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ラブプール

「なーなー今度の土曜、プールでも行かね?室内温水プール♪」とまた例のごとく響の部屋に来ている悠真くんが提案してきた。



「・・・おまえまさか不純な動機じゃねーだろうな?」


「まさかまさか、碧衣さんの水着姿が見たいなんてこれっぽっちも!」


「やっぱりな・・・」と響が呆れた顔で溜息をつく。


「いや~だってそりゃあ男ですから♪響だってキャロちゃんの水着姿見たいっしょ?」


「んなこと思ってねーよ!」

と響は顔が赤くなってる。


「そんな動揺してバレバレだし~。ってなわけで碧衣さん誘うからね~」



ってかそもそも碧衣っち、プールとか来てくれるのかなぁ??

なんか嫌がりそうなイメージあるけど・・・。




それが意外にも次の家庭教師の日に、碧衣っちを響の部屋に呼んで聞いて見みると・・・



「いいけど。泳ぐのはけっこう好きだし、キャロたちもいるなら」

とOKの返事が返ってきた。


「やったー!」


そんなあからさまに喜んでバレバレだよー悠真くん。



碧衣っちは悠真くんの気持ちに気付いているんだろうか?


悠真くんに対しては、いつも無反応というか表情もあまり出ないからそこんとこ読めないんだよね~。



あからさま過ぎて逆に冗談だと思ってるかもしれないな。

あたしだったらからかわれてるだけって思っちゃいそう。



「楽しみだなぁ♪」と見るからに浮かれている悠真くん。



まぁでも悠真くんじゃないけど、あたしもけっこう楽しみかも。


このメンバーで遊ぶの初めてだし、響とプールに行くのも初めてだし。




一体どんな日になるんだろう?





そして土曜日・・・。



「おまたせ~!」とあたしと碧衣っちは響と悠真くんの前に水着姿で登場した。


二人とも息を飲んでそのまま黙ってこっちを見てる。


そんなじっと見られたらすごく恥ずかしいんだけど・・・



碧衣っちは全身爽やかな白で決めてて、下は超ミニのショーパンで上はなんとセクシーなビキニ!


碧衣っちはスレンダーで足は細くて長いし、ウエストはキュッと締まっててほんとモデルさんみたいな綺麗なプロポーション。


あたしはピンクの生地に淡い黄色の小花もようのワンピース水着。ちょっと子供っぽかったかも。碧衣っちと比べると特に・・・。

でもセクシーな水着なんて似合わないしなぁ。



「二人ともなんてまぶしいんだぁ!めちゃくちゃ可愛い!なっ響」


「あ、うん」


「ったくもっと素直に反応しろよー」

と二人であたしたちのことあーだこうだ言ってる。



「もう、恥ずかしいからやめてよ~それより早く入ろ!」

と話し掛けると、悠真くんはあたしをじっと見た後、響に何か耳打ちをした。


すると響はかぁぁぁと真っ赤になって


「おまえなぁ!殺す!!」

と悠真くんを追い掛け回した。



一体響に何を言ったのやら・・・

きっと刺激的な発言をしたに違いないだろうけど。



騒いでる二人はほっといて先に碧衣っちとプールに入った。

温水プールだから少し温かくて安心する。

7月に入ったとは言えまだ真夏みたいに気温高くないしなぁ。



この室内には、色々な種類のプールがある。


流れるプールとか、滑り台のあるプールとか。



「碧衣っち泳ぎ得意なの?」


「うん、昔から泳ぎは得意なんだ。別に水泳部に入ってたとかじゃないんだけどね。両親の影響で小さいころからよくプールや海に連れてってもらってたから」


「へ~」


意外な特技。

まぁでも碧衣っちはスポーツ全般得意そうに見えるけど。



ほんとに綺麗なフォームでスイスイと泳ぐ。まるでマーメイドみたい・・・。



そこへパシャパシャと悠真くんがやってきた。


「はぁやっと響から逃れた~」


「あれ?その響は?」


「流れるプールに行くってさ、キャロちゃん早く行ってあげないと、響逆ナンされちゃうよ~?」


えっ!!


それは嫌だ~。

ってか普通逆じゃない??

あたしが響のナンパを心配しなくちゃいけないなんて悲しい~。



「碧衣っち、ちょっと行ってきていい?」


「うん、私にはおかまいなくラブラブして来て」


えっ


かぁぁぁぁ・・・



「う、うん」



そうしてあたしは響の元へと向かった。






流れるプールに行くと・・・


あっ響発見!


浮き輪につかまってプカプカ流れに乗ってる。



「響!」

あたしはプールの流れに逆らうように響の元へ行く。


うう、流れるプールの中ではなかなかうまく響の元へたどり着けない。


響があたしに気付いて、向こうからやって来てくれた。



そしてカポッと浮き輪をあたしにかぶせる。



「捕まえた」



あっ・・・



「捕まっちゃった」



二人で笑い合う。




ゆらゆらゆら・・・


足をつかずに流れに身をゆだねる。


響は隣であたしの手をつないで歩いてる。



「なんか楽しい・・・浮いてるだけだけど楽しい」


「うん、おまえ楽しそう。なんか寝そうな目してるし」


確かになんか気持ちよくって・・・




「その水着おまえによく似合ってるな・・・」


「え?」


「さっき・・・ちゃんと言えなかったから・・」と照れくさそうに言う。


あはは、響ってば・・・。



「ありがとう」とにっこり笑って言った。




「そういえば、さっき悠真くんに何言われてたの?イキナリ響怒ってたでしょ?」


「えっ・・・ああ、あれか、あれは・・・」と口ごもる。


「?」


「おまえの・・・」


「?」


「い、言えるかよ!・・・たいしたことじゃねーし気にすんな!」


あっ逃げた。



そんな風に言われたら余計に気になっちゃうなぁ。



「次滑り台んとこ行かね?」


「うん!行く!」




そして手を繋いだまま滑り台プールへと向かった。





---------------------------------------



「あの二人はほんと仲いいね」


私は滑り台で二人仲良く楽しげに滑ってるキャロと響さんを見ながらつぶやいた。


ほんと微笑ましい。



「おれたちもしません?」


「しないよ、カップルじゃないし」


私がそう言うとガーンって顔をする。


悠真はすぐ顔に出る。でもわざとじゃなさそうだから本心なんだろう。

どこまで本気か分からないけど、私に気があるのは、嫌でも分かる。



だから私は余計に冷たい態度を取ってる。



あきらめてもらわないと困るから。



「碧衣さんってほんとクールですよね・・・好きな人の前でもそうなんですか?」と苦笑いをしながら言ってくる。



「・・・それは、どうだろうね」


「・・・やっぱりいるんですね、好きな人」



あっもしかしてかまかけられた?



「・・・まぁ気になっている人はいる」


ここで隠してもしょうがないし、むしろ言っておいた方がいいかもしれない。



この子はいい子だ。いつも軽い調子でふざけてるように見えても、家庭教師の仕事は一生懸命やってるし、私に対する姿勢も紳士だし。


だからこそ、早く私なんてやめて別の人を探して欲しい。

時間を無駄にさせたくない。



だって今の私に他の誰かが入り込む隙は一ミリもないんだから。



「あきらめませんよ、おれ」と急に真面目な口調で言う。


「え?」


「だって、その人とまだ付き合ってるわけじゃないんでしょ?」


「それはそうだけど・・・」


「じゃあおれにもチャンスはあるってことだ」



どんだけ前向きなんだよ・・・。



「君なら他にもっといるだろう?何で私みたいな男女を・・・」


「碧衣さんは男女なんかじゃないです。」


と私をまっすぐ真剣な目で見る。



困るよ、そんな目で見られたら。

さすがの私も動揺してしまう。



だけど・・・ダメなんだ。


今もふと思い浮かぶのは月野の顔。

ここに今居てくれたら・・・ってそんなことばかり考えてしまうんだ。

まるで月野中毒にでもなってるみたいに。



「君が今私に言ったことを、私も気になっている人に対して思ってる」


「え?」


「決してあきらめないと」


「・・・・」


「分かってくれるだろ?私の思いは強くて揺るがない」


「・・・・」悠磨は何も言わずこっちを見つめてる。


「ごめんな」



しばらく間が空き・・・



「・・・ちょっとおれ・・・滝に打たれてきます!!」

とイキナリ悠真はダッシュして滝のあるプールへ走って行った・・。



な・・・なんだあれは・・・。


私はあっけにとられていた。


とりあえずこれですっぱりあきらめてくれたらいいんだけど・・・。



あんな素直でいい子と付き合ったら、きっと楽しいと思う。

だけど、私はどうやら、ミステリアスで危なっかしい奴に惹かれるみたいだ。そして自分と似ている人に。




私はまたキャロたちの方に、目を向けた。



今度はプールの水の掛け合いをしてる。

いつ見ても二人は幸せそうでキラキラしてる。



羨ましい・・・。


私だって月野とあんなこと・・・


いやいや、私たちにはあんなの似合わないよね。


キラキラまぶしいのは似合わない。


あの二人がまぶしいくらいに輝く太陽の光なら、私たちはひっそりと微かな光を放つ月の光。


まるで正反対だ・・・。




ってかそれ以前に別に恋人同士じゃないし・・・


寂しい想像をしてしまったな。





けどいつか・・・



それぐらいは密かに願ってもいいよね?





---------------------------------------



「えっフラれた?」と響が驚いた声で言う。


プールに行った後あたしたちはレストランに入って夜ご飯を食べていた。

碧衣っちは夜は用事があるとかで先に帰ったんだよね。


悠真くんの意外な発言にあたしたちは今驚き中。


「うん・・・あーやっぱダメみたい。隙がないんだよなぁ、全く。」

とうなだれて嘆いてる。



「それってさ、今は、だろ?」


「え?」


「そんなのおまえが作ればいいじゃん」


「・・・」



響が珍しく背中押してる??



「できるかもしんねーじゃん。あきらめるには早過ぎじゃね?まぁその程度の気持ちしかねーんだったら別にもうやめたらいいと思うけどな」


「・・・・」


悠真くんは珍しく黙り込んで、何か考えてる。



「おまえの恋愛は追いかけることが楽しいんじゃなかったっけ?」


「た、確かにそうだ。おれ追いかけるの好き」


「じゃあもうちょっと楽しめば?もったいなくね~?」



「・・・うん・・・うん!そうだよな、せっかく好きになれたのに、楽しまないと損だよな」

とだんだんいつもの明るい表情になってくる。



響すごいなぁ。悠真くんを立ち上がらせた。

さすが親友。

悠真くんのことよく分かってる励まし方だった。



「先のことはわからないよ」

と私もつられて背中を押してしまった。


でも本当にそう思う。


未来は予想通りにはいかなくて、思いもよらない方に突然変わってしまったりするから。



「ありがとう、二人とも」

とあまり見たことのないまっすぐな目であたしたちを見つめて言った。



「さ、悠真の悩みも解決したし、食おうぜ。オレ今日は泳ぎ過ぎてけっこう疲れたし」


「確かに今日はいっぱい遊んだね~」とあたしは笑って言う。


「二人ともはしゃいでたもんね~?羨ましい限りだよ~」とにやにや笑いながらこっちを見る。


「んだよ、気持ちわりー顔でこっち見んな」


「はぁ~おれだっていつかプールでイチャラブしてーな~」

とうっとりするような危ない表情になってる。


今絶対妄想してるな、この顔は。



「キャロ、妄想野郎はほっといて早く食おうぜ」


「あはは、うん」






そして悠真くんと別れて、響と二人で歩く帰り道。



みんなに幸せな恋愛してほしいけど、きっとそれは難しいんだろうな。


だけどたとえ傷ついても、その果てにまた幸せを掴み取ってほしい。



恋愛は一つじゃないから。



あたしたちの未来はこの夜空みたいに広くて、このたくさんの星みたいに輝く可能性を秘めてる。



「今日はよく星が見えるな」


「うん」


「でも月は出てないな」


「・・・・」



月の見えない夜空を見上げると少し寂しくなる。


きっと誰かを思い出すからだろう。


雲の中へと消えてしまった誰かを・・・。




「キャロ?」


「あっごめん、ついボーっとしちゃって」


響がふと立ち止まり、あたしも止まる。



「・・・おまえの気持ちは分かってるよ」とまっすぐな目であたしを見つめて言う。



「え?」



「けど、オレと一緒にいるときに、他の男のこと考えられると、なんかムカつく」と響はちょっと怒ってる。



「響・・・ごめんね」


そうだよね、あたし最近このことばかり考えてしまってる。


よっぽどショックだったんだろなぁ・・・。

なんせ理由もわからないから余計に心に引っ掛かってしまってて。



「おまえ・・・もしかしてあいつのこと好きなのか?」


「え!!違うよ!そういうのじゃない」


あたし、響にそんな風に思わせていたんだ。

不安にさせてたんだ。



「ふーん」となんだか納得してない様子。



え?信じてくれない??


そ、そんなぁ・・・。


響のことしか見てないし、こんなに大好きなのに・・・。



「じゃあオレを安心させて?」


「?」


「オレにキスして」


えっ!!


そういえばあたしからしたこと今までない・・・

だって恥ずかしくて・・・。



「できねーの?」とちょっと悲しげな顔をする。



うっ・・・そんな顔されたら・・・


するしかないじゃん!



「かがんでくれる?」


ドキドキドキ・・・


「うん」



目を閉じた響の顔にあたしの顔を近づける。



チュっと短いキスをした。



「そんなんじゃ足りねー」


「え?!」



そして、あたしの耳元で、


「今夜おまえの部屋行くからな」

とつぶやいた。



かぁぁぁぁ・・・




こんなドキドキしてるあたしを感じてもらったら

今度こそ安心してくれるかな・・・なんて。




今夜は眠れない夜になりそうだな・・・

色んな意味で熱くて










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