後日談
婚約してから、ローズは時間さえあればノワールにくっついている。
ローズ曰く、『これまで我慢していた分』とのこと。
しかしノワールには教員としての職務もあるため、何時如何なる時も一緒ということはない。それ故にローズはノワールの準備室に入り浸るようになっていた。居心地がいいと意見があうのも兄妹故か。
「………で、また何で俺を呼ぶんだ?」
「そうですノワール様。夫婦水入らずでゆっくりとした時間を過ごしましょう」
「………まだローズは婚約者ですよ。これから夫婦となっていくんです」
呆れた様子の、されど『ゆっくりとした時間を過ごしましょう』の部分は否定しないノワール。それもそうだ。これから行われるのはささやかな御茶会なのだから。
「むぅ……『これから』って、私達の関係を肯定してくれたので許してあげます」
「ありがたき幸せ……さあどうぞ。粗茶ですがお口に合うと幸いです」
ノワールはそう言って三人分の紅茶を淹れる。言うまでもなくカップは高級なそれであり、グリは躊躇いながらも口をつける。風味からして良い茶葉であることが窺え、ほどよい清涼感のあるこの茶をグリは満更でもない様子で二口飲む。
「東洋から仕入れた茶だから飲み馴れないものだとは思うけど、グリの口にはあったようだ」
「ああ、スーっとした感じが好きだな」
「……ちょっと飲みにくいですわ」
「初めて飲むとそういうものです」
馴れるとこの清涼感もいいものですがね。そう言って彼は一口飲む。その姿も様になっており、ローズは思わず見惚れ、グリは学生時代に戻った気分になった。
「……そう直視されると居心地悪いんだけど」
「ノワール様が綺麗な所作で飲むからです」
「同じく」
即興とは思えない、息の合った二人の様子に、ノワールは内心で「やはり兄妹なのだな」と苦笑をこぼす。
「ローズもこれくらいなら出来るでしょう。私より上手かったと記憶していますよ? グリは……まあ今後も社交界には出そうにもありませんし、問題はなさそうですが」
「それ暗に俺をディスってない? ディスってるよな?」
「私なんてノワール様と比べればまだまだです」
半泣きで訴えるグリと、そんな兄の様子を脇目も振らずに謙遜するローズ。
やはりこの兄妹は見ていて飽きない。
ノワールがそんなことを思った、昼下がりのささやかなお茶会のこと。
これで完結──としたいのですが、私は満足していないというか第七話 (番外編その2)を書き始めたのでそれを書いたら本当に終わりにします。




