ときめき大学祭☆
「キャロおまたせ~!」
と前から走ってくる夕夏。
今日は夕夏とお出掛けの日。
行き先はなんと響の大学☆
なぜかと言うと今日は響の大学の大学祭なんだ。
少し前にそのことを教えてくれて、来たかったら来てもいいって言ってくれたんだよね。それなら行かないわけがない。
それにしても大学祭とか懐かしい~~!
あたしも模擬店とかやったなぁ。
としみじみ思い返す。
「楽しかったよね~あたしたちの大学祭も」
と夕夏も同じように思い返していたみたい。。
駅から少し歩くと正門に辿り着いた。
うわぁ。にぎわってるなぁ。
明るい音楽と人々の笑い声や楽しそうにはしゃぐ声が聞こえてくる。
正門を入るとすぐに模擬店があちこちに並んでて、ちょうどお昼時の今、たくさんの人であふれかえってる。
敷地が広いからまだよかったけど、人口密度かなり高いよ。
響のお店見つけるのも一苦労だな。
あたしはさっき正門で受け取ったパンフレットをパラパラめくり始めた。
「ねーあの女子が列作ってるお店怪しくない?」
あっそっか!そういう見つけ方があったね。
試しに行ってみたら響のお店ではなかった。
クレープのお店でしたー。残念。
「響のお店はもう少し奥みたいだよー。ヘルシー野菜スープだって!おいしそう♪」パンフレットの中にようやく見つけた。
「いいね~行こ行こ~!」
そうしてキョロキョロ他のお店もチェックしながら響のお店へと向かって行った。
「あれっぽいね。やっぱ女子ばっか並んでるし~」
「ほんとだねー」
まぁそれは想定内。
響の姿を遠目で発見したんだけど・・・
「きゃー王子、コスプレしてるー!」と夕夏が騒ぎ出す。
そうなの、あれって高校の制服だよね・・??
紺のブレザーにグレーのネクタイ、もう高校生じゃないのに全然似合ってて違和感ゼロ・・。
鳴ちゃんとは違う高校だったんだ。制服が違う。
あたしたちの番がやってきた。
響、すごく忙しそうにしてて、あたしたちが目の前に来るまで気が付かなかったみたい。
「おー来たんだな。場所すぐ分かった?」とスープを器に入れながら言った。
「うん。駅から坂を上るだけだし分かりやすかったよ」
「ならよかった。」
「響さん、そのカッコすっごく似合っててカッコイイですね!」
と夕夏がまたミーハーな感じで言ったんだけど、
「ありがとう」
と響は嫌な顔せず爽やかに笑った・・?!
夕夏は今にもとろけてしまいそうな表情になってる・・。
響、成長したなぁ。あたしが前に一度怒ったから、態度改めてくれたのかな。
「響誰~その子たち。めちゃかわいいじゃん。」とオレンジの髪したイケイケ風の男の子が奥から出てきた。その子もやっぱり制服を着てるんだけどこっちは学ランだ。前のボタンを全開にして着てるから不良っぽく見える。
「え、あー友達」
「とか言ってどっちか彼女だろ?ってかもしかして両方?」と意地悪な言い方で響を攻める。
「あほか!んなわけねーだろ」
「いーやおまえならありえるね」
「勝手にほざいてろっ」
あはは。響の友達に対する態度、家でいるときと全然変わらないんだな。
友達関係うまくやれてるみたいでなんか安心した。
「なー後で紹介してよ」と響の肩に腕を回す。
「嫌だね。おまえには絶対しねぇ」
「何でだよーケチ響ー」とブーブー文句を言ってる友達のことをスルーして、あたしたちに野菜スープをくれた。
「あっお金」
「いいよ。オレのおごり」
「ありがとう!!」とあたしと夕夏は声を合わせて言った。
「もうすぐ自由時間だから、またメールする」
「うん!」
そうしてあたしたちは響の店を後にした。
さてとそれじゃあ次はどこへ行こうかな♪
「ねーキャロ、あたし彼氏できたんだ」
と模擬店で買ったフルーツパフェを食べながら夕夏がさらっと言った。
「えー!いつの間に!相手は?」
「会社の上司なんだけどね。最初はなんとも思ってなかったけど、一緒に仕事していくうちに彼のいいところがたくさん見えてきて。いつの間にか好きになってた。向こうも同じ気持ちだったみたいで、付き合おうって」
「そうだったんだー。よかったね!」
「うん。ありがと」と幸せそうに笑う夕夏。
「あれ?でも響のことは本気じゃなかったんだ?」
本気だったらライバルになっちゃうなってちょっと気にしてたんだけど・・。
「違う違う。響さんはアイドルを追っかけまわすのと同じような感覚だからリアルじゃないっていうか。それに響さんはすでに誰か想ってる人がいるみたいだしね」
とあたしにウインクをする。
「?」
「・・・もしかして気付いてないの?」と信じられないといった顔をする夕夏。
「何が?」
「・・・はぁ。相変わらず鈍感ぶりは変わってないね」と苦笑する。
「?」
「響さんキャロのこと好きだと思うよ」
「・・・え?!」
夕夏の発言に驚き過ぎて目を丸くしちゃった。
「前に行った花火大会のときにそう感じたよ。」
「・・・それはないよ。響にとってあたしはただのメイドだもん。それに好きな人いるって言ってたし」
「・・・それを自分かもとは思わないの?」
「!」
そんなこと、考えたこともなかったから自分は自然に除外してた。
「それはありえな・・」と否定しようとしたあたしの言葉を、
「くないよ。過去のこと振り返って思い当たる節全くない?」と肯定に変える。
「それは・・・」
てっきりいつもからかわれてるとばかり思ってたから・・・
いや実際からかってるだけだと思う・・。
「まぁ、あたしもはっきり確信を持ってるわけじゃないから実際どうかはわからないけど、これからはそういう目で響さん見てみたら?何か分かるかもしれないよ。」
「・・・うん」
「ってかキャロ響さんのこと好きになってたんだね」
「あ・・うん。自覚したのはつい最近なんだけどね」
「あはは遅~。さすがキャロだわ。応援するから頑張ってよね」
「うん。ありがとー!あたし頑張る」
そんなとき携帯がブルブル振動した。
「あっ響からだ。」
電話に出ると響が今から自由時間らしく講堂で待つとのことだった。
「行ってみよう」
「オケ☆」
講堂の前に高校生姿のままの響がいた。
通りゆく女子にあからさまに視線を送られている。
本人は全く気にしていない感じだけど・・。
日常茶飯事だからもう慣れちゃってるとか?
「響お待たせ!」
とあたしたちが駆け寄ると今度はあたしたちが周りの女子たちに羨望の眼差しで見られる。
「おいっす。もうけっこう回った?」
「まだ模擬店しか回ってないよ」
「んじゃ中案内してやるよ」
と歩き出そうとしたら後ろから、
「あのーごめん二人とも。あたし、ちょっと急用出来ちゃって」と胸の前で手を合わせて申し訳ない顔をして言う夕夏。
「え??」
「なのであたしはここで帰らせてもらうね」
「そっか・・来てくれてありがとな。」
「こちらこそ、すごく楽しかったです。ありがとう。それじゃまた」
と言った後あたしに目配せをした。
ん??
まさか、わざと?!
「キャロまたね♪」
とイタズラっぽい笑みを残して去って行った。
やっぱりそうみたい。機転利かせてくれたんだ。
けどあたしの心の内は複雑で・・。
どうしよ。ありがたいようなありがたくないような・・。
どーもさっき夕夏と話してから、響と一緒にいると緊張するんだよね・・・大丈夫かなぁ・・。
「キャロ?」
名前を呼ばれてふいに顔を上げると響の顔がすぐ前にあった。
「!!」
どきどきどき・・・
ヤバ過ぎる・・やっぱ大丈夫じゃないかも・・
響に中を案内してもらって色んな展示教室を見て回った。登山サークルは模擬店だけじゃなくて写真展も開いてて、綺麗な山頂からの景色等を映した写真が飾られていた。
次はどこへ向かおうかと白い廊下を歩いていると・・・
「あの~・・突然すみません。私、イベントサークルの中蒲田と申します、二人に折り入って頼みたいことがあるのですが・・?」
と原色に近い赤色のボサボサ髪に黒縁メガネの男の人が声を掛けてきた。
すごく恐縮していて、姿勢も前かがみ。
「?」とあたしと響は顔を見合わせた。
「何?」と響が聞くと、
「えっと実はですね、後30分後にベストカップル大賞ファイナルを講堂で開催するんですが、優勝候補の二人が急に来れなくなってしまいまして・・それで代わりに出てもらえないかと・・」
べすとかっぷるたいしょうだってー?!
なんだそれ??
「内容はその名の通り、一番素敵なカップルを決めるというイベントなんですが、今年で最後なので、今回かなり力を入れてまして・・。けど優勝候補が抜けるとだいぶ盛り上がりに支障きたしてしまうんですよね。なので響さんに出てもらえれば・・」
「オレのこと知ってんだ?」
「そりゃそうですよ!有名ですから。」
「ふーん。けど却下。こいつとはカップルじゃねーし、オレ目立つの嫌いだし」と俺様響の目線で言う。
「そこをなんとか・・人助けと思って。彼女さんも無理でしょうか?」
「だから彼女じゃねーって・・」
中蒲田さんは訴えるような目でこっちを見てくる。
うっ・・・あたしこういうの弱いんだよね・・
中蒲田さんすごく困ってるみたいだし・・
あーダメだ・・ほっとけない。
「ただ出るだけでいいんですよね?」
「キャロ?」
「今年で最後のイベントだったらそりゃ力入れるし成功させたいって想いが強いと思う。・・響、協力してあげよう!」
「・・・出たよお人好し」と響は深い溜息をついた。
「ありがとうございます!!このご恩は一生忘れません!!」
中蒲田さんは低姿勢から飛び出すようにあたしの手を両手で握って泣きそうな顔をして何度もお礼を言った。
なんだかリアクションが大げさな人だなぁ。
おもしろいけど。
そんなこんなでそのベストカップル大賞ファイナルとやらに出場することになった。
響は最後まで文句を言っていたけどね。
30分後・・
舞台の袖で出番を待ってるときにちらっと客席を見たんだけど、満員な上に立ち見までいる!
さっき中蒲田さんが大声で、響が出ること宣伝して回ってたからその効果もあるんだろうか・・。
そういえば響は有名人だとか言ってたし、注目が集まったのかな。
ん??
ってことはあたしも注目されちゃうってことだよね?!
ど、どうしよう・・。今さらながら自分の置かれてる立場の重さを実感する。
あたしが認められなかったら響の評判が落ちちゃうんじゃ??
彼女たいしたことない奴 = 響もたいしたことない奴
みたいな・・責任重大?!
ガーン・・・
「何ここまできて青ざめてんだよ!」
響はあたしが緊張で青ざめてると思ってるみたい。
違うの、責任の重さに耐えられなくなってきて・・・
「響、巻き込んじゃってごめん」
「謝るなら最初から引き受けるんじゃねーよ」
「・・・」
「こうなったらやるしかねーじゃん。胸を張れ、キャロ」
「う・・うん」
そうだよね。おどおどしてたら余計悪い印象になっちゃうし、せめていつも通り明るく前向きに・・!
名前をコールされて舞台に出たんだけど、思ったより緊張しなかった。
開き直ったのと隣にいる響が手をつないでくれてるからかな。
中蒲田さんに事前に説明受けてたんだけど、お互いをどれくらい分かってるかチェックというのが審査にあって、司会者がまず彼の好きな食べ物とか、苦手なこととかお題を出して、二人それぞれ画用紙に答えを書かされた。その後彼女バージョンもする。
なんとあたし全問正解!
だてに専属メイドしてるわけじゃないもんね!
これはかなり嬉しかった。
響もけっこう正解してて、意外だった。
思ったよりあたしのこと分かってくれてるみたい。
審査はこれだけと聞いていたのに・・・
「では今からお互いの好きだと思うところを言ってもらいます」
え??
そんなの聞いてないんだけどぉ!!
中蒲田さん、もしかしてわざと言わなかったんじゃ・・
言ったら出てもらえなくなると思って・・
もしそうならかなり黒いよあの人~~!
隣にいる響を見上げるとさすがにきつそうな顔してるし・・ちょっと目のあたりを押さえている。もしかしてあまりのことにめまいでもしたんじゃ・・。
これは恥ずかし過ぎるって・・だってあたしの場合リアルだし!!
とまどっているうちに順番が回ってきた。
まず彼女から言うみたい。
どうしよ~~~!!
「ではどうぞ」とマイクを向けられる。響は不安げな顔でこっちを見つめてる。
ええい!こうなったらもうがむしゃらで言うしかない!
思ってることそのまま言おう!
「全部です!!!」
しーーーん
と一瞬静まり返った後「おーー!」と歓声と拍手が湧き起った。
だ、大丈夫だったかな、なんか盛り上がったみたいでよかった。
響の方を見るとこっちを向いたままぽかんとして静止していた。
つないだ手がさっきより熱くなっているような・・。
「それでは彼の方に聞いてみましょう」
と司会者が言った瞬間また歓声が起こる。
響はとまどいながらも
「・・オレのこと一番分かってくれているところです」
とさらっと言った。
その瞬間歓声と拍手が湧き起こり、ところどころ女子の悲鳴のような声も聞こえた。
はぁ・・なんとか難関をクリアした~~!!
これでやっと審査項目は終了で今から審査員が会議をする。
その間あたしたちは舞台の袖で待機。
やっと一息つけた。
「おまえ、さっきの・・何もないからって適当に言っただろ。セコイ奴」
と響がヒソヒソ声で言ってきた。
セコイだなんて心外だわ!
「違うよほんとのこと言っただけだもん!」
「?」
・・・あっ!・・ヤバい言っちゃった・・今の響が好きだって言ってるようなものじゃない?
気付かれた・・かな?
と響を見上げたんだけど、なんか考えてるけど答えが出ないみたいな顔をしてる。
どうやらギリ気付かれなかったみたい・・・。
そうしてるうちに審議が終わったみたいで司会者が出てきた。
そしてまたあたしたちも舞台に出る。
「みなさんお待たせしました!ベストカップル大賞ファイナル、ついに最後のグランプリが決定しました」
「おーー!」と大歓声が湧き起る。
「発表いたします。ベストカップル大賞ファイナルグランプリは・・」
わぁどのカップルだろう・・・みんな素敵なカップルだから一番を決めるの難しかっただろうなぁ・・
「響&キャロカップルに決定!!!」
「へ??」
今名前呼ばれた・・?
信じられなくて響を見上げる。
響もウソだろって顔をして驚いてる。
「厳正に審査した結果僅差でお二人のポイントが他の4組より上だったということです。おめでとうございます!!みなさん二人に拍手を~~!」
うわぁ・・本当に優勝しちゃったんだ・・。
ほんとのカップルじゃないのにごめんなさーい。
申し訳ない気持ちが大きくて素直に喜べない。
それは響も同じみたいだった。
「それでは最後に二人の熱いキスで締めくくってもらいたいと思います」
・・・え?・・キス・・・?
頭が一瞬フリーズする。
はぁ~~~?!!!
それも聞いてないし、聞いてたら絶対参加しなかったってー!
だからか中蒲田!!
あたしは客席の端でこっちを見守ってる中蒲田を凝視した。
少し遠いが表情は分かる。
めっちゃめちゃ笑顔だし!!あいつ~~!
それにしてもすごい歓声・・
キスコールまで起こってきたし、どうしよ~~~!
あたしは超不安な顔で響を見上げる。
響も動揺してるみたい。
そりゃそうだよね・・・。
こんな大勢の目の前でキスなんて目立つどころか・・・
だからってこのまましなかったらこの空気ブチ壊しちゃうし、せっかく最後のイベント成功させようとしてるみんなを悲しませるし、あたしたちも出た意味がなくなるし・・・
ごちゃごちゃ頭の中がカオス状態になる。
響じゃないけどめまいもしてきた。
中蒲田をもう一度見ると、右手と左手をそれぞれ丸くして指の先端同士をちょんっとくっつけるようなジェスチャーをしている。
つまりキスしろってことだ!
あいつ絶対後で締めてやる~!
歓声が鳴り止まない中・・・
「・・・キャロ、目をつぶれ」
「えっ」
どきどきどき・・
ひ、響?・・・響の目は本気だ。
ほ、ほんとにするの???
響、覚悟を決めたんだ・・・
分かったよ・・もう、何でもありだよ!
あたしも覚悟を決めよう!
と響の方を向いて、顔を上げ目を強めに閉じた。
どきどきどき・・・
緊張するよ~~~!
「!」
チュって一瞬口元に・・・
そう口じゃなくて口のすぐ横に響がキスをした。
客席側からは口にしたように見えたかもしれない。
その後今日一番の大歓声が湧き起こる。
「・・・・」
はぁ~~~ダメだ足の力が抜けた・・・
めちゃくちゃ緊張したよ~~~!
まだ心臓がどきどきいってるし・・。顔もたぶん真っ赤だし。
けどなーんだ・・そういう作戦だったんだ。
さすが響というか・・。
ちらっと横を見上げるといつもの冷静な響に戻ってる。
あれ?あたしちょっと残念に思ってる??
やだなぁ・・。
「いや~お疲れ様でした!!!ほんとうになんとお礼を言ったらいいか・・ってお二人さんかなり怒ってます?」
「怒ってるに決まってるでしょ!!話が全然違うじゃん!!!」
イベントが終わった後講堂裏に中蒲田を引っ張っていったんだよね。
それで今文句ぶちまけ中。
「なんせ時間がなかったもので説明不足になってしまった点は・・」
「ごちゃごちゃ言い訳してんじゃねーぞコラ」
響も本気で怒ってて俺様度マックスだ。
「ひぇ~すいません。私を煮るなり焼くなり好きにしていいですから」
と頭を抱え小さくなっている。
もう・・・なんか怒る気なくさせるんだよね。この人って。
得なキャラだよ、ほんと。
「お詫びにこれ差し上げますからどうぞ勘弁してやって下さい」
と何かチケットのような紙を2枚渡してきた。
よく見ると有名なミュージカルのチケットで、しかもめったに手に入らない一番いいS席だ。
あたしは単純なもので、それを見た瞬間怒りが嬉しさに一瞬で変わっていた。
「これすごく行きたかったミュージカルだ~!」
「それならよかった。ではお二人ともこれからもベストカップルでいてくださいね」と親指を立ててにっと笑い講堂へ戻って行った。
「あいつうまく逃げたな」
と響は怒りが残ってるみたい。
「まぁでも、このイベントに対する想いはほんとだったみたいだし、大目に見てあげようよ」
「おまえってお人好しで単純過ぎ」と呆れてる。
「でも、なんだかんだでけっこう楽しかったよ。響は?」
と聞いておいてすぐ後悔した。
目立つの嫌いと言ってた響が楽しかったわけないよね・・。
「意外に楽しめた・・かもな」とぶっきらぼうに言った。
あたしの顔がパッと明るくなる。よかった!
「綺麗な夕焼け・・・」
夕暮れ時に大学の裏にある、街を見下ろせるポイントに連れて来てもらった。
今日は立ち入り禁止なので見つかったら怒られるらしいんだけどね。
この大学は標高の高い位置に建っているのでここからだと十分街を見渡せる。
遥か向こうに見える山に今ゆっくり夕日が沈んでいくところだ。
オレンジの光が空を染めていてすごく綺麗。
ここは響のお気に入りの場所なんだって。
あたしは胸の高さまである黒い格子柵から身を乗り出すようにして眺めている。
隣の響はさっきから無言でどこか遠くを見てる感じだった。
しばらく静かな時間が流れた後、ようやく口を開いた。
「オレさ、おまえにはあまり良く思われてないと思ってたんだけどそうでもねーの?」と前を向いたまま言う。
この意外な質問にあたしは驚いた。
響そんな風に思ってたんだ・・。
「・・・確かに最初は良くない印象だったけど、今はそんなことないよ」
「・・・ふーん。そっか」
少し安心したよう響の横顔を見てるとふいに夕夏の言葉が頭に浮かんだ。
『響さんキャロのこと好きだと思うよ』
本当にそうなのかな?
もしそうだとしたら、あたしが今ここで気持ちを伝えたら想いが通じ合える・・??
どきどきどき・・・
「・・・あの、響」
「あっ!オレそろそろ戻らねーとヤバい。後片付けしないといけねーんだった」
「そ、そっか。じゃあ戻ろう」
「あれ?今何か言いかけた?」
「ううん、何でもない」
・・・タイミングを失ってしまったな。
けどどのみちきっと言えなかった気がする。
あたしにはまだ自信も確信もない。
だから言えない・・・
ほんとヘタレで意気地無しで嫌になる。
だけどそう遠くない未来にもっと自信を持って気持ちを伝えられるようになりたい。
だから自分磨き頑張るよ。
そうしてあたしたちはこの場を後にして模擬店に戻った。
まだお客さんがいるみたいで、片付けは始まっていないみたい。
「響、今日は本当にありがとう!すごく楽しかった」
「うん、オレも」
「よーベストカップルさん♪」
茶々を入れてきたのはあのイケイケの学ラン君。
「何で知ってんの?」と響が嫌な顔をする。
「君の情報は校内回るの速いからね~知ってて当然!ってかやっぱ付き合ってたんじゃん。嘘つくなよ~~~!」
「・・・悪かったよ」
「おっ素直じゃん」
「はぁ・・」と響が溜息をつく。
そうなんだよ、偽カップルっていうのはバレちゃダメなんだよね。
イベントサークルに傷がついてしまうし、色んな人に嫌な思いさせちゃう。
何が何でも隠し通さないと!
「じゃあお詫びに今二人チューしてよ」
「はぁ?!」
「だってオレ講堂行けなかったし、大勢の前でできたんだからオレの前なら楽勝でできるっしょ?」
「おまえの前の方が嫌だっつーの」
「何でだよ~~!けち~」
もうほんと勘弁してほしい・・。
あの、講堂での未遂キスですら思い出すと顔から火が出ちゃうのに、これ以上からかわないで~!
これ以上イケイケ君が厄介なことを言い出す前にとっとと退散しよ。
「あの、あたしそろそろ帰るね」と言って背を向けかけたとき、
「彼女さん、響のどこが好きなの?」
と聞いてきた。
もうまたその質問~?!
はぁ~と一つ溜息をついてから
「全部!」
とイベントと同じように言い切って背を向けて歩き出した。
その後ろから「ひゅ~」というイケイケ君のひやかしが聞こえたんだけど、響が何か疑問そうな顔をしていたことはあたしは知らない・・。




