THE END
今日は金曜で家庭教師の日。
いつものごとく悠真くんが終わってから響の部屋にやってきた。
でもいつもと様子がおかしくて、さっきから外をぼーっと眺めている。
今日は雨が降っていて、時折雷の音が遠くで聞こえる。
そういえば今日は夜遅くに台風が来るってニュースで言ってたっけ。
じゃあこの雨はその前兆みたいなものだね。
あたしと響は顔を見合わせて、首をかしげる。
一体悠真くんどうしたんだろう・・・?
「・・・碧衣さんの想い人ってさぁ、もしかして長身で中性的な顔した人?」と虚ろな目でこっちを見て言う。
え!!
それって・・・・その特徴には一人だけ思い当たる人がいる。
「どうしてそれを??」
「・・・やっぱそうなんだ・・・」
どういうこと??まさか・・・
「この前会ったんだ。屋敷の裏門のとこで」
「ええ!!」
あたしは思わず悠真くんに詰め寄っていた。
「何で??」
頭が混乱する。
ツキノンがここへ来た??
「えっ・・・なんか碧衣さんを待ってたみたいでさ、その人がおれたちを見て立ち去って行ったんだけど、碧衣さん追いかけて行って・・・おれ置いてけぼりくらった・・・」
えーーーーーー!!
ドキドキドキ・・・
なんだかドラマみたいなことになってる・・・
ってことは、碧衣っち仲直りできたのかな??
うわぁ・・・めちゃくちゃ気になるよ。
話聞きたくても碧衣っちもう帰っちゃっただろうし、月曜まで待てないよ~!
あたしがわくわくドキドキしてるのとは反対で悠真くんはかなり落ち込んでる。
い、いけない。悠真くんの気持ち考えたらこんな浮かれちゃダメだよね・・・。
「ジ、エンド・・だな」
と響がぼそっと言った。
「わーーー・・・やっぱそうなの?まだ全然アタックできてないのに~~~」と頭を抱えだした。
いや、もう十分アタックしてたと思うよ・・・。
全部空振りしちゃってたけどさ。
「けどまだくっついたとは限らないと思うけど・・・」
とあたしは一応フォローしてみた。
「いや・・・なんとなくその男の人も碧衣さんのこと想ってるように見えたし・・・」
「ほ、ほんと?!」
あたしは目を輝かせる。
「キャロちゃん・・・?」と悠真くんが恨みがましい目でこっちを見る。
あわわ、いかんいかん。
露骨に喜んでしまった。
でも悠真くんには悪いけど・・・やっぱりあの二人がくっついたら、あたし嬉しい・・・。
なのでもう気休めのフォローはやめて、
「ジ、エンドだね」と言った。
「キャロちゃんまで・・・あ~~~終わった・・・」
悠真くんの恋は終わってしまったけど・・・
碧衣っちとツキノンは始まったかもしれない。
この雨嵐のように激しい恋が幕を開けたんだろうか・・・?
私は二人を思い浮かべながら窓の外をそっと見つめた。
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私はまた月野のバイト先へと足を運んでる。
BARに着いた途端、急に雨足が強くなってきた。
風もどんどん激しく吹いてきたし・・・
台風、深夜あたりに来るって言ってたのに、もしかしてスピード速くなってる??
でもここまで来ちゃったし、とにかくお店に入ろう。
ドアを押して入ると、また今日も閉店時間が近いのと台風の影響かお客さんはもう誰もいない。
「いらっしゃいませ・・ああ君か!」とマスターが私を見てにこっと笑ってくれた。
「碧衣??今日は来ないと思ってました。こんな天候だし・・・」とマスターの隣に立ってる月野が驚いた顔をする。
「台風深夜に来るみたいだから大丈夫かなって」
それに月野に会いたかったし・・・
「とりあえず座りなさんな。」とマスターが言ってくれた。
私は前と同じカウンターの中央に腰をかける。
「すまんが俺は今日はちょいと早めに上がらせてもらうな。さっき、カミさんから連絡があってな、風の影響でドアの調子がおかしくなったと言うんだよ。本格的に台風が来る前になんとかしねーとな」
奥さんいるんだ・・・。
こんな人が旦那さんなら暖かい家庭が築けそう・・・。
「マスター、後は僕がやっておきます」
「すまんな。おまえさんたちも、あまり遅くならないようにしろよ。」
「はい、分かりました。」
そうしてマスターは足早に帰って行った。
あたしは改めて前に立ってる月野を見る。
少し緊張する・・・この前のこと思い出しちゃうから。
『心の中にいつの間にかあなたがいてる』
月野の言葉すごく嬉しかった・・・。
私、月野の中に存在することができてるなんて
まだ信じられない。
「今日は何にいたしましょうか?」と微笑む。
「今日も・・・マリンスノーが飲みたい・・・」
「かしこまりました」
どうしよう・・・好きな気持ちが前よりもっともっと強くなっていて
月野の顔を見るだけで幸せ・・・。
顔がついゆるんじゃう・・・。
今この空間には二人だけで、月野は私の為だけにカクテルを作ってくれてる・・・
それって最高の時間かも・・・。
それこそ今月野を独り占めしてる気分。
「おまたせしました」
と前と同じで私の前にすっとカクテルを置いてくれる。
そういえば月野の手って白くて指が長くて綺麗な手してるんだよね。
触れたいな・・・
「どうしたんですか?」
「えっあ、ううん何でもない」
ヤバい!私また正気失いかけてたかも!!
・・・気をつけなきゃ。
「おいしー♡」
「クス・・・」
「ん??」
月野がくすくす笑ってる。
「ああ、ごめんなさい。なんか碧衣って最初会ったときとイメージが変わったなぁと思って」
「え、そう?」
「はい、無表情で無反応で、正直ロボットみたいな子だなって思ってて」
「えー!ロボットなんて、ひどい・・・」
「ごめんなさい。でも、今は逆に、表情にけっこう出る子なんだなって思ってます。可愛いです」
えっ!!
可愛い?私が?
「そんなことあまり言われたことない・・・いつもクールだとか無愛想とか・・・」
「え?そうなんですか?僕には普通の可愛い女の子に見えますが?」
かぁぁぁぁ・・・・
恥ずかしい・・・
それはきっと月野の前だからだよ・・・
月野の前だと私、少し乙女になってしまってるかもしれない。
他の人には見せない自分に・・・。
私だって好きな人には可愛く見られたいから・・・少しでも・・・。
それから一時間ほど談話した後、
お店を閉めて地下からあがると・・・
「うっわ・・・これはきついですね・・・」
ビュービュー荒れ狂う風、叩きつけるような雨・・・
「きゃっ!!」
風のせいで思わずバランスを崩して倒れかけたところを月野が支えてくれた。
「ちょっと、一旦お店に戻りましょう!」
そうしてまたお店の中に入る。
地下にいてたから外の状況全然わからなかったけど、外は大変な状況になってたんだ。
「まいったな・・・台風もしかしてもう来てるんじゃないでしょうか」
「うん・・・スピード早まったのかも・・」
時刻は23時・・・
「この様子じゃ電車も止まってるかもしれない」
確かに・・・台風のときはよく電車止まったり、遅れたりするよね。
でもそれじゃ・・・どうすれば・・・最後の手段のタクシーだってこの天候じゃ来てくれるかどうか・・・。
「今日は・・・ここで朝まで過ごしましょうか」
と私の方を見ずつぶやくように言った。
「え!!」
ここで朝まで・・・
二人で・・・?
ドキドキドキ・・・
ヤバい、死んじゃいそうなくらいドキドキする。
別に雨宿り的な意味で言ってるだけで深い意味なんて全くないって分かってるんだけど、それでもドキドキしてしまう。
「嫌ですか?」とこっちを見る。
私は思わずブンブンと首を左右に振った。
「じゃあとりあえず座りましょう」
「うん・・・」
こんな状況なのに、私、ちょっと嬉しく感じてる・・・
月野と朝まで居れることに・・・。
台風にちょっと感謝かも。
それからテーブル席に座り、他愛の無いお喋りを始める。
数時間経った後に、
「あっ、立て看板しまうの忘れてた・・・ちょっと外の様子見てきますね」と月野がお店の外へ出て行った。
数分後、雨で濡れた立て看板を持ってお店の中に入ってきた。
「看板無事だった?」
「はい、ちょっと数メートル飛ばされてたんですがなんとかゲットしました」
わぁ・・・やっぱ風すごいんだな。
ってか月野も髪とか服が濡れちゃってるし!
「月野、そのままだと風邪引いちゃう!」
「確かに・・・ちょっと制服に着替えてきます」
と奥に入って行った。
しばらくしてまたバーテンダーの格好に戻った月野が出てきた。
あっでもまだ髪が濡れてる。
私今日はちょっと大き目のハンドタオル持ってるんだった。
目の前に座った月野の前に行って濡れた髪を拭いてあげた。
「ああ、すみません」
あっ・・・滴が額に流れてて・・・
なんだろ・・・男の人なのに妖艶な感じがする・・・
ドキドキドキ・・・
「碧衣?」
「・・・・」
「・・・そんなじっと見ないで下さい・・・」
「あっ・・・ごめん」
不快に思われたかなと思ったんだけど、その顔を見るとどうやら照れてるっぽい・・・?
月野の照れた顔って初めて見たかも・・・。
少し拗ねたような顔しててかわいいな。
首筋にも滴が流れていく・・・
その白い首を見てると、私はついあの痕が見たくなってしまった。
まだ残ってるんだろうか。
私のつけた愛の烙印。
「えっ碧衣??」
私は無意識に月野の首元に手を伸ばしていた。
あっまだ残ってる・・・少し薄くなってるけど。
そっとその烙印に指で触れる。
「・・・碧衣って不思議です、ウブなのか大胆なのかよくわからない」
「あっ・・・」
また私我を失って・・・
首元に伸ばしてた手をイキナリがしっと掴まれる。
「あまり大胆なことはしないで下さい」と鋭い目でこっちを見つめる。
「え?」
そしてそのまま引っ張られて、私は月野に向かって前のめりになる。
私の顔のすぐ前には月野の顔が・・・
超至近距離・・・!
ドキドキドキ・・・
「僕だって男なんですからあまり大胆なことされると・・・」
と私の耳元に顔を近づけて
「理性が飛びます」
かぁぁぁぁぁ・・・
いつの間にか私の苦手な月野になってる・・・
途端に私はとまどってびくびくしてしまう・・。
「あ、あの・・・」
どうしよう震えてきちゃった。
「その顔そそるんですよね・・・碧衣のその顔見ると僕、いつももう一人の自分が出て来てしまって・・・ほら今も」
私の腰に腕を回して首筋に口をあててきた・・・??
きゃーーーーーー!!
もうダメ・・・ジ、エンドだ・・・。
頭が真っ白・・・。
「・・あっ・・・ま、待って・・・」
ドキドキドキ・・・
ダメだ、気が変になりそう・・・
だって月野の口が耳のすぐ下から今は鎖骨あたりに移動してて・・・
くすぐったいようなトロけてしまいそうな変な感覚。
これ以上は・・・私の理性だってもたない
「・・・止めるんだったら、僕のことあまり誘わないでください」
と首元から顔を離して言う。
あっいつもの月野に戻ってきた・・・?
「言ったでしょう?理性を失いやすいタイプだと」
「う、うん」
そう言えばそんなこと言ってたな・・・。
でもそれはてっきり好きな人に対してだけだと思ってたから・・・。
月野はやっぱり危ない奴だー。
けどそんな月野も好き・・・
私も危ない奴だな。
月野が立ち上がって奥から飲み物を持ってきてくれた。
いい香り・・・ハーブティだ。
落ち着くなぁ・・・。
「ところでこの前一緒にいたあの男性は、碧衣の事が好きなんですか?」
えっ・・・
「う、うん。そうみたいで何回もアタックされてて・・」
「ふーん」
あれ・・?なんか機嫌悪くなった?
冷めたような目になってる・・・。
「・・・あんまりのんびりもしてられませんね」
「え?」
「家庭教師に戻ること」
「?」
「碧衣がそいつのこと好きになるかもしれないですし」
「え?・・・好きになんてならないよ」
月野・・・そんなこと心配してるの?
「そんなの分からないじゃないですか。人の心は変わるし」
「変わらないよ。」
「信じません」
「どうして?私は月野しか見てないのに」
あっ言っちゃった・・・
ってか言わせないでよ~!
なんだかこれって恋人同士のような会話に思える・・・
私と月野は違うのに・・・
「じゃあこれからも僕だけを見ててください」
あっ真剣な目・・・。
「うん」
私がそう言うと月野は安心したような顔をして優しく微笑んだ。
私が思っているよりも、私の存在、月野の中で大きくなってる・・・?
そうだったら嬉しいな・・・。
朝方にうっすら目を開けると・・・
どうやら私イスに座ったままいつの間にか寝てしまったみたい・・・。
前を見ると月野も寝ちゃってる・・・
顔と腕をだらんと下に向けてて、なんて無防備な姿勢・・・。
近寄って横にしゃがんでみる。月野の顔を覗き込むと・・・
寝顔も美しいなぁ・・・。まつげがすごく長い・・・。
下に向けられてる綺麗な手を見た途端、また触れたい気持ちが強くなってきた。
ちょっとだけならいいよね?
熟睡しちゃってるし今ならバレない・・・
私はそっと指先に触れる・・・
ドキドキドキ・・・
あっ少し冷たい・・・
いつかこの手と私の手繋げたらいいな・・・。
そんなことを考えながらしばらく月野の寝顔を眺めてた。
台風が過ぎ去った朝の静けさと同じように、私の心も穏やかで、
そして幸せに満ちていた。




