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首椿  作者: 真崎いみ
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第62話

叫ばれて、人を呼ばれると困るのでとりあえず木原には猿ぐつわを噛んでもらった。本当は声帯ごと喉を掻き切ってもよかったが、それをすると首に流れる大きな血管を傷つけて絶命させてしまう可能性があるので避けた。

白髪交じりの前髪を掴んで、木原の顔を上げる。恐怖の色が滲む顔色を見て、健は首を傾げる。

「あれ?怖いですか?うーん…、こういうことになることぐらい想像したことがなかったですか。」

だとしたら随分とめでたい思考回路だ、と健は笑った。

「先生は、随分とユーモアのある方のようだ。」

木原は唸るように、くぐもった声を上げていた。


「ここから事細かく報告してもいいんだけど、うら若きレディの前なので割愛します。」

「えー!?いいじゃん、教えてよ!」

珠子は健の配慮に対して、ブーイングを上げる。

「ダメダメ。R18-G区分だから。」

「とっくに、18歳超えてるよ!!」

「要点は、Gのところなんだけどね…。まあ、最終的に先生には、ダルマのような形になっていただきました。」

耳を削ぎ、手足を切断した。その上で付け根をゴムで縛り、死なないように止血の処置を取ったという。

「わざわざ、生かしたの?」

「うん。まだ、禊は続くんだなー。これが。」

健は口角を上げた。

「手足を切断したのは持ち運ぶのに便利だからなんだ。先生をクーラーボックスに詰めたのはいいんだけど、二個分にはなっちゃって。で、急遽、人を呼んだの。」

「人?」

「うん。三島さん。丁度、巫女のバイトに来てたから、呼び止めてみた。」

不意に目の前に現れた健に怯えるさやかに、手足の入った方のクーラーボックスを預けた。

「たまちゃんが言った通りで、三島さんが力持ちで助かったよ。」

「あらー…。さやかったら、災難。」

人の体は意外と重い。それも、意識のない肉塊となったら部位なら尚更だろう。次の日は、筋肉痛になるのではないだろうか。

「それで、木原を最終的にどうしたの?」

「燃やしたよ。」

「…どこで?どうやってよ。人を燃やすって結構、大変じゃない?」

「ああ、それはね…、」


健とさやかはバスに乗って、大学に向かった。後部座席に並んで座る。

「…あの…、宮野さん…。」

さやかの身震いがそのまま、声に乗り震えていた。

「何?」

「これ、何なんですか…?」

自らが持たされ、今は足元に置かれているクーラーボックスをさやかは指差す。

「なんか、妙に重いし…。血を拭き取ったような跡もあるし。」

その言葉にクーラーボックスを見ると、確かに乾いて茶色に変色した血液が擦れて直線が引かれていた。どうやら完全に、拭き取ることができなかったようだ。

「気にしなくていいよ。」

「でも…、」

「これは三島さんのために言っているんだ。君は、たまちゃんの親友だから。」

言葉とは裏腹に冷たい色の健の声に、さやかはびくりと震えて縮こまった。

「は、はい。」

「うん。いい子。」

それからは沈黙の時間を保ったまま、車内を過ごした。

大学に着くと、二人は陶芸科の実習棟へ向かった。そしてその先に会ったのは、陶器の作品を焼くガス窯だ。

「ちょっと待っていて。」

健は一度、さやかをガス窯の隣の部屋に待機させる。

「よっこいしょ…っと。」

クーラーボックスを下ろして、ふたを開ける。中にいる木原は気を失っているようだった。

「よかったねー、先生。これでやっと死ねるよ。」

にこっと微笑んで、健は木原の頬を何度か張った。

「…、」

木原は呆然自失と言った風に、うっすらと瞼を持ち上げる。

「先生、じゃあ、さようなら。」

激痛と恐怖を感じ続けてついに虚ろな目をした木原をガス窯の扉を開けて、横たえた。ついでに、切断した手足も一緒だ。残しておいても、処分に困るだけだ。

重い扉を閉めて、健はさやかを呼ぶ。

「三島さん、ちょっといいかな。」

「…はい。」

おずおずとさやかはガス窯の前に立った。

「これ、ちょっと動かしてくれる?僕はやり方を知らないから。」

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