復讐達成、使い魔ズ!
二人は死んだのだろうか。炎の中で火傷をしたかもしれないが、全身が焼け焦げたわけではないかもしれない。どちらにしてもとどめを刺さなくちゃ。
そう思ってドロースに屋根を降りてもらおうとした矢先、隣に気配を感じてそちらを振り返る。するとそこには、ストルゲの姿があった。
「とんだ興ざめだな。雨なんかに降られちゃつまんないじゃねえか」
ストルゲはその言葉の通り、つまらなそうな声で弧を描いた口から述べる。暗がりの中で光る濃紺の瞳はどこか血走っているような、ぎらついているような気もする。怒りが滲んでいるように見えるのは気のせいだろうか。
ボクたちが屋根から飛び降りる前に、ストルゲは一足先に屋根の下に降り立った。ドロースがそれに合わせて屋根から飛び降りると、そこには煤を被り、雨に濡れ、みすぼらしい姿になった魔法使いの姿があった。
男は娼婦を守るように抱き締めたままだ。生きているのだろうか。
「おい。起きろ」
ストルゲはそう言いながら魔法使いの身体を軽く蹴った。力の入っていない体がごろっと転がり、娼婦の上から呆気なく離れた。目を閉じ、気を失っていた様子の娼婦は眉を寄せ、ゆっくりと目を開いた。
「この男は生きてるのか?」
ボクがストルゲに質問するとストルゲは魔法使いに視線をやり、それからすぐに娼婦の方に視線を戻した。
「もうちょっとで死ぬってとこだな」
リーゼは身体を起こし、アタシたちを見るより先に自分の隣に横たわる黒い塊を見つめて硬直した。隣にあるそれが魔法使いの身体であることに気づいたらしい。こっちからの視線にも構わず、衝撃を受けた様子で口を両手で押さえた。そのまま憔悴を顕にしながら、魔法使いの体に手を触れた。しかし、魔法使いは動かない。
「魔法使いさん……?ねぇ、どうしたの?」
娼婦が体を揺さぶっても、魔法使いは一向に反応を示さない。代わりに彼女の目にはじわっと涙が滲んでいく。
彼女は彼の顔を隠していた帽子をそっとどけた。するとそこには窪んだ眼窩、焼け爛れて気味の悪い色になった肌、溶けかかったような小さな鼻と固く乾いた唇が現れた。
リーゼがはっと息を呑む音がする。ボクからしてみても醜い、恐ろしい形相だった。ボクは見ていられなくなって目を逸らしたが、すぐにドロースが視線を戻した。
唇をわなわなと震わせるリーゼの目から、涙が溢れ落ちた。しかし彼女は、魔法使いから目を逸らさない。
「ああ……」
絞り出すような声と共に、彼女は彼の頬に触れた。そして、何も言わずに彼の頬を撫でた。
「愛してたわ、魔法使いさん……」
怯えているのだろうか、悲しんでいるのだろうか。彼女は震えた声で呟いてから、彼の顔にそっと顔を寄せた。それから彼女は唇を重ね、静かにキスをした。
「ふっ」
その様子を、ストルゲは静かに鼻で笑った。




