引っ込んでろよ、使い魔ズ!
メイさんのために調べている娼婦の件について、手を引け。悪魔ストルゲはたしかにそう言った。
その意味は分かる。けれど正直頷きたくない。そもそもなんでこんな悪魔が突然やってきて、ボクがやっていることを止めようとしてくるのか。こんな奴に止められる義理はない。
そう思って口を開こうとしたところで、ドロースがボクの意思を遮って喋り始めた。
「ふーん……アンタ、あの魔法使いと関係あるわけ?」
図星らしい。ストルゲは意味深に目を細め、片眉を上げてから軽く頷いた。
「人間に食われてもさすがは悪魔ってとこか。やっぱアイツが魔法を使えるってのには気づいたんだな。……まぁ、アイツは確かに魔法を使えるが、俺の魔力を貸してるだけだよ」
"人間に食われても"と鼻で笑いながら話すストルゲに、ドロースは内心で復唱するに耐えないような悪態をついている。けれどその様子はあくまで眉のみにしか出さないで、ドロースは問いを重ねた。
「つまりは契約関係?」
ボクの入る隙はまるでない。ボクの体とストルゲが勝手に会話を進めているような感覚。奇妙なそれにそわそわしそうになりながら、ボクは二人の話を聞いた。
「その通り。あんまりアイツに敵対されると、俺はお前らを返り討ちのボコボコにしなくちゃいけなくなるんだよな……。さすがに可愛い後輩のペットをいじめるのは俺の良心が咎める!」
「ペットじゃない!」
初めてドロースと行動の意思が一致したかもしれない。ボクたちが同時に口にしようとしたせいで、ボリュームが大きくなってしまった。
ストルゲは一瞬目を丸くしたものの、悪びれる様子もなく歯を見せて笑った。
とはいえ、例の魔法使いもといストルゲの契約者がどんな人物なのかちっとも分からない。アタシたちとなんの利害で衝突しているんだろうか。そう思いつつアタシはサロモンの体を親指で指さした。
「とにかく、どういうことか説明しないとこっちのクソガキは納得しないと思うんだけど」
ストルゲは椅子の背もたれに体をしっかりと預けた。それから溜息混じりに口にした。
「うーん、契約者のことぺらぺら喋っていいもんかねぇ……」
そうは言うものの、ストルゲはちらっとアタシたちの方を見ると軽く笑みを浮かべてすぐに口を開いた。
「ま、後輩のペットのよしみだな」
「ペットじゃない!!」
ほんっとうに失礼な奴ね!誰があんなクソ偽善悪魔のペットよ!こんなクソガキの体に収まってなかったら思いっきり心臓刺すくらいのことはしてたのに……!
話が物騒だけど、今回ばかりは全力で同意するよドロース!ボクもコイツが悪魔なんかじゃなかったら一発くらい殴ってやりたかった……!
「おいおい、そんな顔すんなよ!ぶっ……ハハッ、面白すぎんだろ!」
ああもう何なんだよコイツ!失礼にもほどがある!
本当に腹立たしい悪魔だが、コイツの話を聞かないことには今回の件だろうがエレオスに一矢報いる件だろうが進展させられない。取り敢えず落ち着いていなくては。そう思ってボクは小さめの深呼吸をして、ひそまってしまう眉を落ち着けた。




