礼拝するわよ、この悪魔!
教会に辿り着くと、既にそこには信者たちが多くやってきていた。僕たちは多少身体が重たくなるような空気感に圧倒されてしまわないように一つ息を吐く。
マーガレットにも少々表情に曇りが見える。男を平然と騙す女狐のような演技力も、やはり今日の彼女には発揮しきれないかもしれない。
「辛かったら言うんだよ、最悪撤退してもいいから」
そう告げると、彼女はすぐにこちらを見上げ、僕に対して今まで見たこともないような柔らかい表情で微笑んだ。
「大丈夫ですよ、エルお兄様」
僕の見当は間違っていたようだ。今日も彼女の演技力は健在らしい。その様子に安心して僕も微笑み返すと、彼女に歩幅を合わせて僕たちは教会の中に足を踏み入れた。
やはり教会の中まで入ってきてしまうと、空気は更に重たくなる。神聖な気配にずしりと身体が痛くなる。本当に魔法なんて使えそうにない。そう思いつつ僕はあの祓魔師とサロモンを目で探した。
二人はとても簡単に見つかった。礼拝堂の最前列、一番神父の用いる台に近い座席に陣取っている。この位置からなら二人の後ろに腰を下ろすのが妥当かもしれない。
そう思って僕たちが足を進めたところ、別の連れ立った家族が二人の後ろの席に座ってしまった。二人の後ろにはそれ以上の席もないので、まいったなと思って眉をひそめる。
こうなると空いているのは二人の隣の席だ。鍵を盗むのならば祓魔師の隣がいいだろう。少々リスキーだけど仕方ないか。
「マージ、彼の鍵の場所は」
変な動きを無駄にして気が付かれるのは困る。手っ取り早く仕事は終わらせてしまいたいので、僕は少しマーガレットに身を寄せてそう質問した。標的が決まっていた方が決着をつけやすそうだ。
マーガレットも同様に僕に僅かに身を寄せ、祓魔師を見つめながら答えた。
「腰から取り出してた」
僕はその言葉に小さく頷き、彼らの隣に歩みを進めた。無事に祓魔師の隣の席に腰を下ろしながら、僕は愛想良く微笑む。
「おはようございます、いい朝ですね」
すると彼はサロモンと似たような面影を持った瞳をこちらに向けた。理知的で凛とした、真っ直ぐな瞳。サロモンの僅かに憂いを帯びたそれとは違った光を帯びている。僕はその瞳の奥を覗き込んで目を細めた。
彼は髭に縁取られた口元に笑みを浮かべ、愛想のいい表情を浮かべた。
「おはようございます」
対して、その隣に座るサロモンはこちらを見て目を丸くした。僕は彼に対しても、初めて出会った小さい子供にするように微笑んでみせた。しかし彼は、僕に怯えたような顔を見せる。それに僅かに表情が曇ったような自覚をして、僕はすぐに表情を繕い直した。




