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本日二話目です。



 今までふわふわと浮いていた気持ちが急降下した。流石にこれは分かる。あってはならないことだ。

 私の反応がよくなかったからか、すかさずレオリオンが深い口付けをしてきた。



「ん…ちょっと、」


「こーらダメでしょ。もう一度、何も分からなくなるくらいまで溶けて」


「レオリオン、私、もう」


「んー大丈夫だよ。何も心配しないで。全部俺に任せて」


「私、解除魔法だけは…」



 あんな姿を見せて嫌われなくない。



「ここで戻ったら、もう二度とあなたの前には現れない。このままがいい、お願い、“リナ”でいさせて」


「忘れているようだけど、リナが逃げた所ですぐに夜の祝福で顔を合わせることになるんだよ」


「でも、“リナが月蝕の魔女”だという確実な証拠がなければ、私はこれからもリナとしてレオリオンの側にいれる」


「それはむり」


「レオリオン…!」


「だってリナの姿じゃ勃たないもん」






 ……タツってなんだ?

 意味が分からず瞬きを繰り返す。



「閨教育は受けてないみたいだね」


「レオリオンの側にいるためには、その…タツが必要なの?」



 話が急に理解できない方向に進み、首をかしげる私にレオリオンは心から楽しそうに笑っている。



「つまりね、逃げたって無駄。すぐに捕まえて見せるよ」


「あっ、れ、おりおん、」



 レオリオンの手が私の太ももを妖しく撫でる。唇は私の耳を濡らしながら艶やかに囁く。



「大丈夫、とびきり気持ちよくしてみせるから、さっきみたいに流されて」



 またあの駆け抜ける何かが襲ってくる。身を捩り、逃げようとするも敵わず、さらに追い詰められていく。

 またしても口付けが始まる。しかし今度流し込まれたのは唾液じゃない、彼の魔力だ。



「んっ、んん…」


「俺の魔力懐かしいでしょ?ちょっと攻撃力が高いんだけどさ、少しだけならピリピリして気持ちいいでしょ。ほらもっと口開けて」


「あっ、ふぅ、ん」



 体の内側が甘く痺れ始める。もうだめだ、何も考えられない。



「解除魔法、かけるよ」






 本当にいいのだろうか、この美しい黄金の瞳にあの姿を映してしまっても。

 でも、脳が働かなくなってきた私は、五年間も努力し続けた彼にご褒美をあげてもいいような気がしてきてしまった。 


 初めて飲んだお酒での失態。突然に現れた過去との遭遇。

 全て今日だけ、今夜だけのことだ。




 太ももを弄っていた手がそのまま私の体の曲線をなぞり、鎖骨を撫でる。



「まずは、月光のように透き通った肌」



 リナの健康的な肌が、スーッと色を変える。それは本当に月の光を宿したかのように白く、けれどレオリオンが触ったところは赤く色づいていた。



 レオリオンの目が歓喜に染まっていく。横向きで見つめあっていた私たちは、再び彼が私の上に覆いかぶさることで元の体勢に戻った。

 薄暗い部屋の中でも黄金に輝く視線が私の全身を余すことなく見つめる。そしてそっと髪を掬い上げるを口元に持っていき、ちゅ、と音を鳴らす。



「世界中の夜を集めてもこれほど深くて美しい色に届かない。圧倒的な魔力の象徴である美しい髪の毛」



 彼が口を離したところから闇が広がっていく。伸びた髪の毛が彼の手のひらから溢れ、私の体の上に落ちる。



「月蝕の魔女、だなんてよく言ったっものだよ。その美しい姿に蝕まれたのは俺。もう余すことなく俺はお前のもの。そのはてしない漆黒の瞳に俺を映して」



 瞼に唇が落ちる。ぎゅっと目を瞑ってから目を開けると、何かが落ちてきて視界を遮る、レオリオンの涙だった。




「ああ、やっとだ、やっと…やっとこの日が来た」



 月明かりでほのかにしか明るくないこの部屋で、私の髪の毛一本たりとも見逃さないと言ったように熱く、また執念すら感じる視点を向けてくる。

 私の体で彼の手が触れられていない所はないほどに、くまなく全てを撫で終わると全体重をのせ抱き潰してきた。こんな姿を見せただけでこんなにも喜んでくれるだなんて、なんだが落ち着かない気持ちになる。

 


「名前教えて」


「名前…」


「うん、俺は月蝕の魔女が好きなわけじゃない。ちゃんと心からお前だけを愛したい」



 ここまで見せてしまったのだ、もう名前を教えたとてなんら影響もないだろう。

 だって“ルナベル”とレオリオンが会うのは今日で最後だから。




「ルナベル」


「ルナベル…ああ、ルナベル…!ずっとずっとルナベルだけを追いかけてきたんだ」


「レオリオン」


「ん?どうしたの」


「もっと気持ちいいことするんでしょ」


  

 レオリオンの首に手を回し、ぐっと引き寄せる。

 彼が私にした様に、耳元で甘く囁き耳たぶを軽く噛むとそこから魔力を流し込む。



 私、魔法に関しては誰にも負けないもの。気持ちのいい流し方、もう覚えたのよ?



「おい…!」


「あなたのハニートラップ、ひっかかってあげる」


「はああ、薄々感じてたけどさ、ルナベルはこの姿の方が大胆になるよな」



 この時間が始まってからずっとギラギラしていた瞳が、これまでにないくらい獰猛な光を宿す。




 今夜だけ、今夜だけの関係。この時は本当にこれで終わらせる。心に決めていたのだ。




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