事前準備よ、この悪魔!
結局、礼拝中に冥界の鍵を頂くというのが僕たちの作戦の大筋になったわけだ。
そして今日は土曜日だから、僕が簡単な算数の能力を欠いていなければ明日がちょうどその日曜日だ。
サロモンにかけておいた魔法はまだ解けないはずだし、彼は礼拝の途中に僕たち悪魔に対して手荒な応対はしないだろう。そこに漬け込ませてもらって、彼の手からそっと鍵を掠め取る。もちろん細かい所の調整は必要だけど、割と見通しのある策だ。
ただし、教会の中は彼にとっても戦いづらいが僕たちにとってもそうだ。その所以はあの場所の聖気にある。
信仰の本拠地である教会を、しかも日曜日の礼拝の時間を狙って訪れるなんて悪魔からしたらほとんど自殺行為だ。
僕は確かに元天使だし、清らかで神聖な空気に対して多少の免疫のようなものはある。マーガレットも僕の生み出した小悪魔である以上同様だろう。もちろん多少僕よりそれは劣るだろうけど、少なくとも教会の中で失神したり体調を崩したりはしないはず。とはいえやはり魔法はきっと使えないと踏むのが妥当だろう。
魔法無しで、彼の手から泥棒を働かせて頂く。何にしてもその作戦はしっかり考えなくてはいけないな。そう思いながら僕は顎に手を当てて少し思案を巡らせた。
「礼拝中を襲うとして、私は何をしたらいい?既に顔が割れているからできることなんてきっと無いけど」
たしかに、顔を知られている彼女はあまり役に立たないかもしれない。が、そう語る彼女はまるで仕事が減ったのを喜んでいるようにも見える。もしかして最初からそれ目当てで礼拝時を襲う作戦の方を取ったんだろうか。
「そうだね……それじゃあ、君にはサロモンの保護をお願いしようかな」
元々僕の庇護下に置いてあげるという約束だ。さすがになんの仕事もしない悪魔を守ってあげるのはあまりメリットがない。
それに彼女はずる賢い……いや、強かな小悪魔だから、僕が美味しい脛の持ち主だと悟ればこれから度々食い荒らしに来てしまいかねない。そうなるのは不本意なので、僕は彼女に仕事を与えることにした。
彼女は僅かに嫌そうな顔をした。
「保護って言っても、どこにいるのか分からないわ」
サロモンは悪魔を身体に宿しているわけだから、きっと礼拝に来るのは難しい。家で留守番をしている可能性というのも一つだろう。しかし悪魔祓いを行うとしたら彼らはドロースを弱らせるために教会へやってきて礼拝をする可能性もある。どちらとも言えないが、取り敢えず彼らの安全を確保してほしい。
「教会にいたならそこで。もしもいなかったらサロモンの家……この街の住宅街に隠れたプロテスタント教会を見つけて。そ子にも見つけられなかったら魔法で探してくれると助かるよ、僕と同じ魔力の気配をたどれば多分わかるから」
そう告げて僕は小さく頷いてみせた。マーガレットも取り敢えず頷いた。
あの祓魔師とサロモンを引き剥がし、冥界の鍵を手に入れてしまえばもはやこちらのものだ。可愛い使い魔たちは以前同様僕のものだし、彼女も安全を得られる。
そうしてうまくことが運ぶことを祈りながら、僕たちは支度に取り掛かり始めた。




