表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/67

51執着

「永徳さんが不老不死フェチとわかったところで、ここから移動しましょうか。そろそろあいつらの清掃が入る頃合いだからね。永徳さんはこれからどうするの?あなたの大事な婚約者さんは死んじゃったみたいだけど、一緒に心中でもするのなら、相談に乗るわよ」


「遠慮します。僕には婚約者以外に心に決めた人がいますから。その人が生きている限り、僕もできる限り生きていきたいです」


 隣に婚約者の亡骸があるというのに、見向きもしない。永徳はまっすぐにモニターを見つめて、まるで告白しているかのようだった。誰に告白しているのかは考えたくもない。


「うん、君もなかなか面白いね。ここで退場するのももったいないから、特別に見逃してあげる。その代わり」


「わかっています。あなた方のことは他言無用、ということですよね」


「物分かりが良くて助かるわ」


 ポンと手を打ち、和音はこの話はこれまでだと言わんばかりに、永徳やそばにいる実乃梨に向けて宣言する。


「ということで、今回はこれでお開きにします!君のせいで、だいぶ計画より死人が多くなっちゃたけど、まあいいや。それでは各自、解散してください!」


 和音は永徳が部屋の男をすべて殺害したことを気にする様子はなかった。隣にいる実乃梨も感覚がマヒしていて、特に悲しみや怒りを感じることはなく、人が死んだという事実だけが頭に残った。


 画面越しに永徳がもたらした血まみれの惨状を見てもそれは何も変わらなかった。




「依頼された廃ビルに到着しましたよ。今日もきっちり片付けていきますから、支払い、よろしくおねがいしますねえ」


「今回は、予想以上に派手にやっちゃったから、大変かもしれないけど頑張って頂戴ね」


「えええ、いつもでも大変なのに、それより派手にって、いったい何をやらかしたんですか?」


「ちょっと、死体が多いってだけ。男の死体が五つに、今回のターゲットの不老不死の女性が一つ。それと現場の血の始末も頼むわね」


 和音の言葉通り、実乃梨たち生存者がビルを出て十分も経たないうちに、清掃業者らしき人々が廃ビルに入っていく。実乃梨と和音は廃ビルから少し歩いた場所でタクシーを拾い、実乃梨の自宅に向かっていた。和音は彼らから電話に対応していた。



「天気が悪くなってきましたね」


 タクシーの窓から空を見上げると、黒い雲が広がっていた。今日は一日快晴と言っていたのに。黒い雲を見ていると、これから何か、悪いことが起こるような気がして、胸騒ぎがする。実乃梨の気持ちを読んだかのように、スマホに一通のメッセージが受信される。


『こちらも無事に廃ビルから出ることができました。永遠も連れて、一度、自分の家に戻ります』


「永徳さんから連絡が来ました」


 スマホの振動を感じた実乃梨が電源を入れると、永徳からメールを受信していた。メッセージ内容を正直に和音に伝える。いつの間にか電話を終えたのか、スマホを膝の上に乗せて苦笑される。


「タクシーの運転手が堅気かどうか確認もしないで、よく私と同じタクシーに乗って、そんな馬鹿正直にメッセージ内容を読み上げられるわね」


「どう考えても、この方はあなたの共犯者でしょう?こんなタイミングよくタクシーが来るわけがない。それに、行き先を『この子の家に』なんて、普通はタクシーの運転手に言いません」


「つまらない女。ここは冗談でも、『そんなこと考えてもいませんでした』でしょう?そんなお堅いところが不老不死になってしまった原因ねえ」


「同志に言われても、痛くもかゆくもありません」


 タクシーの運転手は二人の会話を黙って聞いている。詮索しないどころか、口をはさむこともなかった。しばらく不老不死談議で盛り上がっていたら、再度、永徳からのメッセージを受信した。その内容に、実乃梨は永徳の自分に対する執着の強さをひしひしと感じ、悪いことは永徳に関してかと思ってしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ