第28話 ホルモンの奴隷たち
いつか竜さんが言っていた。男も女もホルモンに支配されるホルモンの奴隷であると。
性的興奮により男はテストステロン、女はエストロゲンがドーパミンと共に大量に噴出され、快楽のため自我を消失してしまう。
聞いた当時は俺が無知なのをいいことに大袈裟なと思って話半分くらいに聞いていたものだが、今はそんなことを思い出すこともない。
俺とシオリはホルモンの奴隷に成り下がっていた。奴隷になることの快感と幸福感たるや凄まじく、俺の性的興奮をシオリは美味そうに飲み、シオリの性的興奮を俺も喉を鳴らして飲んだ。俺の興奮は増幅されていく。脳が溶ける。
言語化するとしたら、極限の空腹時に高級な和牛を口に入れたその一口目の快感を何倍かに濃縮し継続的に脳に注入されていく感覚。何故人間が異性を求めるのかの根本がこれだと本能で理解させられてしまう。
何分経ったろうか、シオリはその快感をもう何度も経験しているだけあり息を荒げながらも俺のズボンを擦る手を止めた。
「はっ、あっ」
俺は何故やめるんだ、と言いたげな快感と哀願が混じった目でシオリを見る。
「もうだめ、ここカラオケ」
息を荒げたままシオリは返した。
俺はシオリの手を取り、受付でチェックをして歩いているのか走っているのかもわからず街へ出た。
目的地を言わなくてもシオリも同じ速さで同じ方向に動いていた。




