第2話 藁
「はい、聞きたいです」
二十二年間俺を苦しめたこの呪いから解き放たれる答えがあるなら、と藁にもすがる思いであった。同時に竜さんが俺の何を見てそんな事を言ったのかに興味もあった。
「はい、とりあえず付け出しとビール。わかっちゃえば簡単なことだけどさ、」
竜さんはカウンターから歩いてきて俺の背中をポンと軽く叩き、
「猫背。女の子は顔とか服装とかより、まずこういうとこ気になるんだよ」
と、見た目とはギャップのある柔らかな笑顔で言った。その一言を聞いた時、ああ、この人の言う事は聞いたほうがいいかもしれない、そんな気がした。
確かに俺は昔から猫背で、親に注意されたことは幾度となくあった。大して気にも留めていなかったのだが、言われるまま背中を前に押し出し真っすぐ立ってみた。
「こんな感じですかね」
「ほら、良くなった。あと眉毛もさ、周りの産毛剃るだけで印象変わるよ。」
その後フライを何品か頼み他愛もない話をしているうちに店も忙しくなり、礼を言って帰った。店に入る前の怒りは、フライと一緒に知らぬ内に腹に収まってしまった。
帰り道、忘れないように顔用カミソリをドラッグストアで買って帰った。
週が明けて、バイト先のよく一緒になる高校生の女子に彼女が出来たのかと聞かれた。先週振られたばかりなんだよこの唐変木が、などと思っていたが、彼女はふーん、なんかちょっと今日違うなって思って。と言った。
本当にそういうところは見られていた。




