今回限りよ、この悪魔!
服の調達や段取りの計画を立てているうち、日は沈み夜は明け、日曜日になった。
中流貴族風のひらひらしたシャツに流行りのコートを着て、髪を丁寧に固める。マーガレットには歩きにくすぎない程度にふわふわしたドレスを着せ、顔が見にくいように大きな帽子をかぶせる。こうして見た目の支度は整った。
僕たちは年の差が三つある兄妹で、兄である僕はエル、妹である彼女はマージという愛称で呼び合う。僕たちには仕事熱心な煙突掃除屋の父と、料理の得意な優しい母がいるということになっている。そして僕らはその間に生まれた長男と長女であり、下には三人ほど弟妹がいる。
掃除の腕を買われた父は母を連れて別の街に行っており、弟妹は今は具合を悪くしている。父の仕事が上手くいくこと、弟妹の病気が早く治ることを祈りながら神に礼拝をしに来た。
マーガレット……いや、マージにはとても嫌そうな顔をされたけれどそんな設定も完璧に作った。これで教会潜入に穴は無いはず。
「常に気を張ってね。聖気に呑み込まれたら最悪そのままパッと……消えちゃったりするかもしれないから」
僕がそんな忠告をすると、マーガレットは一瞬怯んだように見える。しかしすぐにその表情も平然と取り繕い、小さく頷いた。
「こんなところで死んだら未練が大きすぎて悪霊になって彷徨い続けるわ……分かってるわ、そんなこと」
「教会で悪霊になったら即祓われちゃうよ」
彼女は僕を冷たく睨んだ。言葉にはしてなかったけど"そういうことは話してないわ"とそっけなく言われた気がする。
マーガレットもドロースと似たようなところがあるように思う。しかし彼女はむやみに上品だから、率直に物事を言うドロースよりも冷たく感じてしまう。こういう女の子はどうやって扱えばいいんだろう。褒めても胡散臭がられそうだしなぁと思いながら、取り敢えず僕は苦笑いを返した。
「とにかく行くなら行きましょう、エル。……こう呼べば満足なんでしょ」
結局僕の作った設定に付き合ってくれるらしい彼女に、僕はにっこりと微笑んだ。あんなに嫌そうな顔をしていたのにそうして付き合ってくれるあたり、やはり何だかんだで優しい子なのかもしれない。僕の作った小悪魔だし、その程度の慈悲は引き継いだのかな。
「うん、行こうか。マージ」
彼女はいかにも興味なさそうに冷たい目を向けていたものの、僕のその呼び名に対してはにっこりと愛想よく微笑んだ。彼女の演技はどうやら今始まったようだ。それを頼もしく思いながら、僕たちは教会へと繰り出すことにした。




