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あの日からレオリオンは毎日私の部屋を訪れるようになった。
『脅す』などと言いながら実際はそんなことはなく、出会った頃の騒々しさが嘘のように静かに私の生活溶け込み、そして甲斐甲斐しく世話を焼くようになった。
態度は一貫して穏やかで優しく、また瞳、体温、仕草、言葉、その全てから私への深い愛情を感じた。
しかし,それも全部今だけのこと。
早く嫌になったり飽きたりすればいいと思い、私は彼にさせるがままに流され、そしてわがままを言うようになった。
まずは料理。私はご飯を全く食べてない時期があったので胃は小さく量はそこまで食べることはできないが、その分美味しいものを食べるのは大好きだった。
だが料理の仕方など分からないので森で取れる果物を主食としていた。もちろん料理道具など持っていない。皮剥きもカットも全部魔法に頼めばそれで済む話だ。
レオリオンは私の家に来るようになってすぐに大量の料理道具や、魔法道具の冷蔵庫などを持ち込み、鼻歌を歌いながら料理をするようになった。振る舞ってくれるのは、魚介をメインとした目にも鮮やかな食事で、量は少なく五、六品は作ってくれる。フルーツソースを基にした爽やかで甘い味付けで、どれも本当に美味しく、また食べやすかった。
でも私はせっかく作ってくれた料理をあれも嫌いこれも嫌いと言い、手をつけないこともあった。そうすると『そんなこと言わないで食べて』と私の隣に来てスプーンを差し出す。最初は食べるもんかと突っぱねるが、最終的には美味しそうな匂いの誘惑に勝てずに食べてしまうのだ。
『食べさせて欲しいだけでしょ』と言われれば『そんなわけないでしょ』とそっぽを向く。本当に彼を困らせて嫌われたいだけなのだ。
次に入浴。私が住んでいるアパートにはシャワーしかなくいつも適当に済ませていたが、これは毎回公爵邸のレオリオンの私室に常設してあるバスルームへと連れ込まれる。そこで隅から隅まで彼の手によって洗われるのだ。その手つきにはいやらしさは微塵もなく、きめの細かい愛情だけが乗っていた。
そして私は痛くないのに『痛い』と言う。するとおでこに唇が落ちてくる。『もう少し我慢して』と。さらに優しくなった手つきで泡を流すと雲のようにふかふかのタオルで私を包み込み、その後は丁寧に髪の毛や体にクリームを塗ると風魔法で一瞬で乾かす。
最後は必ず一緒のベッドで寝た。これはどっちの部屋かと縛られず、その日の気分で決めたが、大抵はレオリオンの希望で私の狭いベッドでこれでもかというくらいに抱き合って寝た。セレナともここまでくっついて寝たことはなく、肌を合わせ体温を分け合い、他人の重さを感じながら眠ることがこんなにも安心感を得られるのだと初めて知った。さらにはあの夜のように求められることもたまにあったが、それも素直に応じた。
やがて夜が明けると、レオリオンは朝食の用意を済ませ、私を起こさずに出勤していく。そんな日々だった。
セレナに面倒を見てもらっていた十二年前を思い出すが、あの頃と似て非なる状況だった。
セレナは穏やかな家族愛、しかしレオリオンは底知れぬ情愛を携えていた。
私は願うとこしかできなかった。早くレイリオンが目を覚ましますようにと。
そして一刻も早く私から離れ、幸せに暮らせますように、と。
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そんな日が続いたある夜。レオリオンがベットの上にゆったりと腰を下ろし、背後からそっと私を包み込んでいた。その胸に身を預けるように座って小説を読んでいた指先に黒蝶が留まる。
ガルフレッド男爵家 長女カミラちゃん。
現在一歳のこの子は早期の魔力過多症を発症しており、四六時中泣き、あまり寝ることができず両親は心身ともに疲れ果てているようだ。
「明日夜の祝福を行うわ。二十二時にいくと予告状を送って頂戴」
フワッと空気に溶け、消えた蝶の跡を少しだけ指でたどる。その指を彼の大きな掌が包み込むと、そのまま自分の口元に運びチュチュと口付けを繰り返す。いつものことなのでさほども気にもせず、小説の続きを読もうとする。
「夜の祝福やるの久しぶりだね」
「確かにそうね。最近は魔力過多症の子も減ってきて、情報も集めにくくなっているの。他に私が治せる病気の子もなかなか見つからないよのね」
「ルナベルの五年間の成果だね」
「そうだといいんだけど」
「ねえ、明日の祝福につけて行ってほしい物があるんだけど」
そう言って取り出したのは、リナとして会っていた時にも一度渡され断ったあのピアスだった。当たり前のように、耳にそれをつけ満足そうに微笑む。
私はそれに見向きもせず、破壊魔法を発動する。
パン!と小さく弾け、粉々にあるピアス。少しだけ破片が飛び、耳たぶに傷をつけた。
「こら」
「勝手に変なものつけないで。いらないって言ってるでしょ」
「悪い魔女にはお仕置きが必要だね」
「ちょ、な、レオリっ」
後ろにいたレオリオンが私の体を引き込み、くるっと回転し上に覆い被さってきた。
ギシっとベッドが軋み、血管の浮いた腕が顔のすぐ側にあり、不覚にもドキッとしてしまった。
そしてすぐに私の体を潰すように体重を乗せてくるとそのまま深く口づけをし、魔力を流してきた。私が苦手な甘く、くらくらする彼の魔力だ。
「んん、っあ…」
「喜びすぎ。お仕置きって言ったでしょ、ご褒美じゃないんだから」
抗えない快楽が内側から侵食していく。もうすっかり慣れてしまったそれに満たされると、理性もすっかり溶けてしまい体の力が抜ける。
「れお、りおん…っちょ、っとまって」
「だーめ、またない」
容赦なく彼の魔力を流し込まれ、体も脳も甘く痺れる。
ああだめだ、もう何も考えられない。
「ルナベルは何しても可愛いけど、体を傷つけることだけはダメ」
「ふっ…ん、わざとじゃない、わ」
「それでもだめ。体の近くで危ない魔法は使わない、いいね?」
「わ、かった、から…ん、もう、レオリオン、…はやくっ」
早くと急かすよに彼の瞳に訴える。
わかっているくせに、余裕そうな笑みを携え『ん?』と首をかしげる。
「そういえばさ、ジェイドがケーキを完成させたんだ。食べにいかないか」
「え…なに、ケーキ?」
「そう、近々ノワールの周年記念パーティを開くんだ。ジェイドもぜひリナさんとって言ってる」
「パーティは、行きたくない」
「パーティには参加しなくていい。奥の部屋にケーキを用意させるからそこで食べて欲しい」
「本当?誰にも会わない?」
「ジェイドには会ってやってくれ、喜ぶから」
そういうと、彼の手が私のスカートの中に入ってきた。
あとはもういつものように私はたくさん啼かされるだけだなのだ。




