31認めたくない自分の気持ち
「永徳さんに婚約者がいるのは納得です。だって、こうして話していると、モテる男って感じがします!こんないい男を女性が放っておくはずがありません!」
「いえ、そんなことはありません。永遠さんこそ、話していてとても楽しいです。永遠さんも男性にモテるでしょう?あなたのことを好きになる人はたくさんいると思います」
「そうですかね。その中に永徳さんは含まれていますか?」
「黙秘します」
「キャー」
車内では、相沢と永徳の楽しそうな会話が耳に入る。永徳が実乃梨と一緒の時とは違い、楽しそうにしている。しかも、永徳はいつの間にか、相沢のことを名前で呼んでいた。そんな様子を見ると心が痛む。実乃梨はその理由に気付いてはいたが、自分の気持ちにふたをすることにした。
二人の会話を聞いていたくはないが、狭い車内ではどうしようもない。しかし、ただでさえ、永徳と相沢が楽しそうに話す様子を見るのが嫌なのに、その会話がどうでもいいことだと思うと、つい会話の邪魔をしたくなる。
「あの、少し静かにしてもらえませんか?そもそも、永徳さんは私の護衛ですよね。護衛が初対面の女性とペラペラ楽しそうに話しているのはどうかと」
気付けば、二人の会話に割り込んでいた。自分の我慢のなさにあきれたが、実乃梨の言葉で自分の立場を思い出したのか、永徳は申し訳なさそうに謝罪する。
「すいません。知り合いの昔の様子と永遠さんが似ていて、つい、懐かしくて会話を楽しんでしまいました」
「私と似ているって、いったい誰のことですか?もしかして、元カノとか」
「さあ、誰でしょうね。ただ、永遠さんに似た彼女はもう」
急に社内の空気が重苦しいものになる。相沢も触れてはいけない話題だったことに気付いたようで、慌てて話題を変えるために口を開く。
「そ、そういえば、先輩、先ほど永徳さんのことをせめていましたけど、それはどうかと思いますよ」
「私は、至って普通のことを言ったつもりですけど」
「護衛の人だって人間ですよ。先輩。いちいち、他の女性と話しているくらいで目くじら立てないでくださいよ。あれ、もしかして先輩。実はもう、永徳さんと……」
『バカなこと言わないで!』
何を言い出すかと思えば、相沢は実乃梨の逆鱗に触れてしまう。実乃梨は車内だというのに叫んでしまった。自分の声だというのに、耳をふさぎたくなる。
「さっきから、能天気に永徳さんと会話して!これは私への当てつけでしょ!」
しかし、一言叫ぶと、今までたまっていた相沢に対する思いが、口から次々と零れ落ちていく。
「ああ、もしかして、あのお手洗いでの申告も、実は嘘だったのね。だとしたら、納得だわ。私みたいな不老不死が嫌いで、それで《《彼女》》が不老不死を殺害していることに共感した。それでどうにかしてコンタクトをとった。《《彼女》》はあなたが使えそうだと判断して、協力を依頼した。それで、ホイホイ私の前に現れたわけね」
「栄枝さん、いったい何を」
『永徳さんは黙って!』
実乃梨の発言に驚いた永徳が声をかけてくるが、その言葉を一蹴する。相沢をかばうかのような発言に思えて、実乃梨の怒りはさらに膨張する。
「おあいにくさま。私は不老不死を楽しんでいるの。だから、永徳さんとは何もないわ。こんなに長く生きて、今更、男と寝て、不老不死を失うわけないでしょ。バカじゃないの、あんた。それに、こんな若造なんて、私の眼中にないわ。私と寝てくれと言われても、こっちから願い下げよ。この世の中に、私に釣り合う男なんて存在しない」
「ば、バカって、それにあの話が嘘って、私は、私は」
「その辺にしてください。詳しい話は実乃梨さんの家で聞きましょう」
いつの間にか、永徳が駐車場に車を停め終えていた。




