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ここのシーンが長くなってしまったので二話に分けました。
短めになってます。この後20:10に続話を投稿します。
私の上に覆いかぶさるとレオリオンは私の顔に幾度となく唇を降らせてきた。おでこから始まり、瞼、頬、と段々下に下がっていく。触れた唇は驚くほど優しく、そして熱かった。
酔いと熱に浮かされ、さっき知った衝撃の事実にも頭が追いつかずぼーっとしてしまう。なんの抵抗もなく彼の唇を受けていると『いい?』と問いかけられる。
何を確認しているのかも分からない。でもここで是と答えてしまったらきっともう後戻りはできない気がした。
「お願い、今だけ流されて。この日のために頑張ってきた俺にご褒美を頂戴」
「ご褒美…?」
「うん、ご褒美。魔女の仮面を取ったとびきりに甘いお前を頂戴」
もう一度、確かめるように触れてくる唇に私は瞼を閉じ、答えを示す。
激しい口付けが始まった。
息継ぎも許さないといったように、角度を変え何度も何度も唇を重ねてくる。
夜の静寂に幾度となく吐息とリップ音が響く。自分の心臓の鼓動すらかき消してしまうほどのそれは、私の脳に直接響いて思考をかき混ぜる。
ただでさえも初めての状況に限界がきていた私は、酸欠や彼から香る濃いシダーウッドの香りにやられ、脳が正常に働かなかった。これまで人に迷惑をかけないように、子どもたちのためになるようにと自分を律し、常に正しくあろうとしていた私はもう全てがどうでもよく感じてしまうくらいには理性をドロドロに溶かされていた。
「なんで、ん、すき、なの?」
「ん?」
私の唇を貪ることだけに集中していた彼が、不意を突かれたように私を見つめる。
「どうして、魔女を好きになったの?」
『あー、これはクるな…』と呟いたレオリオンは私の背中に腕を入れ抱き寄せるとそのままゴロンと転がる。
今までは視界いっぱいにレオリオンがいたのでここがどこかも分からなかったが、彼の私室なのだろうか。
窓の外では白銀の月が世界を照らし、薄いレースのカーテンを透かした月光が部屋の隅々まで淡く満たしている。豪奢でありながら華美ではない、必要なものだけを厳選した空間は主人の端正な美意識が息づいているようだった。
「俺は人生を諦めていた。生まれつきの魔力過多症で長くは生きられないと言われ、妹も同じ病気。両親は少しでも落ち着いて暮らせるようにってあの村に越したけど、あっけなく事故で死んでしまった。その時にはもう体はボロボロでまだ症状が軽いミシェルが俺の看病をする。でもミシェルだって限界だったんだ。毎日考えてたよ。もうすぐ死ぬ俺がそのうち死ぬ妹に何ができるんだろう。って」
あの頃の二人の姿を思い出すと、胸が締め付けられる。これ以上ないくらいに痩せ細り臓器もボロボロだった幼い兄妹。どれほどの孤独と恐怖を抱えながら生きてきたのだろう。
「ミシェルが『何にでも効くドロップ』あるとって家を出た時も、何も期待してなかった。そんなものあるわけがないと思ったし。でも未練を残すのは後悔するから、ミシェルの好きなようにすればいいと思ったんだ。そしたらまさか不治の病を治せる魔法使いを連れてくるとは思わなかったけど」
彼は私の頬に手を添えると、顔中に再びキスの雨を降らせる。
「一目惚れだったんだ。もちろんこの体を治してもらったことには一生かかっても返しきれない恩を感じているが、俺は恩人を好きになるタイプじゃない」
「一目惚れなの?」
てっきり命の恩人だから好きになってしまった。そんな話かと思っていたので驚く。一目惚れだなんて信じられない。あんな気味の悪い姿のどこがいいのか。
「また口にで出るぞ」
「え?」
「“気味の悪い”だなんて、何もわかってないな。月蝕の魔女の姿がどれほどまでに俺を魅了し、狂わせるのか」
また深く口付けを始めると、少しは働くようになった脳がまた簡単に溶け出す。苦しくて息を吸おうと口を離すと、それを咎めるように彼の舌が歯列をなぞる。驚いたのも束の間、その舌が中に入ってきて私のを捕える。
「…ん」
「鼻で呼吸して」
舌も呼吸も絡め取られ、口の端からは誰のかもわからない唾液が溢れる。次第に理解できないものがゾクゾクゾクっと背中から迫り上がってきた。
「ん、上手。気持ちいい?」
「…気持ちいい?」
「うん、気持ちいい。こうやってキスをして、お互いに寄りかかって体温を分ける。肌同士が触れ合う感触も、お互いの匂いが混ざり合うのも、赤らんだ好きな人の顔を見るのも、全部ひっくるめて気持ちいい。それに、これからもっと気持ちよくなるよ」
彼の体に入り込んでしまうほど強くに抱き締められ、首筋に顔を埋められる。
「その前に、今から魔法をかけるね」
「魔法?」
グスグスになっている思考では先ほどから彼の言葉を繰り返すことしかできない。彼の言葉が右から左に流れていくだけで考えることができなくなってしまっている。
「うん。解除魔法だよ。今から俺が触るところは魔法が解ける。本当の姿に戻るんだ」




