり出会わないかなぁ?どんな子か見てみたいよ」


「この人混みじゃさすがに無理だろ」


「まぁそうだよね~。・・・最近なんか鳴ちゃん逞しくなってて、少し寂しい感じして。」


「寂しい?」


「うん。周りが変わっていくことが、寂しく感じるときがあって。ずっと同じじゃいられないんだなぁって。」



「・・・けど、それってオレらだってそうじゃん」


「?」


「オレもキャロも去年とは違う。変わっていってる。

そのことで寂しい思いをした奴だってきっといると思う」


「あ・・・」



「だからきっとお互い様だ。変わっていくのは生きてる証拠だ。

一日単位ですら気付かないうちに変わっていってる」


「・・・うん」


「だから寂しくなんて感じる必要ない。みんな同じだから。

一緒に変わっていってる。そう思ったら寂しさマシになんねー?」


「確かに・・・みんな一緒に変わっていってるって思ったら、少し寂しさが和らいだよ」


「だろ?次寂しくなったらそう思えばいいよ」



響の言葉、胸にじーんときた。


変わっていくのはみんな一緒なんだ・・・・。



「それに、変わらないものだってある」


「どんなもの?」


「オレのおまえへの気持ち」


「・・・」


「それだけは一生変わらない。だから安心しろ。」


「・・・」



どうしよう・・・泣きそうだ・・・。


寂しい気持ちが響の言葉でどんどん消えていく。

代わりに響の温かさで心が埋まっていくみたい。



「響~好きー」

とあたしは思わず響に抱きつく。


「お、おまえなーこんな人混みで!」



あはは、照れてる。




心が安心感で包まれる。




響が傍にいてくれたらあたし、もう寂しくなんかないよ






---------------------------------------



「碧衣!すみません。遅れました。」


10分遅れで私の前に登場する月野・・・


その姿を見たら、私は遅刻した月野への怒りなんて、吹き飛んでしまった。だって・・・



月野が浴衣着てるーーー!!



黒の浴衣・・・銀色の帯を、わざとなのか緩めにまいてて、少し着崩して着てる。それが妙に色っぽい・・・


って私、セクシーさで完全に月野に負けてる気がする・・・

これでも女なのに・・・。



あーどうしよう、また鼻血出そう・・・・。

一体どれだけ私を萌えさしたら気が済むのか・・・。



「碧衣?怒ってますか?」

と私の顔をのぞきこむ。


どきー!


やめて・・・今のその格好でそんなことされたら私・・・

気が変になりそう。




今日は花火大会。人混みが嫌いそうだから断られるかなと思いつつ、勇気を出して誘ってみたらなんとOK をもらえた。



月野はどうやら花火を観るのは好きみたい。



「碧衣は白も似合うんですね」

と私の方をじっと見る。


「私、白と黒が好きで・・・」


今日は私も浴衣を着てて、白の生地に、青と紫の金魚模様の浴衣。



「今日の碧衣、凜としててとても綺麗です」



かぁぁぁぁぁ・・・・



月野はいつも恥ずかしげもなくストレートに褒めるから、すごく照れてしまう。



「・・・月野こそカッコイイよ・・・」と私はシャイだから小さな声で控えめに言う。


「え?何て?聞こえませんでした。」


「だから、その、カッコイイって・・・」


「まだ聞こえません。」

とこっちを見てにこにこしてる・・・。


あっ!その顔はもしかして・・・



「もう!聞こえてたんでしょ!」


「あはは、バレましたか」



うーーーやられた。




それにしてもすごい人混み・・・下手したらはぐれそうだな。



そのとき私はふと思いついた。


もしかして、このどさくさに紛れて手をつなげるんじゃ??



隣の月野をそっと見てみる。


「ん?」

と気付いてこっちを見る。


どきっ



だ、ダメだよ、そんな欲張っちゃ・・・。

一緒に花火見に来れただけでも有り難いと思わないと・・・。

バチがあたっちゃう。



「すごい人混みですねー」


「うん、ここの花火大会人気だから」



「・・・手を貸してください」

と月野が右手を差し出す。


「え?」


「碧衣とはぐれたら嫌ですから」


「・・・・」


月野の手のひらに私の左手を乗せる。


その途端ぎゅっと握ってくれた。



ドキドキドキ・・・




繋げた・・・。私の手と月野の手。




もうそれだけで嬉しくて、心がどうにかなっちゃいそうだ






そして空間を揺らすような大きな音が突如鳴り響き、花火が始まった。

始まりは連続花火。贅沢なくらいのまばゆい光の花が空を飾る。



「綺麗・・・」


「はい、色鮮やかです」



私たちは今堤防から花火を眺めている。海のように広い川から花火が次々と上がって行く。


赤、黄色、水色、ピンク・・・ほんと色鮮やか。

私たちの目を存分に楽しませ、夏を感じさせてくれる。



花火の途中でふと隣を見てみると、月野が花火に魅入っていた。



花火も綺麗だけど夜空を見上げる月野の横顔もほんと綺麗・・・。

今日はいつもと違う格好のせいか余計に美しく見える。

浴衣を通してるその白い肌もなんだか艶やかで・・・




そんなとき月野が突然話を始めたから、私はハッと我に返った。


「僕は・・・花火が夜空に咲き誇る瞬間ももちろん好きですが、それよりも咲き終わって最後流れ落ちていくのを見るのが好きなんですよ」


「・・・へー珍しい意見」



「たぶん、そんな人あまりいてないと思います。でもほら、今もそう、まるで星が流れているように僕には見えるんです。」


夜空に目を移すとちょうど花火の光が散っていく瞬間だった。



「・・・確かに言われてみればそう見えるかも」


「はい、流れてスっと闇に消える。そこになぜかせつなさを感じます」



月野らしい見方だな・・・。



「あ、なんか僕変なこと言ってますよね?変わり者と思われたかな」


「ううん、そんなことない。他の人とは違う感性持ってて素敵だなって思う」と私が一生懸命に伝えると、


ふっと優しい笑顔になり、


「碧衣ならそう言ってくれると思いました」と言った。



きゅーん・・・



月野は最初の頃とは違って今みたいな優しい笑顔をよく私に向けてくれるようになった。


月野は前と変わった・・・それが私はとても嬉しい。


仲良くなってる証拠だと思えるから。






そしてフィナーレを迎える。



月野と同じ見方で見てると、最後の柳のオンパレードが、まるで流星群に見えた。




花火が終わるといつも心が寂しくなるのはどうしてなんだろう?

せつない気持ちになるのはどうしてだろう?


夏の終わりを感じさせるから?



「最後の柳、流星群みたいに見えました」



あっ・・・一緒のこと思ってる・・・



「碧衣、何笑ってるんですか?」


「思ってること一緒だったから」



「・・・それは・・・なんだか嬉しいです」


「私も嬉しい」とにっこり笑う。



「・・・・・」



ん?月野が私をじっと見てる・・・。


どうしたんだろう・・・。


あんまり見つめられると、また胸が騒がしくなってくる・・・

その視線はまるで私の心を射抜く矢のようで・・・

大きな威力を持っているから。



「碧衣は・・・あの花火みたいに闇の中に消えてしまわないでください」

とまっすぐ私を見つめて言う。


えっ・・・



「私は・・・消えないよ、月野の目の前にずっといる」


「・・・はい、僕の前から消えたりしないで」



どうしたんだろう?月野、なんかいつもと様子が違う。

私を見つめる目が寂しそうに見える・・・。



もしかして月野も花火が終わって寂しさが募ったのかな?



そんな私たちの周りでは、見に来てた人たちが一斉に移動し始めて、私の背中にどんっと誰かがぶつかってきた。


「きゃっ」


思わず前のめりになって前にいてた月野の胸に飛び込む形になってしまった。


「大丈夫ですか?」

と私の両肩を持ちながら言う。


「う、うん」


ドキドキドキ・・・



「・・・僕らも帰りましょうか」


「・・・うん」



ほんとはまだ帰りたくない・・・

月野と一緒にいたい・・・。






そんなときふと私は月野の背中越しに、信じられない光景を見てしまった。


まだだいぶ遠くにいてるけど、私は目がいいから分かる。



キャロと響さんがいる!!

こっちに向かって歩いて来てる・・・。



そ、そんな嘘でしょ・・・!


こんなところで出会うなんて・・・。



「碧衣?どうしたんですか?顔が青ざめていますが?」



今、月野がキャロと会ってしまったら・・・


ドクン・・・ドクン・・・



また気持ちが戻ってしまうかもしれない・・!?



嫌だ・・・それだけは嫌・・・!


せっかく風化し始めてるっていうのに、また戻っちゃったら・・・。


そうなったらせっかく繋がった手もまたきっと離れてしまう・・・




私は思わず月野の手を取って、人の波と逆方向へ早足で歩き始める。


「あっ碧衣、いきなりどうしたんですか?こっちは逆方向ですよ!」


「今は黙ってついてきて」


「・・・?・・」




私はほんと自分勝手だ・・・


いつも自分の気持ちだけで後先考えず動いてしまう。


だけどどうか今だけは許して。




あの花火みたいに私、月野の中から消えたくない・・・









「夜店に寄りたいなら入り口にもありましたのに」



私は自分勝手な行動をした上に、嘘までついてしまった。


急に夜店に寄りたくなっただなんて、すごく苦しい言い訳・・・。


なのに月野は何も疑ってない。


よかった・・・。なんとかごまかせたみたい。



「月野、ごめんね、振り回しちゃって」


「いいですよ、僕もちょっとお腹空きましたし、あっそれちょっとください」

と言って、私の持ってる焼きトウモロコシに横から月野がパクッとかじりついた。



どきっ



なんだか大胆に見える・・・でも本人は何も考えてなさそう。


それって私のこと意識してないからできる行動?




月野はいつになったら私の事だけを見てくれるようになるのかな?


私はいつまで待っていればいいんだろう?


私はずっとなんて待てるのかな?



急にこんなことが次々と頭に浮かんできた。



月野と過ごす時間が多くなればなるほど、だんだんと我慢がきかなくなってきてる。


欲張りになってきてる。




「碧衣?」


「あ、ごめん、ボーっとして。そろそろ帰ろっか」


「はい」



ふいに月野が自分の手を私の手に重ねてきた。



あれ・・・?



「もう人混みじゃないよ?」



「・・・今は繋ぎたいから繋いだだけです」


「!」




うう・・・

月野はずるい・・・

そんな思わせぶりな態度取って、嫌でも期待しちゃうじゃない。




胸が苦しい・・・


もどかしさで苦しい・




早く月野を自分のものにしたい。


そんな黒い気持ちがどんどん強くなってきてる。



やっぱり私はずっとなんて待てない気がする。






また感情が暴れ出しそうだ。






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