後片付けだ、使い魔ズ!
「まぁとにかく、お前らは魔法という偉大な武器を手に入れたわけだ。俺のおかげで!」
ストルゲはいかにも偉そうに胸を張りながら述べた。露骨に調子に乗った口ぶりだ。
「だから、お前らのお世話をしてやるのはここまで。あとはお前らの力でどうにかするこったな」
顎をツンと高く上げ、アタシたちを見下したようにしながら笑みを浮かべる。それから腕を組んでみせると、そのままアタシたちを見つめている。
「…………」
そのままの態勢でストルゲはボクたちを見下ろし続けている。目を細め、眉毛を上げ、何やらアピールをしているらしい。けれど何が言いたいのかわからないので眉をひそめた。
するとストルゲは口をぱくぱくさせ始めた。なんと言っているんだろう、ええと……"ありがとう"?そう言わせたいのだろうか。ボクはとりあえずストルゲをなだめるべく口を開いた。
「ありがとう」
そう口にするとストルゲは満足げに頷いた。サロモンの判断は正解だったらしい。言わせただけのくせに、ストルゲはいかにも嬉しそうな顔をしている。
「よし、じゃあ俺はこれで帰る!お前らの健闘を祈ってるぜ。エレオスに会ったらよろしくな」
そうして慣れたようにウインクをすると、ストルゲは片手を掲げて指をぱちんと鳴らした。その音が部屋の中に響き、空気に溶け込んでいくのとともにその姿は消えてしまった。
アタシたちの目の前に残ったのは、味のしない激マズメロンだけ。……これ、どうする?
さすがに捨てるのは嫌だ。せっかく作った食べ物を粗末にするのはやっぱり後ろめたい。けれどこれは単体で食べていると頭がおかしくなりそうだ。そもそもメロン丸ごと一つなんてボクの胃袋には量が多過ぎる。……どうしよう。
そうだ、エレオスにくれてやろうよ!アイツならアタシたちの厚意を無下にはしないだろうし、きっといくらマズくても食うに決まってるわ。
厚意なのか怪しいけど、たしかにいかにも厚意っぽく差し出したらエレオスは途中で捨てたりしない気がする。どころかマズいとすら言わないかもしれない。
けれどやっぱり後ろめたさのような、罪悪感のようなものは残る。どうしたものだろうかとボクはしばらく考えた末、切り分けられたメロンもどきをひとくち食べた。
「うっべ、まっず……!」
ちょっと、何してんのよサロモン!こういうのは他人の善意に上手いこと漬け込むだけ漬け込んでおけばいいの!わざわざこんなクソまずいもん食べなくても……!うぇ、飲み込んだのにやたらモサモサして気持ち悪い……。
ドロースが頭の中でほざくのを聞き流しながら、ボクは何も考えないようにしてメロンを食べ進めた。味のしないそれでお腹を満たし、最後に三切れほど残ってしまったものを見詰める。
勿体ないのは事実だがもうさすがにお腹には入りそうにないし、ドロースの言うようにエレオスに味見させるのも一手か。エレオスはきっとまた帰ってくるのだろうし。
『お疲れ様』とだけ記した紙をメロンのそばに添えて、ボクたちはその晩は眠ることにした。




