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明日のうたが聴こえる2  作者: 人見くぐい
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36 秋から春にかけての出来事

10月にあった九州への修学旅行も無事に終わり、手元にその写真がやってきた。写真を眺めつつ色々と思い返す。

中学生の時と違い班長ではなかったので気楽に楽しめた旅行だった。グループはいつもの二人と一緒だったし、レイ君も一緒だった。

さすがに今回はレイ君の具合が悪くなる事はなかった。もしなったとしても、私がついている必要はないけど。

さり気なく並んで歩く二人を見ていると同じクラスだというのが羨ましくなる。

そして一度、何の打ち合わせもしてないのにメンバーが揃った時があった。写真部がその場面を撮っていて、売り出したときに一番予約が殺到したそうだ。


今年の後半は天皇のご病気で世の中全体が自粛ムードになった。バンドコンテストもいくつか中止されてしまった。

クリスマスですらどこか地味な感じだ。だけど私達は元から派手な事はしないので去年と同じささやかに過ごした。

手編みのセーターは挫折してしまったけど。


年が明けて一週間で年号が変わってしまった。

「なんだか不思議な感じ」

「そのうち慣れていくよ」

私がそう言うと新聞の号外を読んでいたお兄ちゃんが答えた。


世の中が徐々に落ち着いていくと共に、自粛で減っていたコンテストが復活し始めた。

春休みになった事もあって大小問わず参加した。どんな小さなコンテストでも決して手抜きせずに全力を尽くす。だからこそ上位入賞の常連になったのだろう。

この頃になるといくつかの会社から声を掛けられていた。しかし全員が進学を希望していたので全て断わってしまった。カズ君も表向きは大学を受験する事になっている。

「カズ君だけでも話を聞いてみたら?」

「僕はまず裏方の仕事をしようと思う」

バンドについてライブの手伝いなどをするらしい。

「安住さんがそれをもう始めているんだって」

たしか何かの専門学校へ行ったのだが辞めてしまい、その仕事をしているそうだ。

バンドの先輩がいると色々情報が入ってくる。


しかし新学期が始まる前、カズ君は両親に卒業後の事を打ち明けたが……。

「予想してたけどね」

顔にアザを作ってきて、そこをさすりながら笑う。やはり猛反対されたのだ。お父さんには殴られ、お母さんには泣かれたらしい。

「説得は続けるよ。だけど反対されても決心は変わらない」

私はカズ君の頬へそっと静かに手を当てた。

「出来れば納得してくれたらいいね」

「……うん」


もちろん数日で解決はしなかった。長く対立した状態だったけど、事態が動いたのはタカ兄ちゃんの言葉だった。

『野球も音楽も先の不透明さは同じだ。だからカズへも同じく応援して欲しい』と、カズ君を援護してくれたそうだ。詭弁のようだが両親はそれで折れた。

「野球だってケガすれば終わりさ、って言ってた。シャレにならないよ」

そう言いながらも感謝しているようだ。何も援助はいらない、という条件も決意の固さととってくれたらしい。

こうして大賛成……とはいかないが、晴れて了解は得られた。


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