30 コンテストへ挑戦(1)
入学式も終わりバスケ部にも新入部員がきた。人数は多くないが中学の後輩や大会で活躍した子がいて今年は楽しみだ。
反対に野球部は人気があって入部する人が多いし部員数も多いのだが、その中でカズ君は今年ベンチ入りをしていた。
アルバイトやバンド活動もしていているのにレギュラーは凄いと思う。特にバンドは初めてのコンテストで練習が多くなっているので尚更だ。
「もう来週だね」
「うん、楽しみだけど怖くもあるかな」
「楽しみな気持ちがあるなら大丈夫だよ」
「そうかもね。とにかくいつものように全力でいくだけだ」
カズ君はほんの少し不安を口にしたけど、その後の笑顔を見て大丈夫だと確信した。
コンテストの当日、私は準備要員ではないがレイ君の家へ出向いた。
「緊張するね~」
「運転が?」
お兄ちゃんも一緒だ。今回もレイ君のお父さんの代わりに器材を運ぶ車の運転をする。
ドラムは一部分とはいえ、結局色々と荷物があったので頼んだのだ。
「おはようございまーす」
おばあちゃんがお店の前を掃除していたので元気よく挨拶をした。
「おはよう、美紀ちゃん。お兄さんもまた無理言ってごめんなさいね」
手を止め挨拶を返してくれたけど声に元気がなかった。
「お身体の加減でも?」
「いいえ、何でもないの」
否定はするが無理して明るく答えているみたいだ。
「レイ君はどこに……」
そう言いかけた時、車庫の方から人影が見えた。
「おはよ……」
レイ君が現れたのだがその姿を見て絶句した。
それはそれは見事な金髪になっていたのだ。
レイ君は元々地毛が明るい茶色なせいか、透明感のある綺麗な金色だった。
そして肌も色白く、瞳の色も明るい茶色なので全く違和感が無い。むしろ中性的な顔立ちが強調されて、びっくりするほど『美人』だった。
ただ田舎なので少し脱色して茶髪になっただけでも不良扱いなのだ。おばあちゃんはレイ君の髪を見て心を痛めていたに違いない。今も悲しそうな顔をしている。
「徹さん、よろしくお願いします」
レイ君は平然とお兄ちゃんに挨拶をした。
「任せとけ」
お兄ちゃんも何事も無いかのように返事をするが、すぐにおばあちゃんへ向き直った。
「彼らの音楽、凄く良いんですよ。聴いていてとても惹かれます」
おばあちゃんは一瞬戸惑ったようだけど、褒め言葉に表情が和らぐ。
「今日はコンテストなので出場するからには少しでも良い評価を得たい……彼らはそれだけ真剣です」
落ち着いた口調で丁寧に説明するお兄ちゃんはまるで先生のようだ。お兄ちゃんの言葉に頷くおばあちゃんに、もう悲しげな様子は感じられない。
「ただ、上手い奴等が集まるので外見のインパクトも必要な手段なんです。驚かれたと思いますが、どうか心配なさらないで」
おばあちゃんが完全に微笑みを取り戻したのを見て私も安心する。さすがお兄ちゃん、教師を目指しているのだけの事はある。
「ちゃんと戻すから」
レイ君も横を向きながらも、やっと一言言った。




