お互い様ね、使い魔ズ!
エレオスは船着き場の方に行って船が出るかを確認しに行った。そしてボクとドロースとマーガレットは静かに彼を待っていたのだが、だんだんマーガレットがうんざりしたように溜息をつき始めた。
たしかにエレオスがとても遅い。いつまでおしゃべりをしているんだろうか、少し船が出るかについて質問すれば戻ってこられるはずなのに。
そう思っているうちに苛立った様子のマーガレットが口を開いた。
「私は様子を見てくるから、あなたたちはここで待っていて」
ボクはそれに頷き、大人しく二人が戻ってくるのを待つことにした。
ところでサロモン。あのマーガレットって子、エレオスの支配下から抜け出したとか言ってたわよね。もしかして、あの子にヒントを貰えばうまいこと逃げ出す手段を手に入れたりできるんじゃないの?
ああ、確かに言ってた。でもエレオスも馬鹿じゃない。マーガレットと同じ手段で逃げ出そうとしたらきっとあっけなく対策を取られるだろうし……。
それにドロース、何のために逃げ出すんだ?
何のために逃げ出すのか、そんなサロモンの問いかけにアタシは若干眉を寄せた。
逃げ出すのに理由なんて必要だろうか。自由になりたいというのは当然の意志なんじゃないの?むしろなんで逃げ出さないの?
だってエレオスはボクのことを大事にしてくれるし、別になんの不自由もしてないし……。使い魔って言ったってこき使われてるわけじゃないじゃないか。
確かにそうだけど、使い魔って立場ムカつくじゃない。
それに別に、アタシだってアンタみたいなガキくらい守れる。身体を共有してるわけだから嫌でもアンタのことは大事にしなくちゃいけないの、アタシは。
だけどエレオスにそんな動機はない。ただアンタのことがお気に入りってだけで、いつか飽きられたらポイって捨てられかねないじゃない。それなのにこんなところでぼんやりしてアイツの犬に成り下がるとか……ダッサいんだけど。
たしかに、見下してた悪魔の契約者から使い魔にまで成り下がってしまったボクも、そのうえその状況に甘んじようとしてしまっているのも滑稽だ。
でもドロースにそんなことは言えないんじゃないか?お前だってボクのことを見下してたくせに、ボクと離れることよりもエレオスから逃げることを優先してる。それにボクのことを守ろうなんて言ってるじゃないか。倒錯してダサくなってるのはお互い様だろ。
……そう言う割にアンタの心がモヤモヤしてんのもアタシには分かってんのよ、ホントお互い様ね。色んな気持ちが、立場が、矜持がバラバラになって溶け落ちてる。二人して自分などんな存在だったのか分かんなくなっちゃって、随分お似合いみたいじゃない?
そんなことを笑み混じりの声で頭に響かせるドロースに、ボクは目を伏せた。
同時に、背後に気配を感じた。
「随分と悩んでいるようだな、サロモン」
低い声がそうして鼓膜に触れた。




