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44当日となりました

 実乃梨は《《彼女》》に指示された場所に一人で向かっていた。本当は相沢と永徳、永徳の婚約者と一緒に行くつもりだったが、二人は実乃梨の知らないうちにずいぶんと親しくなっていたようだ。実乃梨の護衛だというのに、永徳は仕事を放棄した。相沢と目的地に向かうという連絡が入ったのは、実乃梨が家を出る直前だった。


「申し訳ないですが、栄枝さんは一人で目的地に向かってください。私は永遠さんと婚約者を連れて向かいます」


 もはや、相沢との関係を隠すつもりはないらしい。それにしても、永徳の頭はいかれているのではないか。普通、浮気相手と婚約者の二人と一緒に行動することはない。


「まあ、他人の恋愛事情なんてどうでもいいか」


 たとえ、永徳が二人から非難されても、それは自業自得だ。そもそも、相沢からの誘いに乗る時点で、人間ではなく、盛りのついた動物と言えるだろう。そんな野蛮な男に護衛されていたかと思うと、実乃梨はげんなりする。


 しかし、その護衛も今日で終わる。


 実乃梨は玄関を出て空を見上げる。空は雲一つない快晴だった。まだまだ寒い日が続いているが、今日は気温が例年よりかなり高くなり、季節先取りの温かさだと気象予報士が言っていた。まるで、自分の未来を映しているようだと錯覚してしまう。輝かしい未来が先取りでやってくる。



『明日、実乃梨さんに特別席での観覧を用意してあげる』


 昨日の電話での《《彼女》》の言葉に、実乃梨は『わかりました』と即答した。『一緒に生きる』という言葉は、不老不死の女性にとって一世一代の告白にも等しい。死ぬことのない身体の持ち主が放つ言葉の重みは大きい。冗談で言っていい言葉ではない。《《彼女》》が冗談で言っているようには思えなかった。だからこそ、実乃梨は告白を受け入れた。


「でもまさか、殺人犯から愛の告白をされるとは思わなかった。しかも、告白に応えたら、私は殺されるどころか、加害者サイドから現場を見ることができるとは」



 実乃梨は目的地に向かうために歩き出した。




「一人で来るなんて、ずいぶんと警戒心が足らないようだけど、もしかして、私のことをすでに警察とかに通報しちゃったの?それとも、私のことを完全に信用して、自分は絶対に危険な目に合わないとか考えているの?」


「あなたのことを信用してはいけませんか?警察よりもあなたの方が、私は信用できる」


「あはは。やっぱり実乃梨さんは面白い人だねえ。いいよいいよ、そんな人なら、私と一緒に過ごせそうだ」


《《彼女》》が指定したのは、実乃梨の家から電車で一時間ほどの場所にある廃ビルだった。今は使われていないビルの前に立って待っていると、後ろから声をかけられた。電話越しに何度か聞いた声に振り向かなくても誰かわかった。



《《彼女》》は話しながら、ビルの中に入っていく。実乃梨も後に続いて足を踏み入れた。《《彼女》》は先日見た配達員の姿と変わらない姿をしていた。色白で華奢な女性だった。


 ビルの中は薄暗く、ところどころ壁がはがれていた。一人では気味が悪くて、中に入るのを躊躇していただろう。


「先に来てくれて助かったよ。そうでないと、実乃梨さんだけを贔屓しているように見られてしまうからね」


「一人で来たのは、実は、護衛が任務を放棄したためです。護衛の仕事を放棄して、今日は他の女と一緒に来るそうです。婚約者がいるのに、バカ丁寧に不老不死の女を解放してあげるみたいですよ」


「まあ、男なんて女がしおらしく振舞えば、すぐに騙される単純な生き物だよ。それが世の中の半分を占めているんだから、嫌になっちゃうよね」



 ビルの中の階段を上がり、連れていかれたのは、ビルの三階の一室だった。そこには監視カメラの映像がずらりと並べられていた。


「さすがに私も指名手配犯。自ら、現場で指揮をするわけにはいかないでしょ。ここから彼らに指示を出すことにするわね」


 画面を見ていると、ビルの手前に永徳たちがやってくるのが確認できた。先日の言いつけを守り、永徳のそばには相沢ともう一人、実乃梨が見たことのない女性を連れている。画面越しでは画像が荒く、どのような女性かよくわからなかった。




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