クールビューティーな執事
コンコン・・・ガチャ
「お邪魔しまーす」
「あっ来た来た!」
「キャロさんさっそく差し入れありがとう」
3人のティータイムついに復活だ~~~☆
4月に入り、ツキノンが家庭教師復帰の日がやってきた。
嬉しい!また3人で和やかに話ができるなんて。
記念すべきこの日にあたしははりきって・・・
「実は今日クッキー焼いたの」
と大きめのお皿に乗せたクローバの形をしたキツネ色のクッキーを二人の前に置いた。
「マジ!!」と鳴ちゃんが目を輝かせる。
「へー!キャロさんドンくさそうなのに料理やお菓子作りはまともにできるんですね」
ひどい言い様だなぁ。
相変わらず毒舌なんだからぁ!でもそれもなんか今は嬉しい。
ほんとにツキノンが帰ってきたんだって実感できて。
「そんなこと言う人にはあげないよ~!」
「あー嘘です!いただきまーす」とツキノンはクッキーを素早く口に入れた。
「どうかな?」
「・・・サクサクしててすごくおいしいです。びっくりしました」
「えーおれもおれも!」
と鳴ちゃんが身を乗り出す。
あはは、よかった!喜んでもらえて。
久しぶりに3人で少し談話した後、あたしは勉強頑張ってと言い残してドアから出た。
すると後に続いてツキノンも出てきた。
「ちょっとそちらへ」
といつも二人で話すときに行く廊下の突き当たりへとあたしを促す。
「ツキノン?」
「実はここに来る前に響さんに会いまして、ボロクソに怒られました」
「あっ・・・ご、ごめんね~ツキノン」
そういえば文句だけは言うって響言ってたもんね。
「キャロさんが謝る必要は全くないですよ。悪いのは僕ですから。傷見せてもらっていいですか?」
「え!う、うん」
とあたしは首元のブラウスの襟を少しめくる。
「良かった。もうほとんど消えてる」
「うん。だから気にしなくていいよ」
「・・・」
ツキノンがまだあたしの傷の部分を見てる。
「どうしたの?」
「・・あっ・・・いえ何も。それじゃ」と身を翻し去って行く。
「?」
どうしたんだろ。なんか様子が変だったけど。
よっぽど気にしてるのかな。
それにしてもこの4月から響は大学二回生になり、鳴ちゃんは高校3年生になって、みんなそれぞれ新しい毎日がスタートしたんだよね。
4月は新しい始まりの季節。
あたしもメイドになって二年目が始まった。
去年とはずいぶん環境が変わったけど、初心を忘れず気を引き締めていかなくちゃね!
それから3日後の金曜日。
そうそう実は3月いっぱいで可憐さん辞めてしまったんだ。家庭の事情だそうで。
もう随分前から毎日夕方ぐらいには帰っていたし色々何か抱えてたのかもしれない。最後の日はちゃんとあたしたちの前で挨拶をしてくれたんだ。『今までお世話になりました』って。
寂しいけど家庭の事情ならしかたない。
それで急きょ旦那様が面接をして新しいメイドを決めたみたいで、その人が今日から来ることになってる。
鳴ちゃん専属の新しいメイドさん、次は一体どんな人だろう??
「キャロ、楽しみだね♪」と、こういうことに敏感な瑠々ちゃんが言った。
ツキノンが初めて来た日と同じようにまた二人で玄関の前で待ってるんだよね。
あたしも楽しみ!わくわくする~!
そして期待を膨らませたあたしたちの前に現われたのは・・・
長身でモデル体型、真っ白な肌にミルクティカラーのショーットカットスタイル、一重の目にはスッとアイラインが綺麗に入っていて大人っぽい。
一言で表すならまさにクールビューティって感じ。
オーラにしっかりしててできる女って感じが漂ってる。
あたしとはまさに正反対の人かも!?
「神崎碧衣です。よろしくお願いします」
と表情を変えずにさらっと言う。
「春風キャロです。よろしくお願いします」
「陽山瑠々です。よろしくね」
とあたしたちも挨拶をする。
それにしても・・・
碧衣さんのそのカッコは・・?
「あら、二人ともお手伝いに来てくれたの。それじゃ碧衣さんにお屋敷の案内よろしく頼むわね」
と後ろから入ってきた凜さんが言った。
「あっ凜さん碧衣さんの着替えは?」
あたしはさっきから疑問に思ってたことを聞いた。
「ああ、碧衣さん、どうしても男性用のカッコがいいってことなので、それを着て働いてもらうことにしたから。」
そうなんです、驚くことに碧衣さん、メイド服ではなく執事服着てるの!
上は白のボタンシャツにグレーのベストを着てその上に丈の短い黒のジャケット。下は黒の細身のパンツ。
唯一首のところに黒の細い紐タイプのリボンを付けててそこだけが唯一女の子らしい部分。
けど特に違和感がなく、むしろすっごく似合っていてカッコいいんだよね。完璧に着こなしてるとうか・・・。
長身だから余計似合うんだろうな。170㎝近くはあると思う。
あたし女子高出身だからそう思っちゃうんだろうけど、女子にモテそうって思う。
こんな人が女子高にいたら王子様的存在になっちゃうかも!
「じゃ、キャロ後はまかせた!じゃ~ね~」
「へ??」
あー!!また瑠々ちゃん逃げた~~~!!
もういっつもあたしにばっかり押し付けるんだから~!!
けど嘆いてばかりもいられない。
気を取り直してと・・・
「じゃあ碧衣さん行こっか」
「はい」
なんか碧衣さんってあまり表情に感情が出ないタイプなんだろうか。
さっきから同じ顔しか見てない。
なんていうか・・・無表情。
見た目だけじゃなく中身もクールなのかな?
それとも緊張してるだけ・・・?
あたしは屋敷内を一通り案内して、仕事も少し教えて、夕方になってから鳴ちゃんの部屋に向かった。
なんといっても碧衣さんは今日から鳴ちゃんの専属メイド(執事?)になるんだからこれが一番重要なところだ。
コンコン・・・ガチャ
「キャロ待ってたよ~今日は何持って・・・」
と振り返ってこっちを見た鳴ちゃんが急に目を丸くして黙る。
今日から新しい人来るって鳴ちゃん聞いてるはずなのにその驚きよう・・・。これは絶対忘れてたな。
「そっか、今日からだっけ」とぽんっと手を叩く。
やっぱり~!
「え?何ですか?」とツキノンだけまだ?な顔をしている。
「今日から鳴ちゃんの専属メイドになる人連れてきたんだよ」
「あーそういうことですか。あれ?でも格好が・・・」
とツキノンもやっぱり服装が気になったみたい。
「こっちの方がいいんだって」
「へ~女の子なのに珍しいね、でもよく似合ってる。カッコいいね」と鳴ちゃんが碧衣さんに褒め言葉を投げたんだけど・・・
「ありがとうございます」とまたまた一切表情を変えずに言った。
なんだかなぁ・・・まるで機械みたいだよ・・・。
「名前は神崎碧衣さん!仲良くしてあげてね」
「うん。おれはもう聞いてると思うけど、鳴でっす」
「僕は鳴くんの家庭教師の月野風人といいます。以後よろしく」
「よろしくお願いします」と碧衣さんは一礼した。
うーん硬い・・・でも初日だしこれが普通なのかな。
誰もが瑠々ちゃんや悠真くんみたいに最初からフレンドりーにできるわけじゃないもんね。
ってかあの二人は特殊なんだよ~。
談話が始まり、空気が少し和らいだ瞬間、
「定時ですので上がってもよろしいでしょうか?」と突然あたしに言ってきた。
意外な言葉に少しとまどう。
「えっ・・・あっうん。帰り道分かる?」
「はい。お屋敷の構図は全て頭に入っていますので、ではお疲れ様です」
と言って風のようにドアから出て言った・・。
めちゃくちゃクールな風・・・。
あたしたち3人はぽかーんとした表情でその方向を見ていた。
「なんかクールだね・・・」
「はい、春なのに冷たい風が吹きました・・・」
「・・・クールビューティーな執事・・・」
今日接しただけじゃ、クールできっちりしてるってことしか分からなかったな・・・。
まぁどういう人なのかはこれからおいおい知っていけばいいよね。
まだ始まったばかりなんだから!
「これからはあの方がお茶とか持ってきてくれるんですか?」
「えっ・・・あっそっか、そうなるのかな・・・。」
あたしがここに来ることはもう当たり前みたいになってて忘れてたけど、もともと可憐さんの代わりに来てたんだよね。
ってことは、もうこれからは碧衣さんがいるし、あたしはお役目ごめん??
えー嫌だなぁ・・・
せっかくツキノンが戻ってきて3人のお茶会が復活したっていうのに・・・。
そう感じてるのはあたしだけじゃないみたいで・・・。
「キャロ、これからも来てよ。別に仕事終わってからでもいいしさ」
「そうですよ。3人でお話するの僕好きなんですから」
じーーーーーん・・・
嬉しいなぁ。そんな風に言ってもらえて。
「うん!じゃあ仕事終わってからでもまたお邪魔させてもらうね!」
「よかったぁ、ねっ、ツキノン」
「はい」
と二人とも笑顔。
あたしも満面の笑顔で二人を見た☆
「響、昨日クールビューティー執事が入って来たよ」
今日は土曜日。だんだんおなじみになりつつあるんだけど、今日もあたしの部屋で響と過ごしている。
こうやって一週間の出来事をのんびり響に話すのがとても楽しくて習慣になってる。
「執事??」
「あっ違うの、女の子なんだけど執事なの」
響はポカンな顔をしてる。
あはは、そりゃそうだよね。あたし今意味不明なこと言ってるもん。
なので響にも分かるようきちんと碧衣さんのことを説明した。
「へ~変わってるな。執事のカッコの方がいいなんて」
「でしょ。でもそれがすっごく似合うんだよね~カッコいいの」
「ある意味濃い奴がまた入ってきたな」と響は苦笑する。
「そうとも言えるかも」とあたしも笑った。
「・・・・」
その後ふいに沈黙が訪れる。
部屋に二人でいるとよくこういう沈黙の時間が自然と訪れる。
あたしはこの沈黙がけっこう苦手。
気まずいからじゃなくて・・・
響がこっちをじっと見つめてる。
だんだんドキドキしてきてどうしていいか分からなくなる
響の方もまっすぐ見れなくなってしまって・・・
だから苦手。
「キャロ」
ふいに名前を呼ばれて少しびくっとなった。
「おいで」
どっきー!
そ、そんな風に優しく言われたら犬みたいにしっぽ振っていっちゃいそうになるよ・・・。
あたしはドキドキしながら響の隣に行く。
響はあたしの頭を優しくなでた後ぎゅっと抱きしめる。
ドキドキドキ・・・
どうしてだろう、もうこんな時間何度も過ごしているのに、全然慣れなくていつもドキドキが止まらない。
本当は早く慣れて少しでも余裕を持ちたいのに
全然ダメ・・・。
余裕なんて一つもない・・・
そんなあたしに・・・
「なー今度旅行いかね?GWにでも」
「えっ・・・」
響と旅行??
それって響とずっと一緒にいられて
すごく幸せな時間を過ごせる・・・
「行きたい!」
「うん、行こ」
「どこに行く?」とあたしが聞くと、
「温泉とかどう?」
え・・・
「混浴?!」
「ばっ・・誰も混浴なんて言ってねーし!!」
あっ・・・
は、恥ずかしいぃぃ・・・!
あたしってば何て大胆な聞き間違いを・・・
あたしは顔が真っ赤になってテンパってしまった。
けど響もかなり動揺してるみたい。
落ち着きを取り戻した響があたしの耳元で
「オレは混浴でもいいけど」と囁いた。
響と混浴・・・・
ヤバい今想像しちゃった!
かぁぁぁぁぁ・・・・
ダメだもう・・・響の方見れない
平常心を取り戻した頃に
「楽しみだな」と響があたしに笑いかけた。
「・・・うん」
楽しみ。だけどドキドキする。
響と初めての旅行。
どんな旅行になるんだろう。
あたしの今にも破裂しそうなこの心臓は大丈夫だろうか?




