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43私は異常ですか

 犯人である《《彼女》》から実乃梨に電話があったのは、集合場所に行く前日のことだった。いよいよ明日、実乃梨は不老不死の女性が殺される現場を目撃することになる。そのことに妙な高揚感を覚えていたため、深夜を過ぎても、ベッドの中で眠ることができず、スマホをいじっていた。


「もしもし」


「寝ているかと思ったけど、まだ起きていたみたいね。明日があなたの命日かもしれないから、最後の夜を楽しんでいたのかしら?」


「そういえば、私もあなたに殺される対象でした。そういえば、携帯の番号は替えていないのですね」


 実乃梨は《《彼女》》の番号をスマホに登録していなかった。永徳たちに見せつけた着信画面に残っていた番号だが、その番号がかからないことも想定していた。


「番号をコロコロ変えていたら、あなたみたいな人が私に電話を掛けるときに不便でしょう?携帯はいくつか用意しているから、一つがばれても問題はないの。そのおかげで、実乃梨さんは、私に電話をかけることができたでしょう?」


「ソウデスネ」


「それで、自分が私に殺されないと思っていたみたいだけど、その理由を聞いてもいいかしら?」


 《《彼女》》に言われるまで、実乃梨は、自分が殺される立場であることをすっかり忘れていた。携帯の番号を気にするよりもっと、重要なことだった。


「理由などありません。もし、あなたが私を殺してくれるのなら、それはそれで構いません。不老不死という体質のせいで、『死』という概念が自分に適用しないので、あなたが私を殺すということが、いまいち、ピンとこないだけです」


「ピンと来なくたって、もう少し、自分のことに興味を持ったらどう?他の子たちは」


「私は同じ不老不死の女性たちと比べて異常ですか?」


 実乃梨は無意識に質問していた。他の子というのは、実乃梨以外に不老不死の女性のことだろう。


自分以外の不老不死で真っ先に思い浮かんだのは相沢だった。彼女と自分が相容れない存在で、同じ不老不死でも分かり合うことができなかった。しかし、もしかしたら、相沢の方が普通で、自分は不老不死の中でも異常なのではないかと思い始めた。


「異常かどうかなんて、私には判断しかねるわ。そんなことを言ったら、私の方が不老不死を殺しているのだから、世間的には異常者でしょう?だから、私と比較したら、あなたは世間的には《《まとも》》なのかもしれないわね」


「殺人者と比べて、私はまとも……」


「気にすることないわ。でも、実乃梨さんみたいな人を殺してしまうのは惜しいかも。ねえ、もし、実乃梨さんが私と一緒に生きてくれるのなら、明日……」



 相手の言葉に実乃梨は考えることなく、即答した。


《《彼女》》との電話を切ると、ベッドの上で目をつぶって眠気が来るのをじっと待つ。すると、先ほどまであれほど目が冴えて眠れなかったのに、今度はすぐに眠気が訪れ、寝てしまった。実乃梨は目覚ましが鳴るまで目を覚ますことはなかった。



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