23 バレンタインデー(1)
冬休みが終わり成人式を過ぎると、バレンタインのチョコが店頭に並び始めた。
(年々早くなる気がする)
それらを眺めながらそんな事を思う。
チョコをあげて始めてから何年も経つけど、今年はカズ君に対して義理チョコではない。しかし私は先に宣言した。
「バレンタインは手作りじゃないの、ごめんね」
「そんな事は気にしないって。美紀ちゃんも今バスケが大事な時でしょ」
「う、うん」
カズ君は笑って答える。しかし本当の理由は違う。私は料理も苦手なのだ。
家でお菓子を作る習慣もなかった。オーブンすらないので一度休み中に竜岡さんの家で練習してみたのだが……。
「今回諦めた方がいいよ」
「クッキーでコレね」
初めて作ったクッキーは大失敗だった。
「こういう弱点があったんだ」
焦げたクッキーをつまみあげ、中里さんは言った。
「辻村君は食べそうよ。愛の力で」
竜岡さんは笑うけど私は笑えなかった。確かにカズ君なら食べてくれるだろうが、お腹を壊すかも知れない。
後片付けの後、お茶をしながら反省会をする。
「チョコを溶かして形を変えるのは? これで失敗なんて有り得ないわ」
「確実に湯煎のお湯を混ぜこんだうえに、型からこぼすね」
二人は勝手に言うが全く否定出来ない。
「私達の手は借りずに一人で作りたいんでしょ?」
竜岡さんが私の目を覗き込んで聞いてきた。
「うん」
「今からじゃ時間がないし、来年までの課題だね」
「……うん」
来年までに出来るようになるだろうか?
「二人はどうするの?」
私は話題を変えるため二人に質問した。
「全部義理」
中里さんは即答した。お兄ちゃんにはあげないようだ。
「竜岡さんは……」
レイ君に、と続けようとしたけど何故か続かなかった。
「どうしようかしら」
「あげないの?」
「まだそこまでの手応えがないのよね」
レイ君は他人と壁を作る、という事を実感しているそうだ。しかしそれを感じられるというのは、ある意味レイ君に近づいてきたのではないだろうか。
「時には強引さも必要だけど、まだ早いかな」
「ぷっ……」
「あはは……」
私と中里さんは顔を見合わせて同時に笑った。なんだか大人な意見だ。
首を少し傾げて微笑む竜岡さんは今までの友達の中では一番美人さんだ。しかし意外にも冷静な突っ込み役だったりする。
そうかと言って冷たい性格ではなくて、今日のように手助けをしてくれるのだ。
竜岡さんのために私が出来る事はないだろうか。でもそう思う一方で行動出来ない自分がいた。どうしたらいいのか分らない、というのもある。だけどそれだけではない。
「もう少し考えるわ」
「それがいいね」
和やかにお茶を飲みながら話す二人を見ていると、この微かな心の曇りを言い出すことが出来なかった。
チョコは義理とカズ君の分を用意した。
義理はいつもの板チョコ。カズ君へは竜岡さんお薦めのお菓子屋さんの物だ。
結局助けを借りてしまった。同じ女の子なのに私はこういう事も疎くて、軽く自己嫌悪に陥る。




