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24/50

鳴のトラウマ

もうだいぶ冬に近い秋の気候。

11月も半ばだもんね。

時折冷たい風も吹いてきて薄着してると風邪引いちゃいそう。


庭の景色も枯れ木が目立つようなってきてコスモスが咲いている。

紅葉の木も3本ぐらいあって今まさに紅葉の時を迎えている。

秋って郷愁を感じる季節って言うけどほんとそう。

なんかせつないような、寂しい気持ちになってしまうんだよね。

しゃがみ込んで花壇の手入れをしながらあたしはそんな気持ちになっていた。


体は寒いと暖かさを求めるのと同じで心もそうなのかも。

暖かい心に寄り添いたいような、包み込んでもらいたいようなそんな気分。



ぎゅーーー。


「!」

イキナリ後ろから強く抱きしめられた。

まるで誰かに心の声でも読まれたんじゃないかと疑ってしまうこのタイミング。


「キャロー・・」


その声は・・・


「鳴ちゃん?」とあたしは顔だけちょっと振り向く。オレンジに近い茶色の髪が見えた。あたしの背に顔をうずめてるから表情はわからないけど、何か様子がいつもと違うように思えた。


「鳴ちゃんどうしたの?」


「んー今ちょっと弱弱モードだからキャロのパワーちょうだい」


「うん、いいよ。持っていって」


「ありがとう。キャロは優しいね。」


「鳴ちゃん・・・何かあった?」


「・・・うん。また同じこと起きかけてるみたいで・・」


「同じこと?」


「・・うん・・前の高校と・・」


前の高校・・やっぱり鳴ちゃん転校してるんだ?


「話せそうなら聞くよ?」


「うん・・聞いてほしい。仕事終わったらおれの部屋に来てくれる?」


「分かった。絶対行くから」


「うん。ありがと・・・待ってるね」


と鳴ちゃんは少し微笑んで屋敷へと向かって行った。

いつもの鳴ちゃんじゃない。

この前の電車の中のときと同じで傷ついた子犬みたいな顔してる。

一体何があったんだろう・・。



でもやっと話す気になってくれたのは嬉しい。

やっぱり自分一人で抱え込むのはしんどいと思うし、もっと頼ってほしい。あたしはメイドだけど、鳴ちゃんの友達でもあるんだから




仕事が終わって鳴ちゃんの部屋に向かった。

鳴ちゃんのことが気になってあの後仕事に集中できなかったよ。


コンコン・・・ガチャ


ドアを開けると鳴ちゃんはベッドに寝転んでいて、あたしに気付くと起き上がって座る。


「キャロ、ここ座って」と隣をポンポンと叩く。

言われた通り隣に座った。


しばらく静寂が訪れる。

あたしは鳴ちゃんの言葉を待っていた。


「・・・おれ高校1年の秋に今の高校に転校したんだ・・」


「うん」


「理由・・話すと少し長くなるけど・・」


「いいよ。ゆっくりでいいから」


「・・うん、前の高校のときに彼女ができて・・、この前電車で会った子なんだけど」


「あの子が・・そうだったんだ」


「うん、それで普通に仲良くしてて、けどだんだんクラスに異変が起きてきて」鳴ちゃんの表情がさっと暗くなる。


「異変?」


「不登校になる女子が出てきたんだ・・。その原因が、おれの彼女のいじめだった」


「え??」


「後から聞いたんだけどその女子たちみんなおれに気があったらしい。おれ全然気づかなかったんだけど、影で彼女がその女子たちに陰湿ないじめをしてたみたい。脅すような電話や手紙を送りつけたり・・ほかにも色々・・」


「・・・」


「そんな風に見えなかっただろ?おれだってそれを他の人から聞いたとき全然信じられなかったし信じたくもなかった。」と悲しい顔でうつむく。


「そうだよね・・」


「彼女に問いただしたら白状して、けど反省するどころか、おれが悪いって責めてきて。」


「・・・」


「それから後日担任に呼び出されて、諸悪の根源はおまえだから、この学校から出て行ってくれって・・。たぶんだけど、彼女が何か根回ししたのかもしれない。なんせ頭が切れる子だったし、親がPTAの会長なんだ」


「そんなのひどい・・・」

一番悪いのはどう考えてもその彼女じゃん!


「おれもすごいムカついたし、何でおれだけが責任取らなくちゃいけないのって思ったけど、確かに彼女の裏の顔や行動に気付けなかったのはおれの非だし、承知することにしたんだ。」


「そうだったんだ・・・」

なんかでも理不尽だなぁ・・。納得いかないよ。


「転校した当初はけっこう引きずってて、でも一からまたやり直そうって、今度こそ平和な高校生活を送るぞって思ってたんだけど・・」


「けど・・?」


「今のクラスでまた女子がオレのことで揉め始めてるって聞いて、たぶんたいしたことじゃないと思うけど、前のことがフラッシュバックしちゃって精神的にやられてる感じ・・・」


そういうことだったんだ・・。

鳴ちゃんの中でトラウマになっちゃってるんだ。だから少しでも似たような状況になるとフラッシュバックして不安に駆り立てられてしまう。


「どうすればいいんだろ・・」


「そうだなぁ・・・」

とにかく女子たちが暴動起こさないで済むには・・・

鳴ちゃんから気をそらさせないと・・・気をそらす?


あっ!!


「鳴ちゃん!いいこと思いついた!」


「何なに??」


「女子から嫌われるといいんだよ!」


これは我ながら名案だと思った。


「・・え??」とハテナな顔でこっちを見る。


「ほら、そうすれば誰も鳴ちゃんを取り合ったりしなくなるよ!」


「そ、そっか!それは気付かなかった!キャロ天才。ちょっと希望が見えてきた。おれやってみる!」と暗い表情がいつもの明るい表情に変わってきた。



「うんうん。あたしも嫌われるにはどうしたらいいか情報集めてみるから」


「ありがとーー!」


ぎゅ~~~~っと

再び抱きしめられる。


うう苦しい~~。


けどいつもの鳴ちゃんに戻ってきたみたいでよかった!


とりあえず対策はできて鳴ちゃんも様子が落ち着いたみたいなのであたしは部屋を後にすることにした。

それにしてもモテるって必ずしもいいことばかりじゃないんだね。

まさかそんな理由で転校させられるなんて・・・前代未聞だよ。



「キャロ、この話人にしたの今日が初めてなんだ。聞いてくれてありがとう。また報告するね」といつものかわいい笑顔を見せてくれた。


「うん!鳴ちゃんにはあたしが付いてるから作戦頑張って!」


「うん!」



そして部屋を出た。


あたしは心が少し暖かくなっていた。

鳴ちゃんの心に少し寄り添うことができたからかな。



「・・・もう仕事の時間とっくに過ぎてんのに何でいんの?しかも鳴の部屋に」


ぎくっ  なんだか威圧感のある声が・・・


そ~っと声をした方向を見ると、不機嫌そうな顔をした響が立っていた。



今度はタイミング悪すぎ~~~!




どうやら今バイトから帰ってきたみたい。

響の部屋に向かうには鳴ちゃんの部屋の前を通らないといけないんだよね。



あ~~~後数分鳴ちゃんの部屋に居れば出くわすことなかったのに~!

なんて運が悪いんだろ・・・。


響はあたしがメイドの枠を越えた行動を響以外にするといつも不機嫌になるんだよね・・。

別にそんな悪いことしてるわけじゃないのにさ・・。

これだって友情ゆえの行動だもん!



しかし久しぶりの威圧オーラ。超不機嫌の俺様響になってしまっている。

恐いよーーー。


「えっと・・・ちょっと相談受けてて・・仕事中はよくないと思ったから終わってから聞きに来て・・問題ないでしょ?」


「・・・あるね。ちょっと来い」


と腕を掴まれて強引に響の部屋に連れて行かれた。


な、なんなの~~!

恐怖で心臓がどきどきしてきた。



部屋に入ると、


「で、どこで話聞いてた?」


「ベッドの上で」


正直に答えると、響は急に冷たい表情になって、またあたしの腕をつかんでベッドの方に引っ張っていく。


そしてあっという間にドサっとベッドの上に押し倒された。

そして上には響が・・・

あたしの顔の横にそれぞれ手をついてて顔がすぐ前にある。



ぎゃーーーー!



何なにこの状況は??!


パニックであたしは目を回していた。



「こんなことされたらどうすんの?」

と冷たい口調と目であたしを見据える。


「・・・鳴ちゃんはそんなこと・・」


「あいつも男だしわかんねーじゃん」


「・・・」



「どうすんだよ?」

と顔を近づけてくる。響の綺麗な透き通るような瞳があたしを見つめてる。


だ、だめ・・

クラクラしてきた・・。


こんな状態なのにあたし響にドキドキしてる・・

恐怖なのかもときめきなのか、もうわかんない。



「・・・」完全にあたしは硬直状態になっていた。



「・・・悪い、やり過ぎだな、オレ」と響は体勢を戻してベッドに座った。



はぁ~~~とあたしは息をなでおろす。

めちゃくちゃ緊張したぁ・・・。

体の力が抜けちゃってすぐには起き上がれなかった。


「でも怖かっただろ?」


「・・・うん」


「おまえのその無防備過ぎるところは良くないと思う。」


「・・そうだね。分かった、気を付ける」

確かにあたしは警戒心がなさ過ぎるかもしれない。



「・・まぁオレといるときは別にいいけど」

とつぶやくように言ったからよく聞き取れなかった。


「え??」と聞き返すと


「・・なんでもねーよ」とそっぽ向いた。


気になるなぁ。




それにしてもさっきみたいなことされると少しマズい。

だってあたしはもう以前のあたしとは違う。


響のこと好きだから、からかい目的や、さっきみたいな本気じゃない場合でもあーいうことされちゃうと抵抗せず受け入れてしまいそうな・・そんな感覚に陥ってしまう。


恋って怖い・・・。

逆らえなくなるし、むしろ・・・



「キャロ?」


「え、あ、ごめん。ボーっとしてて。えっとじゃあまた明日!」

と素早く部屋を出て行った。




とにかく今後は響のからかいは阻止しないと!

響の言うとおり、隙を見せないようにすれば大丈夫!きっと・・・




数日後・・・


「キャロ、ちょっといい?」

とお屋敷の階段の手すりを拭いているあたしに鳴ちゃんが声を掛けてきた。今学校から帰ってきたところみたいでまだ制服のままだ。


「この前話してたことなんだけどね、おれ色々考えてあることを決行したんだ♪」と楽しげに言う。


「あることって??」


「新聞部にね、おれと50代くらいのおばさんが手つなぎデートしてる写真を提供して校内新聞に載せてもらったんだ。」


「え~~?!」


「あっもちろん写真は細工して作ったんだけどね~」


鳴ちゃんそんなことできるんだー。やるなぁ。


「そっか。そんな突拍子もないことよく思いついたね」


「でしょ?タイトルは『紅咲鳴 熟女と熱愛発覚!!』これで女子は引くこと間違いないっしょ。」


「あはは。確かに~。けど新聞部さんもよくそんなガセ写真載せてくれたね?」


「あ~それはちょっと色々あるんだけどね」

となんか歯切れの悪い言い方をした。


んーーーー?

なんか怪しい。

あたしが疑うような目で鳴ちゃんをじっと見ると、


「とりあえず作戦決行の報告まで!また結果は後日報告するからね~」と

逃げるように階段を上って行った。


鳴ちゃん何かやったな、あれは。




今日は響はバイト早上がりの日だったみたいで夕食の時間には帰ってきた。


「疲れたー。なんでかわかんねーけど昨日からやたら女子高生の客が増えてさ。あの制服たぶん鳴の高校じゃねーかな」


あっ・・・鈍いあたしでもさすがにピンと来た。

それには鳴ちゃんが関わってる気がする・・・

うわぁ気になってきた。


「ちょっとあたし用事思い出したから行ってくるね!」


「え?うん」



今日はツキノンのカテキョの日だから今まだ部屋にいるはず!

確かめに行こう!


高速早歩きで鳴ちゃんの部屋に向かった。


コンコン・・ガチャ


部屋にはもうツキノンの姿はなかった。どうやら入れ違いで帰ったみたい。

鳴ちゃんはデスクの上を片付けてるところだった。


「どしたの?そんな息切らして」と不思議そうな顔でこっちを見る。


「鳴ちゃん、響のこと使ったでしょ??」


「あ・・・バレちゃった?」と舌を出す。


「やっぱり!響のバイト先急に女子高生増えたって。何やったの?」


「響には言わないでね。実は今新聞部、街のイケメン特集っていうのやってて、響のウェイター写真提供したんだよね~。それがおれの写真載せる交換条件っていうか・・・」


そういうことかぁ。


「まぁそれでカフェは客足増えて繁盛だし、結果的には問題ないけどさぁ・・」


「そうだね、けど響の了承も得ず勝手に提供したのはおれも悪いと思ってるよ。だから響にはこっそり何かお礼しとく」



響はバイトしばらくは忙しいだろうなー。

お気の毒に。


「あっ!キャロのセクシー写真あげたら喜ぶかも。ちょっと撮らせてくれる?」


「鳴ちゃん!!」

とあたしは鬼の顔で鳴ちゃんを咎めた。


「冗談だってー怖いなぁキャロは」と全く反省してない様子でケラケラ笑ってる。


ほんといつもの周りを振り回す明るい鳴ちゃんに戻ったね。

まぁそれはよかったけどさ。


「キャロのおかげでおれの悩み解決できそうだし、ありがとね」

とにっこり笑う。


はぁ・・・やっぱかわいくて憎めないわ・・。



響も自分の知らないところでこの天使の笑顔を取り戻すことに一役買えたということで・・大目に見てあげてね、お兄ちゃん☆



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