二度目の逢瀬、使い魔ズ!
翌日、ボクたちは腹ごしらえを済ませるとすぐに街に繰り出した。ストルゲの話が正しければ、あの魔法使いは夜に娼婦の元に来るのだろう。それを参考にするならば、ボクたちはそれまで張っておくのが賢明かもしれない。
けれどボクはその前に、メイさんと話をしておきたかった。しっかり進捗について話をしておきたい。今のところ順調だし、きっと彼女は今も不安に思っているだろうから……。ボクの時のように、辛く重たい孤独を噛み締めていてほしくない。ボクという味方がいることが彼女の支えになるなら。
そう思って彼女と出会った場所に足を進める。その場所には誰もいないように見えた。しかし人々が歩き、蠢く隙間から彼女の姿がちらっと見えた。
「メイさん!」
サロモンは大きい声でそう名前を呼び、その女に駆け寄っていった。これだから人間はいけない。すぐに恋に浮かされて……。ただでさえ清らかな恋なんてアタシからしたら美味しくもなんともなくて反吐が出るばっかりなのに。
アタシたちが彼女に駆け寄ると、彼女は一瞬眉根を寄せた。そして目を見開いた。淡い桃色の唇を僅かに開き、はっと息を呑むような素振りをした。
しかし女はすぐにそれを翻し、柔らかな笑顔を浮かべた。アタシが見たその表情が嘘であったかと錯覚するくらいに、ほんの一瞬のことだった。
「サロモンさん。……お待ちしてました」
彼女は穏やかな声で口にした。その穏やかな笑みは相変わらず、神々しく清らかに見えた。
脳髄を真っ直ぐ貫かれるような、鋭く熱い刺激。痛みすら覚えるようなそれにうっとりしそうになりながら、ボクは頬を緩めた。
「すみません、昨日は来られなくて……。でも色々分かったんですよ」
ボクがそう口にすると、メイさんは僕の目を見つめながらゆっくりと頷いてくれた。
「ええ、ぜひ聞かせてください」
変に早口になったり言葉に詰まったりしてしまわないように、丁寧に舌を動かして話し始めた。
「まず、犯人はとある男です。厄介な話だし、信じられないかもしれないんですが……あの男は悪魔と契約していて、魔法が使えるんです」
女はゆっくり相槌を打っている。けれど驚くような素振りは見せず、いかにも悲しんでいるように眉を下げながら頷いた。サロモンはそんな女の反応を伺いながら話を続けた。
「あとはボクに任せてください。お父様の仇はボクが討ちますから」
女は目を細め、目を伏せた。その目の温度が冷たく見えたのは、きっと間違いではないはず。もっとも、恋でお目々がまともに働いてらっしゃらないサロモン君にはわからないかもしれないけど。
さっきから彼女のことを馬鹿にしてるのか?ドロース、この身体はボクのものだ。いくら契約を交わそうがお前なんかに口出しされる義理はない。ましてメイさんのことを侮辱するのはやめろ、本当に腹が立つから。
予想以上にガチのトーンだ。でもきっとアンタもそのうち分かるはずよ、サロモン。アンタとこの女とは釣り合わないの。早いところ理解すりゃいいのに。
「ありがとう、サロモンさん」
ドロースの言葉なんてどうでもいい。ただボクには、彼女のその笑みが愛おしかった。ゆえに彼女のために復讐を果たそうと、ボクは改めて固い決意をした。




