メイドの彼女
月火水木・・・もうこれで4日目。
今週は一度も響に会ってない。
この状態には覚えがある・・・
あのときと一緒だ。
あの夏の別荘に行く前の状態と。
どう考えても避けられてる。
また響、殻に閉じこもっちゃったみたい。
どうしよう・・・明日からお正月休みで実家に帰るのに・・。
シュンとしながら廊下を歩いてると・・・
「やぁやぁ。キャロちゃんまた僕に電波を送ったでしょ?」と突然前から声がした。顔を上げると・・・
「紫音さん!!」
どうしてかな。困ったときいつも目の前に現われてくれる。
相変わらず優しくて穏やかな雰囲気。安心するなぁ・・・。
「向こうから感じていたんだ。助けを呼んでる電波を」
「・・・送ってました。あたし」
「やっぱりね。どうしたの?また響でしょ?」と優しい笑顔を見せる。
「・・・紫音さーん」とあたしは今にも泣きそうな顔をする。
「よしよし、話してごらん?」とあたしの頭を優しく撫でた。
紫音さんは今日から会社がお正月休みで家にいたみたい。
それにしてもほんとグッドタイミング。
そして事情を打ち明けた。
「そういうことか。まさにすれ違いだね」
「はいぃぃ・・」
「けど今回はすぐ解決するよ」と意外なことを言う。
「え?でも会ってもくれないんですよ?」
「無理にでも会って、自分の気持ちを包み隠さず全て話せば、また元に戻れるさ」
あれれ?紫音さん的には何も心配していないみたい。
今回の件は自分が思ってるほど厄介ではないのかな。
「でも響は、自分の殻に入ってるとき無理矢理こじあけようとしたら、突き放すから・・・」
「あはは、トラウマになってるねー前回のが」
「・・・」
思い出すと今でも胸がちくちくするんだ。
おまえなんていらないって言われたときのことを。
「君が成長してるのと同じであいつだって成長してる。前と同じようにはならない、僕にはそう思えるけど?」
「そ、そうでしょうか」
「うん。でもまぁ全ては君次第だけどね。頑張れる?」
あたし・・・仲直りしたい・・。伝えたい言葉だってあるし・・
年が明けてしまう前にどうしても・・。
「あたし頑張ります!」
「うんうん。応援してるよ。・・・あっどうやら帰ってきたみたいだよ」
と何かに勘づいたような顔をする。
「え??」キョロキョロしたけど響の姿はない
「いや、まだ正門にいる。あいつ最近は正門から出入りしてるのか」
えー!すごい。遠く離れてても分かるんだ!紫音さんはやっぱ只者じゃないな。
ってか正門から出入りって・・・
それで最近ベランダから探しててもいなかったわけだ・・
やられた!
「あたし、響の所に行ってきます!」
「うん、検討を祈る」と紫音さんは警察官がやるような手を額に持って行く挙手の敬礼ポーズをした。
あたしも同じポーズを取ってうなづいた。
頑張る・・頑張る・・
今までにないくらい今回は頑張るんだから!
あたしは響の部屋の前で今か今かと待っていた。
そんな落ち着かないあたしの前にやっと響が現れた。
「響!」
少し驚いた表情をしてこっちを見る。
「・・・・」
響は何も言わない。やっぱり心閉ざしてる。
「どうしても聞いてほしいことがあるの」
その心少しでも開きたい。
「・・・何?」
ほんとだ。前とは違う。前の響だったら、オレは聞きたいことなんてないって突っぱねそうだもん。
「部屋に入ってもいい?」
「・・・どーぞ」と開けてくれて先に入るよううながしてくれた。
電気を点けてあたしは部屋の中央あたりに立つ。
響はベッドに座ってこっちを見る。
はぁ・・・緊張してきた・・。
でも頑張らないと・・
あたしが蒔いた種だから、あたしがちゃんとケリをつける!
一つ深呼吸をしてゆっくり話し始めた。
「あたしね・・・クリスマスイヴの日に一人で駅前のカフェにいて、そのときに響がバイトの女の子と駅に入るのを見かけたの」
「・・・それで?」
「ショックだった。登山って聞いてたのに、嘘だったんだって。それとバイトの女の子と過ごすんだって決めつけて一人で勝手に落ち込んで夜も全然眠れなかった・・・」
「・・・」
「クリスマスの日、心がボロボロになってて、苦しくてつい鳴ちゃんに甘えてしまったの・・・。今はなんて自分勝手なことしたんだろうって反省してる。嫌な思いさせてしまってほんとうにごめんなさい」
しばらく沈黙が訪れる。響は黙ったままこっちを見つめてる。
そしてようやく口を開いた。
「・・・おまえがわからなくなった。最近、もしかしたらオレのこと想ってくれてるんじゃないかって、そんな風に考えることが多くなって。
けど鳴と出掛けたの知って、オレじゃなかったのかって。わからなくなった」
響はまた傷ついたような悲しい顔をしてる。目を伏せてこっちを見ない。
あたしは響の元に歩いて行き隣に座った。
「・・・おまえ学習能力ゼロ?言っただろ、無防備なことするなって」
「わざとだもん」
「え?」
「響のこと好きだから響の前では無防備でいていいんだもん!」
「!」
あたしがそう言った瞬間、すごく驚いた顔をした。
「キャロが・・・オレのこと・・・?」
と信じられないといった顔で目をパチパチさせる。
「うん、好き・・・大好き!」
その瞬間、
かぁぁぁぁぁと響の顔が真っ赤になる。
そんな表情見るの久しぶり。
かわいいなぁ。
「・・・響は?」
「・・・好きだよ・・もうずっと前から」とつぶやくような声で言う。
「じゃあ両想いだね」
あたしがそう言うと響は真っ赤になったままうつむく。
「どうしたの?」
「・・・こういうときどういう顔すればいいかわかんねーんだよ」
きゅーん
あの響が真っ赤になってテンパってる・・
ヤバいキュン死にしそう。
「こっち向いてー」
「嫌だ」
「ねー」とあたしは響の顔をのぞき込む。
「やめろ、見んな!」
あはは。こんな響見たことない。
また新しい響を知ることができた。
そうしてしばらくお互い黙ったまま時間の流れを一緒に感じてた。
なんて穏やかな気分。
やっと伝えることができた。
それで響の気持ちを知ることも・・
安心感があたしを包み込む。
『好きだよ・・もうずっと前から・・・」
すごく嬉しい・・。ずっとあたしのこと想ってくれてたんだ。
想いが通じ合えたということは今この瞬間からあたしはただのメイドではなくなるのかな?
聞いてみようかな・・・
「あたしって響にとってこれからもただのメイド?」
「・・・今から違う」
「?」
「オレの・・・メイドの彼女」
かぁぁぁぁぁ・・・
今度はあたしが真っ赤になってしまった。
だって彼女って・・なんかリアルっていうか・・。
関係が変わるってこと妙に実感しちゃう。
「今さら何照れてんだよ。こっちもうつるし!」
「だってー・・・恥ずかしいんだもん」
「オレだって!」
気持ち伝えたのはいいけど、その後のこと何も考えてなかった。
これからしばらくテンパる日々が予想されるな・・・。
だけど・・・幸せ♡




