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二人きりの誕生日

「ジンベイザメ、おっきーねー」


「おまえ、小学生みたい。はしゃぎすぎだろ」


「もー小学生はないでしょうが」

と言い合いするあたしたちの前を小学生が「ジンベイザメだぁ」とはしゃぎながら通り過ぎていった。


「ほらな」と勝ち誇った顔であたしを見る。


ううう・・・言い返せないのがくやしい~。



それにしても水族館ってやっぱいいなぁ。

照明とか青くてまるで海の中にいるみたいな気分になれる。

幻想的というかつい色とりどりの魚たちに魅入ってしまう。


のんびり進んでいくとトンネルのようになってる場所があって、そこは床以外全部透明であたしたちの周りを回るように魚が泳いでいく。


「すごーい・・・」

本当に海の中にいて一緒にあたしも泳いでるみたいな気分になる。


「綺麗だな。水がキラキラしてる」


そういう響を見上げたら、目がキラキラしてて響の方こそ綺麗だなって思った。


「ん?」

あたしの視線に気づいてこっちを見る。


どきっ


あたしは急いで視線をそらす。



なんだか改めてこんなカッコイイ人があたしの彼氏だなんて恐れ多いなって思ってしまった。


響はどうしてあたしなんだろ・・・

まだ聞けてないんだよね。不思議でしょうがないよ。



水族館を出たらここからじゃ少し遠目になるけど本物の海があった。

浜辺もあって夏には海水浴場になる海だ。

今は冬だから人の姿が全然ない。


「寒いけどちょっと行ってみる?」


「うん!」


海辺の散歩なんて素敵。



ただ行ってみると思った以上に寒かった。なんせ風がすごくて・・。

体がガチガチ震え始めた。


「やっぱ冬の海はさみーな」


「う、うん」


「何おまえ震えてね?」


「だ、大丈夫ー」


「大丈夫じゃねーじゃん!」


ぎゅーーーーーっと響があたしを抱きしめる。


「こうしたらマシ?」


「・・・うん」


あったかい・・・体だけじゃなくて心も。



「響あたしのどこが好き?」


「またその質問かよ?」


「だって気になるよ、自分では見当もつかないから」


一瞬の沈黙・・・



「・・・一緒にいてオレがオレのままでいられるのはおまえだけだ」


「・・・」


「その存在全てが好きなんだよ」


「・・・」


「何か言えよ、照れるだろ」



「うう・・・」


「え?おまえ泣いてんの?」とあたしを少し離して顔を見る。


「だって・・嬉し過ぎて・・・」


ポロポロ涙がこぼれる。



あたしっていう存在が好きだなんて初めて言われた。

それって全部ってことでしょう?

あたしの欠点も含めて全部・・・


そんな風に言われたら嬉しくて涙が出る。

言葉にできないくらい嬉しくて代わりに涙となって出ていく。



「泣き止まないとキスするぞ」


「うう・・・じゃあ泣き止まない」


「!」


響また固まって真っ赤になってる。

あたしが意外な発言するとすぐ照れるみたい。



「・・・おまえこそオレのどこがいいの?」


「あたしはもう前に言ったよ?・・・全部って」


「・・・」


「俺様な響も、ワガママな響も、不器用な響も優しい響も全部・・・」



あ・・・



・・・キス・・・




あたしはゆっくり目を閉じた。







海辺の散歩ですっかり冷え切った体を温めるためにカフェに入って今お茶してる。


あたしは頼んだココアを一口飲んだ。

あ~暖かい~~~。

体に沁み渡る感じ・・・。


響はコーヒーを口にしてる。

その口元を見つめてるとふいにさっきのことを思い出してしまった。


さっきあたし・・・響と・・・キ・・ス


かぁぁぁぁぁ・・・


だ、ダメ今思い出してこんな動揺しちゃったら、響に変に思われるじゃん!!


平常心、平常心と何度も心で繰り返す。



思い出すとトロケてしまいそうになる。身も心も。



響は平気なのかな・・・?あの後いつもの冷静な響に戻ってたけど・・・

あまり喋らず手を繋いでしばらく散歩したんだよね。



「ックシュ・・・やば風邪引いたかも」

あははクシャミしてる。


「響が風邪なんて晴天の霹靂だね」


「おまえオレを超人と何か勘違いしてんだろ。オレだって普通に風邪くらい引くっつーの」


「へぇー」と疑いの目で響を見てやった。


「絶対引いてやる」

と拗ねた顔する。


あはは、自ら風邪引くって何だそれ~。


なんか響といると楽しいな。


だからずっと一緒にいたくなる。



「もう外真っ暗だね」とあたしは窓の外を見た。


「時間経つのはえーな」


「うん・・・」


このまま楽しい時間がもっと続けばいいのに・・。




その後そのカフェで夜ご飯も食べてしまってお屋敷に戻った。


寮の前に着き、あたしたちはその場に立ち止まる。


向かい合ったまま静寂が訪れる。



なんだかとても寂しい・・・

別れがたい気分・・・



今日すごく楽しかったからだろうな。

響も同じ気持ちだったら嬉しいんだけど。


あたしは響の目をじっと見つめた。

響もこっちを見てる。



「・・・遅くなったけど誕生日おめでとう」

とポケットから小さな白い箱を取り出してあたしの手に渡す。


「これプレゼント?」


「うん」


「ありがとう!」


「・・・サイズ合うかわかんねーけど・・・じゃあオレはここで」

と響はスタスタと去って行った。


サイズ?


一体何をくれたんだろ・・・?


開けてみると・・・小さなシルバーの・・・



「これ・・指輪・・・?」


バッと響の方を見たらもうだいぶ先を歩いててお屋敷に入っていくところだった。



「・・・・」



あはは、合ってる、ぴったりだよ・・・さすが響・・・


左手の薬指に光る指輪。



ポロポロポロとまた涙がこぼれる。




あたしこんなに幸せでいいのかな。





23歳の誕生日は一生忘れられない誕生日になった。



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