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30後輩と護衛の初対面

「そう言うことですから、今週末は予定を入れずにあけておいてくださいね」


「行くとは言っていませんが」


「だから、ツンデレ要素はいりませんって」


 不老不死の救済とやらは、今週末に迫っていることがわかった。自分が不老不死だということ、メモの内容を知らせたかった相沢は、用件が済んだのか個室からあっさりと実乃梨を解放した。


 個室から出た実乃梨たちは、仕事に戻ることにした。事務仕事がメインの実乃梨たちの不在に、他の社員は不審そうにしていたが、相沢が自らの体調がすぐれず、先輩の実乃梨に付き添ってもらっていたことを話すと、あっさりと納得していた。




 仕事に戻った後の相沢は、初日のような社会人になりたての初々しい真面目なキャラに戻っていた。話し方も、ドモリのあるものに戻っていて、相沢の演技力に脱帽してしまう。


「どちらがあなたの素の状態なの?」


「え、ええと、素とはいったい、な、何のことでしょうか」


「別にどっちでもいいけ」


「本来はこっちが素ですよ。本当は人前で話すことが苦手なんです。その辺は、不老不死女性と一緒です。ただし、私が味方と認めた相手には遠慮しないことにしています」


 相沢の中では、実乃梨は彼女の味方という位置づけになってしまったようだ。納得いかないが、ドモリがある話し方をされると、昔の自分を思い出すので、遠慮ない口調の方がいい。彼女の言葉に反論しないことにした。




「この仕事を終えたら、ちょうど定時くらいになると思いますから、もう少し頑張ってください」


「わ、ワカリマシタ。せ、先輩、今日、先輩の家に泊まっても、いいですか?」


 定時に近づき、キリの良いところまで仕事を終わらせるように指示を出す。すると、相沢は返事の後に、面倒な誘いを持ち出してきた。


「私は潔癖症なので、他人を家に泊めることはしません」


「そ、そうなんですか。でも、そこは後輩の可愛いおねだりを聞いて、快く泊めてくれるんじゃないんですか」


 まだ勤務時間中だというのに、砕けた話し方になった後輩の言葉にため息が出る。強引な彼女のことだから、実乃梨がダメと断っても、無理にでも家まで押しかけてくるだろう。



「永徳さんに相談してみます」


 会話をしながらも、相沢はてきぱきと仕事を片付けていく。実乃梨の読み通り、相沢は定時少しすぎには仕事を終えることができた。実乃梨も同じくらいに仕事にめどがついて、同時に仕事を上がることになった。



「お疲れさまです。お先に失礼します」


残っていた他の社員に声をかけてタイムカードを切って会社を出る。外はもう日が暮れかけ、薄暗くなっていた。


「お泊り、楽しみです」


「まだ許可したわけじゃ」


 当然のように、相沢は実乃梨の後ろをついてくる。泊まる気満々の様子だが、もしやと思って荷物を確認すると、仕事用にしては大きなリュックを背負っていた。こうなることは計画済みだったらしい。


「お疲れ様です。おや、そちらの方は?」


「昨日から、栄枝先輩と同じ会社で働くことになった『相沢永遠あいざわとわ』と言います。護衛が付くなんて、先輩って、ぜいたくな身分ですね」


「ああ、新しく入った派遣の方ですね。栄枝さんの家の近くに住んでいるのですか?」


「いえ、今日は先輩、後輩二人きりでいろいろ女子トークをしようと思って。私の家でもいいんですけど、栄枝さん、護衛付きの生活でしょう?だから、いきなり私の家に泊めるのはどうかと」


 そんなことは言われていない。よくもそんな嘘をすらすらと言えるものだと感心する。永徳が相沢の言葉にどう反応するのか見守っていると、永徳は実乃梨の予想を裏切る言動を取り始めた。


「こんなに可愛らしいお嬢さんと一緒に過ごすことができて光栄です。今日は、特別に私も栄枝さんの部屋に泊まりましょう」


 永徳は相沢の手を取り、実乃梨がいつも送迎してもらう車のドアを開けて中に入るようエスコートする。


「え、永徳さん!」


「エイトクさん、というのですね。もしかして、エイという字は永遠の永ですか?そうだとしたら、これはもう、運命に違いありません。私の名前にも『永』という字がつくんです。永遠えいえんとかいて、『とわ』と読むんです!」


「では、とわさん、栄枝さんの護衛として、今夜はよろしくお願いします。さあ、栄枝さんも早く車に乗ってください」


 今の状況が理解できず、目を白黒させていると、永徳がまるでおまけのように、実乃梨に車に乗るよう促す。とりあえず、家に帰ることが先決だと思い、実乃梨はおとなしく車に乗り込んだ。



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