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明日のうたが聴こえる2  作者: 人見くぐい
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38/59

37 3年生

文系・理系の変更がなければ3年生に進級してもクラスはそのままだ。

私達のクラスは文系の進学クラスで、全員が何かしらの学校を受験する。

私もいくつかの志望校を決めた。どれも東京にある短大だ。担任は『せっかく四大も十分狙えるのに』とこぼしていたけど。

学校へ行って資格は取りたいが早く働きたかった。学生であれば時間的な余裕はあるけど金銭的な余裕がない。ただ『頑張れ』と言っているだけではダメだ、と思ったからだ。

「それって辻村君がヒモになるって事?」

私の進路理由に中里さんが真顔で聞いてきた。

「そんなんじゃないもん」

「冗談だって~ゴメンね」

私は少しムッとしたが、中里さんは手を合わせながら謝ってきた。

「リューちゃんは鳴海君を支えてあげないの?」

「そうするつもりだけど、家からは出られないな」

竜岡さんもお家の保育園を手伝うために短大進学を希望だが、家から通える所だという。一人娘だから仕方ない。


カズ君の進路を聞いたレイ君は「そう……」と言っただけだった。長年一緒にいて少し冷たい反応のように見える。だけど何か思う事があったようだ。

この話の後にレイ君は受験勉強の忙しい中で曲を作った。

バンドでは初めてのバラード。

そしてこれも初めての事だが、作詞をカズ君に頼んできたのだ。しかもバラードなのでラブソングだと指定されて。カズ君は初め渋っていたけどそれでも引き受けた。

頭を抱えながら何度も何度も書き直し、ようやく形が見えてきたのは夏休みになってからだった。

「まぁ、まだ間に合うだろう」

「その曲、文化祭で披露するの?」

「そうだな。最後にもってこようかと思う」

私の質問にレイ君はそう答えた。

「文化祭かぁ。3年生になってライブが聴けるのは少なくなったから楽しみ」

カズ君以外が受験のためコンテストは4月から出場してなかった。出場するのは夏休みに一つだけ。そして文化祭で活動に一区切りをつける事が決まっていた。


夏休みに出場した最後のコンテストは全国大会のある大規模なものだった。

事前にあった地方予選決勝の上位3組が東京での大会へ出場出来る。

予選1位、決勝2位と決めたRIZEは初の全国大会進出を果たした。演奏出来るのはただ一曲。もちろん、オリジナル曲での勝負だ。

全国から集まるとなると、また一段とレベルが高い。RIZEはその中でも全く引けを取らず、堂々と演奏した。

そして結果は……残念ながら入賞にはならなかった。

それが分かった瞬間、レイ君は悔しそうな顔をしたけど、カズ君に何か耳打ちされると大人しく表彰式で拍手を送っていた。

「僕だって悔しかったよ」

後でカズ君がそう言った。

「だけど僕達程度のレベルなんて、ザラにいるんだって事が分かって良かった」

練習を重ね実力をつけた、と思っても世間は広い。

「だから気を引き締めないとね。練習も今まで以上に頑張らないと」

と、カズ君は決意を新たにしていた。


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