新たな味方か、使い魔ズ!
ボクが答えに戸惑っているうち、ドロースが勝手に口を開いた。
「何それ、あの偽善悪魔の先輩?じゃあアンタ相当ろくでもないヤツなのね」
ボクの体が勝手に腕を組んだ姿勢を取り、悪魔から顔を背ける。ていうかドロース、いい加減その口調やめてくれないか?悪魔といっても初対面の相手に変な印象を抱かれるのは屈辱的だから。
ふん、そんなのアタシの知ったことじゃないわよ。
「おーっと、随分面白い喋り方なんだなお前……」
ああもうほら完全に引いてるじゃないか!
全く、相手が悪魔だろうがこうして変な誤解と屈辱を受けるのは我慢ならない。ボクは耐えきれなくなって弁解のために口を開いた。
「違う、今のはオレじゃない。だからオレっていうのやめなさいよ気持ち悪い!うるさいぞドロース、お前こそその女の子みたいな喋り方するのは勘弁してくれよ!ボクの名誉に関わる!はぁ!?名誉なんてないでしょこのクソガキ!」
そうしてセルフ口喧嘩が始まってしまうと、悪魔ストルゲが腰に両手を当てて、首をひねりながら目を凝らしてこちらを見つめているらしいのがなんとなく分かった。
「ああ……なるほど。随分ひでぇことになってんのな、お前ら」
腕を組んだストルゲはそう呟いた。お前らということは、ボクの身体に二つの魂が収まっていることに気がついているんだろうか。何にしたって悪魔に同情されるなんてうんざりだ。そう思ってボクはストルゲに向かって思い切り眉をひそめてみせたのだが、ボクの口はドロースの意思に従ってぺらぺらと喋り始めた。
「ほんとそうなのよ!あんな偽善悪魔に殺されて、心臓抜き取られてこんなクソガキに食われたんだから……」
ボクの身体は勝手にそう言いきると腕を組んでこれ見よがしに溜息を吐いた。しかしストルゲは腕を組み、眉をひそめた。
「エレオスが?悪魔を殺して人間の体に突っ込んだって言うのかよ?」
そう問いかけて来るストルゲに対し、ボクの体は深く頷いた。さっきからドロースにばかりこの身体の主導権を取られている気がする。それがつまらなくて、今度はボクから口を開いた。
「ボクはエレオスと契約してたんだ。パパとママの敵討ちを頼んでた。その敵がこの悪魔ドロースだったから、ドロースを召喚して殺そうと計画してた。けどドロースはボクの隙をついて攻撃してきたから、ボクは瀕死になった。そのドロースを今度はエレオスが殺して、何を思ったかボクにその魂を食わせたんだよ……だからボクはこんな悪魔と一心同体になって、その上エレオスに従属しなくちゃいけなくなった」
そう、その通り。クソガキにしてはよく説明するじゃないの。
頭の中でサロモンをそう褒めてやりながら深く頷く。ストルゲとかいう悪魔はサロモンの説明に納得したらしく、顎に手を当てて小さく何度か頷いた。そしてそれから、ストルゲは思い切り吹き出した。
「ハッ……ハハハ、マジか!そんなことになってたのかよ!最高だなアイツ……!」
ボクの説明を聞いて吹き出す時点で失礼なやつだ。やはりさすがは悪魔だなと密かに軽蔑していたものの、一度吹き出したせいで耐えきれなくなったのか、ストルゲはヒィヒィ言いながらそれに飽き足らず爆笑している。
何なんだコイツ。そんな気持ちを隠しきれず、ボクの顔は怪訝そうなそれになっているような自覚がある。
「はぁ、アハハ……まさかあのエレオスがそんなになるとはなぁ……あぁ、笑い死ぬかと思った……」
ひとしきり笑いきったそのストルゲは、笑い過ぎて目元に滲んだ涙を人差し指で払った。そうしてから溜息を吐いて、まだ顔に笑みは残っているもののようやく落ち着いた様子になった。
それにしても、さっきからコイツはいかにもエレオスを知っているような口ぶりで話している。とはいえボクはこの悪魔を知らない。大した反応を見せないし、ドロースも知らないはずだ。
うん、アタシも全く知らないヤツよ。でもこの悪魔はアタシたちの知らないエレオスのことを知ってるんじゃないの?コイツからエレオスの弱みを聞き出して、一矢報いることができたりするんじゃ……。
ボクも同じことを思っていたところだ。
未だ時折思い出し笑いでもしているのか、落ち着いたはずが突然一人で吹いたりくすくす笑ったりしているストルゲに、ボクは問い掛けた。
「エレオスのことについて教えてくれ」
うっわド直球ねアンタ。脈絡とか雰囲気作りとか知ってる?
それはともかく、その質問にストルゲは顔を上げた。それから少しアタシたちの顔を見つめたあとで、にやりといかにも悪魔らしい笑みを浮かべた。




