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42楽しみにしているよ

「そ、それには及びません。時間が解決してくれると、医者も言っています。僕も気長に待つつもりで、だから」


 実乃梨が誰に電話しようとしているのか知った永徳が、慌てて電話を止めようと口をはさむ。しかし、実乃梨に永徳の言葉は届かない。


「いつまで待てるのかしら。私たちは不老不死になったら、《《男とヤル》》までは永遠と生き続けるしかない。自殺することも、事故で死ぬことも、病気も寿命も私たちには関係ない。文字通り、死ねない身体になるの。それに伴い、副作用かわからないけど、老化も止まってしまう。いつまでも若い身体のまま永遠と生き続ける。それを永徳は待てると言うの?まあ、男は若い女性を娶ったとしても、多少の噂にはなるけど、問題はないか。よかったわねえ。年下趣味だと言われても、世間から見放されることはないから。若い身体を存分に楽しめるというわけね」


「さ、栄枝先輩。ほ、本当にそれくらいに」



「でも、私はもう、誰にも不老不死でみじめな思いをして欲しくない。永徳にも婚約者で悩んで欲しくはない。だって、あなたたちはもう、私にとって、《《ただの人間》》だもの。私の大切な子どもみたいな存在になってしまったの。救いの手を差し伸べるのは当然でしょう?」


 二人の反応を見ることなく、実乃梨はスマホの画面をタップする。数コール後、聞き覚えのある声がリビングに響き渡る。二人にも相手の声が聞こえるように、スピーカーモードに設定する。


「もしもし、久しぶりねえ。覚悟は決まった?それとも、うちの永遠が実乃梨さんにご迷惑をかけてしまったかしら?」


「相沢がおたくのものだとおっしゃるなら、さっさと回収をお願いしたいのですが。ただし、《《ただの人間》》に成り下がる予定のようですから、不良品回収といったところになりますが」


「ああああ、そう来たかあ。実乃梨さんの護衛がイケメンで真面目で責任感の強い人間だとは調査済みだったけど、まさか、永遠に手を出してしまうとは。あれ、でも、永遠には手を出したのに、実乃梨さんは?あは、もしかして、実乃梨さんって」


「切りますよ」


 電話に出た《《彼女》》は、実乃梨の電話に驚くことはなかった。相手の軽口に真面目に応じると、実乃梨の反応が面白いのか笑っている。そんな二人の電話の様子をはらはらと見守る相沢と永徳。冗談を言い合う時間がもったいない。実乃梨のただならぬ雰囲気を電話越しに感じ取ったのか、相手は慌てて実乃梨の質問に答える。



「待って、待って。せっかく電話してくれたのに切らないでよ。用件は、永遠と護衛を回収して欲しいってこと?」


「端的に言うとそうなります。今度の集合場所に連れていきますけど、その後に彼らにも、他の不老不死と同じような救済を施してもらえないでしょうか?」


「いいよお。不老不死じゃないと本当の意味での《《救済》》にはならないけど、実乃梨さんの頼みなら聞いちゃおうかな。その様子だと、護衛さんの婚約者も招待した方がいいみたいだね。おお、今回はずいぶんと賑やかになりそうだ。楽しみに待っているよ」


 相手は、相沢の裏切りを知り、すぐに実乃梨の提案を受け入れる。さらには、永徳のことも調査済みで、永徳の婚約者の招待もしてくれた。実乃梨の考えが読めているかのような対応だった。


「よろしくお願いします」


「いいって。私は世間を騒がす殺人犯だよ。そんなにかしこまらなくていいよ」


 実乃梨の用件は済んだ。電話を切ろうとしたら、相手は相沢と永徳がそばにいることを確信しているのか、二人に話しかける。



「それより、永遠と護衛君もそこにいるんでしょう?あんたたち、ちゃんと集合場所に来なさいよ」


「ええと。その、私は」


「護衛の人も、もちろん来るわよねえ。婚約者も連れてきてね」


「僕は」


 二人は否定の言葉を口にするが、相手はそれを切り捨てる。参加は強制的だと、電話越しにも圧がかかる。


「言い訳無用。では、実乃梨さん、また会うのを楽しみにしているよ」


「私もあなたには興味があります。楽しみです」


 通話はそこで終了した。実乃梨たちは、集合場所に永徳の婚約者も連れていくことになった。




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