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強行突破

「響ーおまたせ」

とあたしはさっき響に頼まれたコーヒー持ってきた。


響はソファに座ってなんだかボーっとしてる。


どうしたんだろ・・・なんか


「響?」


「え?・・・あーありがと」


元気がないように見えるんだけど・・・



ま、まさか!!


あたしは響のおでこに手をあてた。


「えっ何?」

とびっくりした顔でこっちを見る。


「もしかしてほんとに風邪引いたんじゃないかって思って!」


「いや引いてないって」とあたしの手を掴んで降ろす。


あれ?なんかそっけない・・。


あっそっか。今仕事中だから。

うんうん、それはいつも忘れちゃダメだよね。


「あっ響・・これありがとうね」とあたしは左手を響に見せる。

薬指にはめた指輪・・・。


「あ、サイズ合ってた?」


「うんぴったりだったよ。すごく嬉しかった」とにっこり笑って言った。


「そっか・・よかった」

そう言って優しく笑ったんだけど、いつもと違ってなんか力がない。



響どうしちゃったんだろう・・・。


なんか心配だなぁ・・・。


一昨日はあんなに元気だったのに。

今日は魂が抜けちゃったような顔しちゃって・・。



「響・・あたし彼女なんだからね」


「え?」


「何か悩みがあるなら頼ってくれていいから・・・っていうか頼ってほしい」とあたしが言うと響は驚いた顔をして、


「・・・ありがとう。けど別に何も悩んでないから心配すんな」


「そっか、それならいいけど・・」


何か腑に落ちない。

きっと何かある。

けどそれはあたしには言えないことなんだ。


それならあまり踏み込んではダメだよね。


「じゃあまたね」と言ってあたしは部屋を後にした。



一つ嫌な予感があたしの頭をよぎる。


また心閉じようとしてるんじゃ・・?

今日の響、その前兆のように見えた。



予感当たらなきゃいいけど・・・







あれから響は口数が少なくなり、よくどこか遠くを見る様な目をしていた。


響の心いまどこに行っちゃってるんだろう・・・。

あたしの元にないのは確かだ。


「響、今月いっぱいでツキノンいなくなるの、だから・・」

と話し掛けると

「いなくなる?!」と急に目を見開いてこっちを見た。


「えっ・・あ・・うん。辞めちゃうの」


「・・ああ、辞めるのか。」とまた冷静に戻る。


「?・・・それでお疲れさま会したいなぁと思ってて、響のカフェにまた行っていい?」


「え?いつも勝手に来んのになんで断り入れるわけ?」


「なんとなく・・・」


「いいよ、全然」


「うん。ありがと」


響、全然こっちを見ない。


あたしの予感はきっと当たってる。


また一人で殻に閉じこもり始めたんだ。



今度は何を悩んでいるんだろ・・。


もどかしい。こんなに近くにいるのに何もできないでただ黙って見ているだけなんて。


そして頼ってくれないことがすごく寂しい・・・。




今は時間が必要なのかな・・・。


そっとしとかなきゃダメ?



でもあたし・・・もう我慢できないかも。

今すぐ響の心こじ開けたい。少し強引でも。


あたしがいるってこと気付かせたい。




ぎゅっとソファの後ろから響を抱きしめた。



「キャロ?」


「・・・どうしていつも一人で閉じこもるの?今はあたしもいるのに」


「・・・・」


「言ってくれるまで離さないから」



しばらく沈黙が続き・・・



「・・・恐いんだ」つぶやくように口から出た言葉。


「何が?」


「また失ったらどうしようって」

あたしの腕を強く押さえる。


「もしおまえを失ったらオレは今度はもう生きていけない・・・」


そっか・・・響はそれを悩んでたんだ・・・過去と重ねて。



「・・・・響のばか」


「え?」


「恐いって思ってるの自分だけだと思ってる」


「・・・」


「あたしだって恐いよ!」


「キャロ・・・」


「響を失ったらあたしだって生きていけないよ!」


「!」


響は立ち上がってあたしを正面からぎゅっと抱きしめた。


何も言わずに強く・・・



「・・・失うかどうかなんてそんな未来のこと誰にもわからないでしょ」


「うん・・・」


「分からないこと恐がっても意味なくない?」


「・・・うん」


「それにもし失う未来が待ってるんだとしたら、余計に今を大事にしなきゃダメじゃん。今を目一杯幸せに生きなきゃ!」



「・・・キャロの言う通りだ・・オレ今を見失いかけてた。あるかどうかもわからない未来に勝手に不安を抱いて」


「うん・・・響、今を大事にしよ・・・あたしといる今を大事にしよ!」


「うん!」


ぎゅーーーーーっ



うっちょっと苦しい・・・

あはは、力入れ過ぎだって・・

気持ちはすごく伝わるけど。


「わっ」

ひょいとイキナリあたしを抱き上げる。


あたしは響の顔を見下ろす。



笑ってる・・・何一つ曇りのない顔で。

あたしも笑う。


響と同じ、幸せそうな笑顔で。







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