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お慈悲をください、悪魔さま!  作者: 真坂凜子
郷愁と死の狭間で
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いざ取引だ、この悪魔!

 代わりに協力してもらうという言葉を聞いた矢先、彼女の顔は曇った。眉をひそめていかにも嫌そうな顔をしながら、目を逸らしている。けれど観念したのか溜息交じりに僕と目を合わせて小さく頷いた。


「手伝うって、何を?」


 良い質問だ。マーガレットがとりあえずこの取引に乗ってくれたことににっこりと笑顔を浮かべては、早速説明を始める。


「まず、君が僕を追ってきたおかげで祓魔師も自然と僕を追いかける形になっていただろう?たまたま今日、僕の可愛い使い魔が昔の仕事場に戻ってきてたんだけど……」


使い魔という言葉に彼女はあからさまに眉をひそめたが、僕は続けた。


「多分その祓魔師とばったり遭遇しちゃってるみたいでピンチなんだよ」


 とりあえず話の内容は見えたらしい。あまり彼女にとって不都合な話でもないし、ひとまず納得した様子でマーガレットはこくこくと頷いた。

 僕はその様子を見て一つ頷いてから、あのサロモンの叔父らしい祓魔師と彼女のことを追い掛けていた祓魔師が同一人物であるのかを確認することにした。


「ちなみに、その祓魔師って……名字が、えっと、ブランだったりする?あと、茶色い目で髭が生えた男性だよね?」


 その質問に彼女は頷いた。そして忌々しいものでも語るように、あの祓魔師について語り始めた。


「そう。ヴィクトル・ガブリエル・ブランって名乗ってた。あの男、本当にしつこいの。

 私がオーストリアの方でちょっと男を誑かして魂を頂いてたら、どこで嗅ぎつけたのか私のことを祓いにきて……しかも強いから太刀打ちしきれなくて、国境を跨いで逃げたりしたのよ。それなのに追いかけてくるから、勝ち目が無さすぎると思ってあなたの気配を追ってきた。その間にもイギリスに行ったりして何回か海を渡ってるのにまだ着いてきてる。

 本当にうんざりしてるのよ!あなたの使い魔が標的になったんなら私は……いえ、失礼」


 彼女は露骨に嫌そうな顔をして、これみよがしに溜息を吐きながら語る。僕の使い魔が標的になったんなら自分はあの男から逃れられるから好都合だとでも言おうとしたんだろう。気持ちはわかるけど聞き捨てならないな。かつてのお淑やかさはどうしたのだろうか。いや、あれはむしろ彼女の演技だったんだろうから、むしろこっちが本性といったところだろうか。

 僕の生み出した小悪魔だからいわば娘のようなもののはずなんだけど、女の子って怖いなぁ。そんなことを思いながら僕は苦笑いだけを返した。


「とにかく僕は大事な使い魔を捨てたくはないんだ。でもあの祓魔師は使い魔のことを解放しようと画策していてね……とにかく彼らを引き剥がす手助けをしてほしい」


 僕がそう説明すると、彼女は納得を表すように小さく頷いた。しかしそれから僕をちらっと見上げ、すぐに目を逸らした。


「私のことはすぐに手放したのに、その使い魔には随分執着してるのね。それなのにまた逃げられそうになってるなんて、おあいにく様」


彼女は冷たい口調でそう言った。

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