50不老不死フェチ
「そっちはどうなっている?もうすぐ、あいつらが片付けに来るけど」
「あなたが連れてきた、永徳、とかいう奴、オレ達より、相当な、クズ男だぞ。最初は、あなたに、脅されて仕方なく、女二人を、こちらに、連れて、きたのかと思った、が、そうじゃな……あああああああああ!」
和音が永徳たちのいる部屋と音声をつなぎ、部屋にいた男に話しかける。和音の声に気付いた男の一人が現状を伝えようと口を開く。
男たちの報告を聞き、そのまま撤収という運びになるかと思われたが、どうにも男の様子がおかしい。言葉が不自然に途切れ、顔には大量の汗を流している。そして。
「そこに、実乃梨さんはいますか?」
男は話している途中で悲鳴を上げて、その後、床に倒れこみ動かなくなる。その後、二度と口を開くことはなかった。永徳が無表情で男の胸にナイフを突き立てていた。
永徳の突然の行動に、画面越しに彼らの様子を見ていた和音と実乃梨は、驚きで言葉を失ってしまう。返答がないことを不審に思った永徳が、人をナイフで刺したとは思えない、いつも通りの様子で言葉を続ける。
「もしもし、僕の声はそちらに聞こえているでしょうか?」
「き、聞こえているわ。それで、あ、あなたが代わりに、その部屋の現状を教えてくれるかしら?実乃梨さんの安否が気になるなら、素直に私の言うことを聞きなさい」
和音が先に正気に戻り、少しドモリを見せながらも、努めて冷静に永徳に言葉をかける。実乃梨の安否という餌をちらつかせると、しぶしぶ現状を教えてくれる。
「僕の婚約者は死んでしまいました。過去の男との強姦未遂のトラウマが原因だと思います。あなたが呼んでいた男たちに犯されてしばらくすると、自ら頭を床に打ち付けて、男たちに処分されました。いつもの手口ですよね。ナイフで不老不死から解放された女性を殺すのは」
自分のいる部屋で婚約者が男に殺されたというのに、永徳の表情に変化はない。実乃梨たちが黙っているのを勘違いしたのか、今度は相沢についての報告を始めた。
「永遠についてですが、男たちに犯されましたが、そこに伸びて気を失っているだけです。しぶとい女ですね。犯されている最中は抵抗していましたが、抵抗したところでここから解放されることはないとわかると、すぐに男たちに自ら腰を振り始めました」
「そ、そう。永遠は生きているということね。ついでに、私が連れてきた男たちはどうなったのか、聞いてもいいかしら?」
和音がついでとばかりに男たちの様子を永徳に尋ねる。永徳は特に考えることなく、男たちの様子を伝える。
「見てわかると思いますが、部屋にいる男は、一人残らずオレが始末しました。この部屋で生きているのは、オレと永遠だけです」
どうやら、永徳という男もまた、常識を失くした人間の一人らしい。言われたことが本当か確かめると、部屋にいた男たちは全員、床に倒れていた。永遠も倒れていたが、生死はここからだと判断しにくい。
「じゃあ、永遠はそこに置いておいてくれる?証言者も必要だろうから。それとも、犯人が永徳さんだってばれているから、今のうちに永遠も処分する?」
「いえ、永遠にはまだ使い道がありますから、オレと一緒に来てもらいます。それで、実乃梨さんは」
「ここにいます。私に何の用事ですか?」
二人の会話を聞いていた実乃梨が会話に参加する。永徳はずいぶんと実乃梨に執着しているようだ。実乃梨ではなく、永遠に好意を持ったように見えたが違ったのだろうか。
「ああ、よかった。実乃梨さんはまだ、不老不死のままですよね?」
「まあ、そうですけど」
「よかったあ」
永徳は実乃梨の言葉に安堵したようだった。深いため息をついてその場にうずくまる。その行動を実乃梨とともに見ていた和音が何かひらめいたようだ。手をパンと鳴らして、自分の推測を口にした。
「もしかして、君って、不老不死フェチ?そうかそうか。それで、実乃梨さんにご執心なわけだ。なるほどなるほど」
「何を一人で納得しているのですか?」
不老不死フェチなどと言う言葉を実乃梨は聞いたことがない。匂いフェチや手フェチなどは聞いたことはあるが、フェチというくらいなのだから、不老不死に興奮するということだろうか。しかし、不老不死は見た目では判断ができない。見た目は三十歳のまま姿が変わることはない。それのどこに興奮する要素があるのか、実乃梨には理解できなかった。




