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15社長の提案

「顔が真っ青だけど、何かあったのかい?」


 実乃梨が事務所に戻ると、社長が自分のイスに腰かけて待っていた。実乃梨の顔を見るなり、心配そうに問いかける。


「いいえ。ただ少し、同僚と話していたら、気分が悪くなってしまって」


「それは大変だったね。申し訳ないが、もっと気分が悪くなる話を今からしてしまうかもしれないが、聞いてほしい」


「ワカリマシタ」


 場所を変えようと言って、社長は会議室の一室に実乃梨を案内した。二人きりになると、さっそく用件を切り出してくる。



「昨日の夜、浜永商社の女性職員が殺害されたのは知っているよね」


「ハイ」


「そのことで、私に商社の方から連絡があったんだよ。栄枝さんが電話を受けてくれたと思うけど、その内容が」


 実乃梨が予想していた内容を社長は語り始めた。しかし、先ほどまでのように急に呼吸が苦しくなることはなかった。予想していたことなので、話を聞いても思っていた以上に冷静に言葉を返すことができた。


「私が次の犯人の標的になるということですよね」


「まあ、そう言うことになるよね。だから、しばらくの間、一人で行動しないようにして欲しい。確か、栄枝さんは一人暮らしだったよね。本当なら、誰かの家に泊めてもらうとかした方がいいと思うけど」


「私を泊めてくれるような人はいません」


 社長は、実乃梨が自分が話す内容を知っていたことに驚くことはなかった。そのまま話を続けるが、その言葉に実乃梨はすぐに返答する。


「失礼な質問をしてしまったね。それはわかっていたから、一人暮らしはそのまま続けてくれて構わないよ。ただし、危険が迫っているとわかっている人をそのまま放置するわけにはいかない。だから、犯人があきらめてくれるまで、栄枝さんの護衛をつけることにした」


「ご、護衛ですか?」


 話が大げさになっている。一人で過ごさない方がいいと忠告されるのは予想できたが、護衛をつけられるとは思ってもみなかった。しかし、そんなことをしてもらう資格などない。不老不死のため、長く生きすぎた実乃梨は、元々の自己肯定感の低さをさらに極めてしまった。私のために護衛なんかをつける価値はない。本気でそう考えている実乃梨は、どうやって断ろうかと、気分が悪い中、懸命に頭を働かせる。


「女性が狙われているとわかっていたら、護衛をつけるのも不思議ではないだろう?」


「女性、確かに私は女性ですが、護衛はいりません。社長もわかっているでしょう?私たち不老不死は文字通り、不死の身体です。たとえ犯人に致命傷を負わされても死ぬことはありません。護衛をつけるだけ、無駄かと」


「そうは言っても、実際に不老不死の女性たちは殺されている。違うかい?」


「ですが」


「言い訳は不要だよ。これは社長からの指示だ。素直に従ってもらうよ」


 実乃梨の反論もむなしく、社長の一存で実乃梨に護衛がつけられることになった。




 護衛についてはなるべく早く実乃梨につけるということだが、さすがにすぐにとはいかない。護衛をつけることにしぶしぶ納得した実乃梨に、社長は一つの質問を投げかける。


「ところで、栄枝さんの元に、不審な電話や封筒はなかったかい?」



「……いいえ、ありません。不審なことは何一つ起こっていません!」


「それは不審なことだらけだと、解釈してもいいのかな?」


 とっさに嘘をついてしまったが、社長には嘘がバレバレだったようで苦笑されてしまう。子供じみた回答をしてしまったことに気付いたが、言葉を戻すことはできない。


「まったく、嘘はいけないよ。不審な電話がかかってきたことは私にも報告が上がっている。うちの電話、いや今時の電話には、録音機能がついているからね」


 実乃梨宛に不審な電話がかかってきたことはすぐにばれてしまった。しかし、封筒についてはごまかせるだろう。


「不審な電話はかかってきたことは認めますが、封筒は届いていません。黒い宛先不明の謎のメッセージが書かれた、電話番号と集合場所が書かれたメモなんてもらっていません!」


「栄枝さんって、本当に不老不死なのかわからない時があるよね。面接の時も思ったけど、人より長く生きているとは思えない発言を時々するよね」



 社長のツボに入ったのか、しばらくの間、彼は腹を抱えて全力で笑っていた。なすすべなく、笑いが収まるまで、実乃梨は会議室から出ることができなかった。



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