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marine snow

季節は8月。

毎日暑い日差しが照りつけて、暑さに弱い私には地獄のような毎日。



月野がみんなの前から去ってもう2か月が経った。

月野が言ってた通り、ほんとうに多忙な毎日を送ってるみたいで、私を呼び出す回数もどんどん減っていった。


それだけ、感情が暴走することが少なくなったってことだけど、その分月野と会える日も少なくなったのは、私にとったらすごく寂しいことで。



だってもう3週間も顔を見ていない。



だんだん会いたい気持ちが募って来て、我慢できなくなってきてる。


私も月野と似ているところがあって、自分の感情を暴走させてしまうときがある。



今まさにそうなっている気がする。



だって現に今向かっているのは・・・




目の前には地下へ続く階段があり、階段の入口の横には看板が建てられていて『MOON REBAR』と書いてあり、お酒のメニューが載っている。



そう私は月野のバイト先に来てしまったんだ。


了解も得てないのに。

いるかどうかも分からないのに・・・。


前に一度だけ場所を聞いて、ちゃっかり覚えていた。


閉店間際に来たからお客さんはもうあまりいてないかもしれない。

行こうかどうか迷ってたらこんな時間になっていたんだ。



ゆっくり恐る恐る階段を下りる。

下りきるとすぐ前に扉があった。


ここに来てまた迷いが生じる。



月野いるのかな?

もしいたら、私を見てどんな顔をするだろう・・・。




扉の前で少しの間躊躇してたら中から扉が開かれた。


「!!」


「あっすいません、もう閉店の・・・え?・・碧衣?」



つ、月野・・・!!



心の準備が・・・



ドクン・・ドクン・・・




目の前に現われたのは月野。


私を見て驚いた表情のまま止まってる・・・


「どうして碧衣がここに・・・?」



どうしよう言葉が出てこない。




「おーい風人、どうしたんだ?」

中からハスキーな男の人の声がした。


「あっすみません、ちょっと友達が来てくれて・・・」


「風人の?もう閉店時間だがかまわないさ、特別に入ってもらえ」


「あ、ありがとうございます」


月野がどうぞと手招きをしてくれて私は控えめな姿勢で中に入った。



「お、綺麗な人じゃないか。彼女か?」


えっ!!


カウンターに立っている30代ぐらいの、オシャレ無精ひげをはやした温かい感じのする男の人が言った。掘りの深い顔をしていて男前だ。


ここのマスターなんだろうか?

バーテンダーってもっとおとなしいイメージがあったから意外、この人は明るくて陽気な感じがする。



「違いますよ、友達です」


「なんだ、つまんねーなぁ」



月野はカウンターの真ん中の席に案内してくれた。

お店の中は、カウンター席が8席ぐらいあり、周りに4席ほどの木目調の丸テーブルの席があるだけ。

ほんと常連客が多く来そうな穴場的BARだ。


「裏、片付けてくるから、おまえはお友達のおもてなししてあげな」


「は、はい。マスター感謝します。」


「いいってことよ。・・・はぁ若いっていいよなぁ」


なんかマスターすごく気さくでいい人さがオーラににじみ出てる。

あんな人がマスターなら、またここへ来たいって思えるかも。



私の前に月野が立つ。


さっきは動揺してて月野の顔しか見てなかったけど、目の前の月野はバーテンダーの格好をしててすごく決まってる。

白のボタンシャツに黒のベスト、エンジ色の蝶ネクタイ。


私こういう格好大好き・・・

そんな私の好きな格好をしてる月野を見ると・・・



やばい、鼻血出そうなほど萌えちゃう・・・。


私変態かも・・・。



「碧衣どうしたんですか?」


「あ・・・えっとその格好、すごく似合ってるなって思って・・・」

とちらっと月野を見ると、


「ありがとう」とにっこり笑った。


きゅーん・・・


何これ、胸の奥が締め付けられるような、そしてドキドキする・・・。



「最近やっとお客さんにお酒を出すお許しが出たんですよ。だから今日は碧衣に合うカクテルを作ってあげますからね」


「・・・・」


なんだかすごく幸せな気分。



久しぶりに顔を見たら、前よりずっとずっと、私月野のこと好きになってるみたい・・・。


あっ月野がシャカシャカ、シェイカーを振ってる。

ドラマとかで見たことあるけど、実際には初めて見た。

様になっててカッコいいなぁ。




すっと目の前にブルーの海のような色をしたカクテルを置かれた。


綺麗・・・。



ブルーの上には白い泡が綺麗に乗ってる。



「マリンスノーです。海の上に白い雪が降り積もってる、そんなイメージです」


「・・・素敵」


「僕の碧衣のイメージです」


「・・・ありがとう!」


こんな素敵で綺麗なカクテルが私のイメージなんて・・・

もったいない言葉だよ。



「おいしい!」爽やかな喉越しでまろやかな味・・・。


「それはよかった」と月野は嬉しそうに笑う。




勇気を出して来てよかった・・・。





「風人、戸締りしといてもらえるか?俺は一足先に上がるから」


「はい、マスター心遣い感謝します」


「いいっていいって。おまえはよくやってくれてるし、たまにはご褒美やらんとな。んじゃ、お友達さんもごゆっくりな」


「はい、どうもありがとう!」と私がお礼を言うと、マスターはニッと笑ってドアから出て行った。


その後ろ姿を見送って


「すごくいい人って感じする・・・。」


「はい、めちゃくちゃいい人なんです。仕事の面では厳しいところがあるけど、それだけこの仕事に情熱を持ってるってことですし、温かい人です」


「うん・・・」



「ところで今日はどうしたんですか?」とグラスを拭きながら聞いてくる。


「あ・・・うん、最近月野と会ってないから、どうしてるかなって・・・ごめん、突然来ちゃって。迷惑・・・だったかな?」


ドキドキドキ・・・



「いえ、嬉しかったです。心配して来てくれたんでしょう?」

と優しく微笑んで言う。



心配・・・

それももちろんあるけど、

一番の理由は、私がただ月野に会いたかったから・・・。


顔が見たい・・・声が聞きたい・・・



月野の為とかじゃなく自己中な理由なんだよ。ここへ来たのは。



でも私は怖くて本当のことは言えない。



「うん、心配だった。最近は気持ち、落ち着いてるの?」


「はい、意外なほど心静かです。毎日充実しているからでしょうか。」


「そっか・・・よかった」


「もう僕はきっと大丈夫です」


「え?」


「なんとなくそう思います。この毎日がこのまま続けば」

と月野がすっきりしたような顔つきで言う。




それって・・・大丈夫だからもう私はいらないってこと?



急に血の気が引いて、

何かが私の中で音を立てて崩れ始める。

心が崩壊し始めた音?




「あっもうけっこう遅い時間ですね。一緒に帰りましょうか」


「・・・うん」



胸にぽっかり穴が空いてしまったような・・・。

さっきまでの幸せ気分が嘘みたいにもう消えてる。








お店に鍵をかけて私たちは真っ暗な外へ出た。

今日は月が出ていない・・・闇一色。




「碧衣、さっきから静かですね?」


「・・・」



私は・・・言いたい言葉があって、でも言えなくて、我慢してたらもう何も話せなくなってしまった。



「碧衣?」と月野が不思議そうな顔で立ち止まる。




「・・・月野はそのまま私の前からも消えてしまうの?」声を振り絞って私は言った。



苦しい・・・心が。悲鳴をあげてる。



出てくる・・・悪魔が・・・抑え込んでた悪魔が・・・




「え?」


「もう私必要ないんでしょ?」口調がきつくなってくる。


「何を言って・・・」


「今日の月野を見ていて、新しい生活を一人で生きて行こうとしてるように見えた」


「そんなこと・・・」


「月野が遠くに感じた」と私は冷めた目で月野を見つめる。



感情があふれて抑えがきかなくなってる。



「私のことなんて忘れてたでしょ?」


「碧衣、どうしたんですか?僕は碧衣の事忘れてなんて・・・」



ダメだ、悪魔に・・・負ける・・・!





「許さない」


「え?」


「私のこと忘れたら許さない!」


「わっ」



私は無意識に月野の黒いネクタイを私の方へ引っ張っていた。

そして・・・



「碧衣、何を・・・あっ!・・・・痛っ・・」





私の烙印消えてしまったの。

月野との仲良しの烙印。



だから今度は私がつけてあげる。



私のこと忘れないように。強く、刻み込むように。





月野の首元から顔をすっと離す。




「これで私のこと忘れないね」


私はにっこり笑い、そして月野の元から去って行った。





茫然と立ち尽くす月野を置いて・・・










そして次の日・・・。



「はぁ・・・・」

今日はもう何度溜息を付いたかわからない。


昨日私は月野にとんでもないことをしてしまった・・・。

友情を終わらせるようなことを自ら・・・。



お屋敷の裏庭の手入れをしながら今日は朝からずっとぼんやりしていた。



あんなことするはずじゃなかった。

月野が吹っ切るまで動くつもりなんてなかったのに。


だって脈がないって分かってたから・・・。



私焦ったんだな・・・。

月野の言葉を聞いて。

冷静になって考えるときっとそんなつもりで言ったわけじゃなかったと思う。だけどあのときの私には客観的に考える余裕がなかった。



そしてやっぱり私の中にも悪魔がいた・・・そのことにもショックを受けてる。

我を忘れたらあんな行動に出てしまうんだ。



「碧衣っち元気ないね」

とキャロが隣で草抜きをしてる。

頭にはメイド帽(麦わら帽子に白いフリルが付いた超ラブリーな帽子)をかぶっている。


かわいい・・・・

キャロを見て少しだけでもこのボロボロの心を癒させてもらおう。



「何か悩み事?」


「・・・」


ほんとは打ち明けたい・・・相談に乗ってもらいたい。

でも・・・



私が陰で月野と会ってることなんて知ったらキャロはどう思うだろう?

ショックで泣いてしまうんじゃないか?


いくら優しいキャロでも私を憎むんじゃ?



けどもう私も月野とは会えない立場になってしまったし・・・

もう言っても何も問題ないかも・・・



「キャロ、私実は・・・」


「?」



「月野と会ってる」


「!!」

キャロが目を見開く。



やっぱり・・・傷つけた・・よね?



途端にキャロの目から大粒の涙が・・・



ああこれでキャロとの友情もなくしちゃうの私?




「ツキノン、無事なんだね?」と私の腕を掴んで言う。


「え?・・うん」


「・・・よかった・・よかったよー」

泣きながら笑ってる・・・



えっ・・・もしかして嬉し涙だったの?



「ごめん、ずっと黙ってて。口止めされてたし、正直私、言いたくなかった」


「?」


「月野のこと独占したかった・・・」


恥ずかしいこんな気持ち・・・カッコ悪いよ。自分勝手で子供みたい。



キャロはふわっと優しい表情になって


「碧衣っち・・・やっぱりツキノンのこと好きだったんだね」


「えっ・・・」


気付いてたの?


「ほんとのこと言ってくれてありがとう!ツキノンが無事なことも分かったし、碧衣っちの気持ちも知れて嬉しい!」

と満面の笑顔。



キャロ・・・



私は思わずキャロを強く抱きしめていた。



「・・・碧衣っち?」



月野がこの子を好きになった気持ちが今なら分かる。


キャロには敵わないよ。



優しくてまっすぐで私の心も浄化してくれそうな気になる。



「月野、元気だから心配しないで。」と私はキャロをを離して言った。


「うん」


「去ってしまった理由だけは言えないんだ。だからそこは詮索しないでもらえると助かるんだけど・・?」


「分かった!ツキノンが元気でいることが分かって、もう十分だから。ただ、もうやっぱり戻っては来てくれないのかな?」

と寂しそうな顔をする。


「分からない・・・けどいつか戻りたいって本人も思ってるはずだから」


「そっか・・・分かった。じゃあ信じて待つよ」


「うん、そうしてあげて」



言えてよかった・・・私完全には悪魔になってなかった。

やっぱりどこかで罪悪感を強く持っていたみたいで、今ほっとしてる。



「碧衣っちもしかしてツキノンといい感じになってるとか?」とちょっとわくわくしたような顔で聞いてくる。


「ううん、その逆・・・」


「え?」


「私、とんでもないことしちゃったー!」

とキャロに泣きつく。


「え?え?」



こうなったら打ち明けよう!




「経緯は話せないけど、私月野に・・・」


と私は月野にしてしまったことを話した。



「ツキノンに噛みついたぁ?!」


「しーーー!キャロ声が大きい」


「ご、ごめん・・びっくりしちゃって」


「そうだよね、でも私こういう一面も持ってるんだー・・」


「Sの一面?」


「うーんまぁそんなとこ」


「で、ツキノンは?」


「茫然としてて、そんな月野を置いて私立ち去っちゃった」


「そっかぁ・・・」


「もう終わりかな?」


「それはわからないよ。だってまだツキノンの気持ち聞いてないでしょ?」


「うん。けど・・・」


「自分の頭の中だけで決めつけちゃダメだよ。ちゃんと本人に聞かないとダメ!」


なんだかやけに力説してる。

もしかして経験者は語るというやつなのだろうか?


「そうだよね・・・うん、今すぐは会いにくいけど、また勇気出して会って話してみるよ」


「うん!仲直りできるよう応援してるね!」とにっこり笑う。


「ありがとう」


キャロに話して少しすっきりした。


確かに決めつけちゃダメだよね。

もしかしたらまだ終わってないかもしれないし。

うん、ちゃんと会って話してみよう。








それから1週間後。


決断はしたものの私はまだ月野と会うことができていない。


勇気が出ないんだ・・・。

どんな顔をして会えばいいかもわからないし・・・。



今日は家庭教師の日だからいつものように

差し入れに向かうと・・・



「碧衣さーん、今日は仕事終わり空いてますか?空いてたらご飯行きましょう!」



もう何度目だろう、悠真のこのお誘い・・・。


すっぱりあきらめてくれたと思っていたのに違ったみたいで。


何度も何度もアタックしてくる。


毎回冷たく断ってるんだけど、今日はそんな気力も出なくてつい・・・



「いいよ」

と言ってしまった。


「ま、マジっすか!やったー」



はぁ・・・もうどうでもいい。

何もかも。


せっかくキャロに励ましてもらったのに、私ダメだな。

ヘタレになってる。




魂が抜けたような顔で悠真とお屋敷の裏門から出ると・・・


そこには人影が・・・



「碧衣?」


えっ・・・その声は・・・


街灯に姿が照らされて・・・



「月野・・・?!」


ドクン・・・



月野だ・・・どうしてここへ?

居るはずのない人が目の前にイキナリ現われて

頭が混乱する。




「誰?知り合い?」と隣にいる悠真が聞いてくる。


月野は悠真の方を見て少し驚いた顔をした。



「・・・ひどいじゃないですか。僕のメールや電話は無視してその男性とこれからデートですか?」


えっ!!



「ち、違うよ!!」


あっでもこれからご飯は食べに行くことになってるけど・・・。


こんなときに限って何で・・・。



「デートっすよ~。これからディナーっす」


ゆ、悠真、余計なことを!!



「そうですか・・・じゃあ邪魔してはなんですし僕はここで」

と冷たく言いくるっと背中を向ける。


え??

嘘でしょ・・・。


ここに来たらキャロたちに見つかるかもしれないのに、そんなリスクまで冒して来てくれたのに・・・



「ごめん、悠真、また今度埋め合わせするから!」


「へ?・・あっ!碧衣さん!」




そうして私は無我夢中で月野を追いかけた。





「月野待って!!」


「・・・・」


前を足早に歩いてた月野がぴたっと止まる。


「はぁ・・はぁ・・・」やっと追いついた。意外に足速いんだな。



「さっきのどなたですか?」

とこっちに向き直って言う。


「ああ、新しい家庭教師。響さんの友達なんだ。」


「ふーん」


「あっ!でも月野が戻ってくるまでの約束で来てもらってるんだよ!」


「そうですか」


あれ?なんか怒ってる?

月野の代わりに他の人を家庭教師に付けちゃったから?

いや、月野はそんなことで目くじらを立てる奴ではないはず・・・。



「仲いいんですね」


「え?」


「だって今からご飯って」


「ち、違うよ!今日が初めてだし、いつもは断ってる!ただ今日は断る気力がなくて」


私、何一生懸命弁解してるんだろ・・・


でも誤解されたくないし。



「へ~碧衣ってモテるんですね」


「・・・月野、さっきから何を怒ってるの?」


オーラがピリピリしてる・・・。



「・・・僕にこんなもの付けといて他の男とよろしくやってる碧衣にムカついたんですよ」

と自分の首元のあの烙印を指さして言う。


あっ・・・


かぁぁぁぁぁ・・・


私が付けた痕・・・くっきり残ってる。


今思えば私、月野に対してなんて大胆なことを!




「勘違いするところでした。これはただの仕返しですよね?」


「え?」



ただの仕返し・・・?


このままそういうことにしたら・・・また友達に戻れる?



「・・・・」


「仕返し・・ではないんですか?」


心が迷う、でも・・・



もう嘘付きたくない。



友達に戻ってまたほとんど会えない毎日を過ごすのももう嫌だ。

一か百か、どっちかはっきりさせたい。

例え、終わりだとしても。




「違う・・・」


「では何で?」


一つ深呼吸をして・・・顔を上げ、月野の目をまっすぐ見る。



「月野を私のものにしたかったから」



「!」




終わった・・・これで


もう・・・これで会うこともなくなる・・・





まずい・・・泣きそうだ  

月野の顔を見ていると・・・。


自分で選んだ選択なんだから最後まで毅然としていたいのに。



私もう完全に好きになってた。強い月野も、弱い月野も、狂気の月野でさえ、愛しく思えた。

全部自分のものにしたいって思った。



こんなに好きになった途端に終わりが来るなんて・・・


そんなのつら過ぎるよ・・・耐えられない。



ポロポロポロ・・・・

あっ涙が・・・


ダメだ、抑えられない。



こんな顔見られたくなくて私はうつむいた。





「・・・碧衣・・・この痕、痛いんです。おまじないかけてくれませんか?」


「え?」涙で濡れた顔を上げる。


おまじないって・・・あのとき月野が私にかけてくれた?



「お願いします」


「・・・うん」


少し恥ずかしいけど・・・月野が望むなら・・・




私は月野に近寄って、首元の烙印の上にそっとキスをする。


その瞬間、月野が私をぎゅっと抱きしめた。


いつもより強く。



え・・・?月野・・・?





「・・・僕は・・・まだ完全には吹っ切れていません」


「・・・うん」


「だけど・・・」


「?」


「心の中にいつの間にかあなたがいてる」



「!!」



「心が必要としてる、あなたを。今はそれだけではダメでしょうか?」


それって・・・


「・・・私から離れていかないの・・・?」



さっきとは違う感情で涙がポロポロと流れ出す。



「離れません・・・いえ離しません」


とさらに強く抱きしめる。



ポロポロ涙が止まらない・・・





「月野・・・好き・・・」


「はい・・・」



好き・・・



その言葉はまだあなたからは聞けない。


だけどいつか・・・

いつかあなたの口から聞ける日が来ることを期待してもいい・・・?



そうなるように私も頑張るから。




だから私を離さないで





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