19新たな封筒
家に帰ると、実乃梨は服も着替えず、カバンから黒い封筒を引き出しから取り出す。
最初に黒い封筒が届いてから、すでに一週間以上が経過していた。中に入っていたメッセージカードの裏の電話番号に記載された番号に電話したのもその日なので、そこからも同じだけの日数が過ぎていた。実乃梨は引き出しの中から、最初に届いた封筒を取り出し、二通の黒い封筒をベッドわきに並べる。
「結局、行かなかったけど……」
ベッドに腰かけて二通の封筒を眺めるが、不意に思い出したかのように、スマホで目的のメッセージを探し始める。スマホの画面には、一通のショートメールが映し出された。不老不死連続殺人の首謀者だと思われる『ドン・ハーモニー』と名乗る人物から送られてきたものだ。
不老不死からの救済を望むなら、メッセージに記載された場所に行けばよかった。しかし、実乃梨がその場所に赴くことはなかった。指定された場所に行かなかったにも関わらず、相手からは今日まで何も連絡がなかった。しかし、今日新たに二通目の封筒が届いた。実乃梨が連絡をしなかったから、あきらめたのかと思ったがそうではなかった。しかし、あきらめてくれたとしても、実乃梨は安心できなかった。
「私以外の別の不老不死の女性が殺された」
それはまるで、実乃梨が指定場所に行かなかったことに対しての見せしめであるかのように。
不吉なことが頭に浮かぶが、すぐにそんなことはないと自分の考えを否定する。取引先の女性が殺されたのは、犯人から指定された日時より前だった。実乃梨が犯人に電話したその日に殺害されたのだ。
これは偶然だろうか。標的を決めて電話した直後に、あらかじめ決めていた標的を殺したのだと言われれば、辻褄はあう。不老不死をこの世界からなくしたいと言っていた言葉は嘘ではなかったのだろう。だからこそ、犯行予告と殺害を同時に行っている。しかし、それだけではないような気がした。
改めて、黒い封筒とスマホに送られたメッセージを見比べる。そこで、あることに気が付く。
「具体的な日時が記載されていない……」
メッセージには『次の週末』と書かれていたが、詳しい日時が記載されていなかった。本当に救済を得たいのならば、詳しいことは電話しろということだったのだろうか。そんな大事なことに今まで気付かなかったことに、実乃梨は自分の愚かさにあきれてしまう。
「とはいえ、犯人はよほど、私にご執心のようね」
犯人は、実乃梨が週末を過ぎても連絡してこないことにしびれを切らしたのか、今度は別の方法で黒い封筒を実乃梨に送りつけてきた。
護衛が付いたことはばれてしまったのだろう。新たに黒い封筒が実乃梨のもとに届いたが、その封筒は会社の実乃梨の使用している机の引き出しに入っていた。
「犯人は護衛の目をすり抜けて、私の会社に入り込むことができる人物」
そうは言っても、実乃梨はこうして今も、殺されることなく普通に生活を送っている。犯人は何がしたいのだろうか。不老不死からの救済、地獄からの解放と言っていたが、それはどう意味だろう。




